本研究は,外国人のグリーン・ツーリズム受入を成功させてきた,秋田県仙北市の農家 A夫妻を対象に,インタビュー調査からその他者認識の特徴を明らかにしようとするものである。ここで導出される他者認識の特徴は, A夫妻の成功の理由を示すとともに,外国人との接触や外国語・外国文化を学ぶ機会が限られていながらも,間近に外国人との出会いが迫った多くの日本人にとって,参照できる事例になりうると想定された。分析の結果,自らとは異質な存在であるからこそ,その他者と伝え合い出会い続けたいと願うという,他者認識のあり方が描き出された。ただしこの他者認識において,外国人であることに特別な重みは付与されていない。未知の一人ひとりと関係を作っていこうとする意志は,特定のカテゴリーを重視することからは生まれてこない。ここに外国人といった捉え方でない他者認識のあり方を育てることが,新たな言語文化教育の課題として立ち上がってくる。