2012 年 54 巻 5 号 p. 1656-1661
症例は70歳女性.スクリーニングの大腸内視鏡検査で上行結腸にアニサキスの刺入した腫瘤性病変が認められた.検査の2日前に自作のイカの塩辛を食べていたが無症状であった.腫瘤性病変からの生検でGroup 5(tub1>tub2)と診断された.内視鏡的に深達度SM massiveが否定できず,本人の希望もあり腹腔鏡下回盲部切除が施行された.病理組織では先進部は低分化な腺癌による800μmのSM浸潤をきたしていた.アニサキスが刺入した腫瘤性病変を認めた際には炎症性腫瘤の他,腫瘍の可能性も念頭に慎重な鑑別が必要と考えられた.