日本消化器内視鏡学会雑誌
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内視鏡整復後に腹腔鏡下腸切除術を施行した成人腸重積の1例
今里 光伸 金 浩敏位藤 俊一
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2016 年 58 巻 10 号 p. 2199-2200

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【症例】

症例:60歳代,女性.

主訴:下腹部痛.

現病歴:2013年8月,前日から続く周期的な下腹部痛にて当院受診した.腹部USおよび造影CT検査にて,回盲部から上行結腸にかけて腫瘤を先進部とした腸重積を認めたため,治療目的に入院となった(Figure 1).

Figure 1 

腹部造影CT検査.

上行結腸に同心円状のtarget signを認めた(矢印).

入院後経過:入院当日大腸内視鏡検査を施行.回盲部から上行結腸にかけて表面平滑な腫瘤を先進部とする腸重積を認めた(Figure 2).CO2送気による整復を試みるも改善を認めなかったため,X線透視下で病変部を確認しつつ内視鏡本体で先進部を緩徐に押し込み(Figure 3),腸重積を整復した(Figure 4).第8病日に腹腔鏡下小腸部分切除術を施行.病理診断は小腸脂肪腫(径3×3cm)であった.第15病日に退院となった.

Figure 2 

大腸内視鏡検査(整復前).

回盲部から上行結腸にかけて表面平滑な腫瘤を先進部とする腸重積を認めた.

Figure 3 

X線透視像(内視鏡整復時).

透視下で口側腸管を確認しながら(矢印),内視鏡整復した.

Figure 4 

大腸内視鏡検査(整復後の回盲部).

腸重積の先進部を内視鏡本体にて元の内腔へ押し戻すように,緩徐に押し込む方法で整復した.

【解説】

成人腸重積は比較的稀な疾患であり,腫瘍性病変を原因とすることが多く,外科的切除を要する場合がほとんどである 1).腸重積の診断は,USとCTで典型的な画像を呈するため,比較的容易に診断することが可能であるが,腸重積先進部の病変評価に関しては,術前診断が困難なことが多い.術前に大腸内視鏡検査を行うことにより,先進部病変の質的診断や出血などの病変の状態が把握できるなどの利点がある.

内視鏡整復の具体的方法に言及した文献はなく,整復可能であった報告例はすべて挿入時の送気による整復である 2),3).本症例ではCO2送気にて整復できなかったため,透視下で口側腸管を確認しながら,先進部を内視鏡本体にて元の内腔へ緩徐に押し込む方法で,安全に整復することが可能であった.内視鏡本体で押し込む整復法は一見乱暴な操作に思われるが,実際の手術では用手的に押し戻す操作(Hutchinson手技)や腹腔鏡下に重積腸管を鉗子で圧排や牽引する操作で整復しており,これらの操作と比べ内腔から押し込む方法は生理的であり,比較的安全な操作であると考えられる.

術前に内視鏡整復を行うことに関しては十分な検討がなされておらず,整復操作による穿孔などの危険があるため,十分な説明とともに緊急手術が対応可能な状況で内視鏡検査を行う必要がある 4).しかし整復が可能であれば,緊急手術を回避でき,待機的に腹腔鏡下手術を行うことが可能となる.また腸重積を併発すると,腸管浮腫や血流障害を伴うことが多いため,切除後の吻合部への影響や浮腫等の改善を考慮すると,内視鏡整復して腸管の状態が改善した後に手術を行うことが妥当であると思われる.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

文 献
 
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