日本消化器内視鏡学会雑誌
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表在食道癌の血管新生:拡大内視鏡観察と分子生物学との関連
熊谷 洋一戸井 雅和川田 研朗河野 辰幸
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2012 年 54 巻 7 号 p. 2062-2072

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抄録

近年食道癌に対する拡大内視鏡観察は広く普及し,腫瘍表層の微細血管形態が壁深達度を反映することが明らかとなった.M1,M2癌では上皮乳頭内ループ状毛細血管(IPCL)の拡張と延長が観察されるが,正常部に比べIPCLの密度が上昇する.これは,既存のIPCLが変化したものに加えIPCL様の幼若血管が腫瘍内に進入するためでありこの段階での血管構造は“修飾されたIPCLとIPCL様幼若血管の混在(IPCL様異常血管)”と表現されるべきである.M3以深に浸潤すると明らかに拡張し表層を錯綜する癌特有の血管構造が観察され,“新生血管”と表現している.
拡大内視鏡観察と分子生物学的知見を考察し,前癌病変とM3に血管新生の2つのメジャーなステップが存在すると考えられた.
400-1,000倍で観察可能なEndocytoscopeでは表層の細胞の形態が観察可能となり,将来生検組織診断に代用できる可能性が示唆された.

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© 2012 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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