本稿の目的は,社会文化理論の観点から,日本語教室における母語による「プライベートスピーチ(private speech:以下PS)」の機能を明らかにするために,PSの形式及び前後の文脈を基に,母語によるPSの分類を提案することである。その目的の下,タイ人・ベトナム人技能実習生が学ぶ日本語教室の教室談話のデータを22時間分収集し,母語によるPSの分類を行った。そして,母語によるPSの種類として,他者発話の直訳,母語による読み上げ,理解の確認のための翻訳,理解のための翻訳,翻訳を含む理解の表出,目標言語の代替,問題解決のための思考の表出,自身の誤りに対する認識の表出,自身の発話を導くための思考の表出,自身の理解を促すための思考の表出,事物や事象に関する思考の表出,事物や事象に関する感情の表出の12種を提案し,そのPSが発せられた理由や学習への影響を考察した。