2023 年 21 巻 p. 32-54
近年日本の外国籍住民が増加傾向にあるなか,家族を帯同して生活する定住志向の外国籍住民が増加している。外国籍家族にとって日本の保育園,幼稚園,こども園といった場(以下,保育園)は,地域社会参加の入口であり,様々な人が出会う公共空間である。小・中学校では自治体やNPO,ボランティアによる通訳翻訳や日本語支援がある程度整備されている。これに対し,保育園での外国籍家族支援には限りがあり,現場ではさまざまな問題が生じるとともに具体的な解決策が模索されている。本稿は,茨城県つくば市を拠点に実施中の参加型アクションリサーチ(PAR)の実践研究から,保育の場でのかかわりと対話を促進するコミュニケーションのしかけづくりについて報告するものである。また活動の経緯においてさまざまなアクターの「ことば観」の解きほぐしがなされたことを示しつつ,ことばの「道具性」がコンヴィヴィアルな公共空間を拓く可能性について論じる。