日本消化器内視鏡学会雑誌
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手技の解説
EUS-FNAにおける組織採取率向上のコツ
岩下 拓司 上村 真也安田 一朗清水 雅仁
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2016 年 58 巻 11 号 p. 2296-2304

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要旨

超音波内視鏡下吸引針生検(EUS-FNA,endoscopic ultrasound-guided fine needle aspiration)は,消化管周囲や消化管壁内の病変より病理検体を採取する安全で確実な方法として,広く一般臨床で使用されている.今回は,EUS-FNAにおける組織採取率向上のコツとして,穿刺針の選択,穿刺テクニック,検体処理方法を,evidence基づきながら,われわれ自身の経験も交えて概説する.

Ⅰ 緒  言

超音波内視鏡下吸引針生検(EUS-FNA,endoscopic ultrasound-guided fine needle aspiration)は,消化管周囲や消化管壁内の病変より,病理検体を低侵襲かつ確実・安全に採取する方法として,広く一般臨床で利用されている.しかしながら,EUS-FNAおける穿刺針の選択や穿刺テクニックに関しては,様々な有用性の報告を認めており,多様な選択枝の中でどれのような選択するかは,施設の環境や術者の考え方により大きく異なるのが現状である.今回は,evidenceに基づきながら,われわれ自身の経験も交えて,EUS-FNAにおける組織採取率向上のコツを概説する.

Ⅱ 組織検体の必要性

組織学的検討は,細胞診とは異なり組織構築を評価することができることから,細胞異形が弱い高分化癌の診断や,自己免疫性膵炎やサルコイドーシスなどの良性疾患などにおいて有用とされている.必要に応じて免疫染色も追加することが可能であり,悪性リンパ腫,粘膜下腫瘍,神経内分泌腫瘍など免疫染色の所見が診断に必須な疾患においても,組織検体採取は重要となる.近年になり,多くの分子標的薬が利用可能となっており,CD20やHER2などの標的分子の出現評価にも免疫染色が必要となる.さらに,現時点では実験的段階であるものの,EUS-FNAで得られた検体を用いた分子生物学的検討の有用性の報告もあり,今後さらにEUS-FNAを用いた組織検体採取の必要性は高まると考えられる.

Ⅲ 穿刺針の選択

EUS-FNAにおいて,穿刺針の選択は確実な検体採取するために最も重要な要因であり,様々な観点から決定されるべきである.穿刺針のsizeは19-gauge,22-gauge,25-gaugeがあり,さらに針やシースの素材,先端形状の違いなどにより,多くの種類の穿刺針が使用可能である(Table 1).

Table 1 

本邦で使用可能な超音波内視鏡下吸引針生検用穿刺針.

本邦においては,22-gauge針が第1選択として最も使用される傾向にあり,組織採取における有用性についての報告も認める.Mollerら 1)は,膵腫瘍に対する22-gauge通常針を用いたEUS-FNAの有用性をretrospectiveに検討している.膵腫瘍192例(頭部139例,体尾部50例,術後再発3例)に対してEUS-FNAを施行し,全例で穿刺に成功,組織学的検討可能な検体は86.5%で採取され,組織診のみによる良悪性診断感度は60%であったとした.Iglesias-Garciaら 2)は,膵腫瘍62例(頭部45例,体部15例,尾部2例)に対して22- gauge通常針を用いてEUS-FNAを行い,それぞれの病変に対して3回の穿刺を行い,最初の2回を細胞診に,3回目の穿刺は組織診に提出し病理学的診断能の評価をprospectiveに行っている.組織学的検討可能な検体は83.9%(52/62)で採取され,組織診断のみによる良悪性診断感度は92.6%であった.これらの報告からは,22-gauge通常針を用いても,ある程度の組織検体は採取できると考えることができる.また,近年,先端に逆刃付きの側孔を有する組織針(EchoTip ProCore,Cook Medical,Bloomington Indiana,USA)が開発されており,22-gauge,25-gaugeのpilot studyでは良好な成績が報告されている 3),4).Huclら 5) は,膵腫瘍は消化管周囲病変145病変に対して22-gauge組織針と22-gauge通常針の2本の穿刺針を同一病変に用いてEUS-FNAを行い,使用する穿刺針の順番を無作為化し,それぞれの穿刺針で白色の検体が肉眼で確認できるまで穿刺を行い,その有用性を比較検討している.いずれの穿刺針においても全例で穿刺は成功し,平均穿刺回数は組織針1.2回,通常針で2.5回であり,有意差をもって組織針で少ない穿刺回数で肉眼的な白色検体を認めたとしている.しかしながら,検体採取率は組織針で86.2%(125/145),通常針で87.6%(127/145)であり,経過観察が可能であった139例における良悪性診断感度もそれぞれ90%と77%であり,いずれの項目においても有意差を認めなかったとした.Bangら 6)は膵腫瘍56例のEUS-FNAおいて,22-gauge組織針(28例)と22-gauge通常針(28例)を比較する無作為化比較試験を行い,組織針と通常針の迅速診断を得るまでの穿刺回数中央値1回:1回,穿刺不成功3.6%:0%,組織学的検体獲得率83.3%:100%,組織構築を検討可能な検体採取率80%:66.7%,確定診断獲得率89.3%:100%であり,組織針は通常針と同等に有用であったとしている.これら比較試験からは組織採取率改善の点において,22-gauge組織針の22-gauge通常針に対するは明確な優位性は示されておらず,今後のさらなる検討が必要である.

EUS-FNAにおける組織採取率を改善するための一つの考え方として,大口径針(19-gauge針)を用い,より多くの病理検体を採取することが挙げられる.19-gauge Trucut針(Quick-Core,Cook Medical)は組織採取をする上での有用性を期待されたが,穿刺針自体の剛性が非常に強く,その扱いが難しいことから,本邦での販売は既に終了しており,ここではその成績には触れない.19-gauge通常針を用いたEUS-FNAの組織検体採取における有用性が多くのグループにより報告されており,われわれのグループにおいても,組織学的検討が確定診断に有用な疾患におけるその有用性を報告してきた.両側肺門部リンパ節腫脹を来しStage Ⅰサルコイドーシス疑い症例の縦隔リンパ節に対して19-gauge通常針を用いたEUS-FNAを行い,その診断能をprospectiveに評価した.41例に対してEUS-FNAを試み,FNAは全例で成功し,95.1%(39/41)の症例で組織学的検討可能な検体が採取された.病理学的検討では非乾酪性肉芽腫の所見を認めサルコイドーシスとした診断感度は,組織診で94%,細胞診で78%であり,有意に組織診断で良好な結果であった 7).悪性リンパ腫診断においても19-gauge通常針を用いたEUS-FNAの有用性をretrospectiveに検討している.腫大リンパ節(縦隔・腹腔内)に対してEUS-FNAを施行し最終診断が悪性リンパ腫であった152例を対象とし,腫大リンパ節に対する19-gauge通常針を用いたEUS-FNAの組織学的診断能を検討したところ,96.7%(147/152)の症例で組織学的に悪性リンパ腫の診断が,88.8%(135/152)の症例でWorld Health Organization(WHO)分類も可能であったとした 8).自己免疫性膵炎診断では,19-gauge通常針を用いたEUS-FNAを施行された自己免疫性膵炎患者44例を対象としてretrospectiveに有用性を検討し,41例(93%)で組織学的検討が可能な検体が採取されていたが,検討した時期が明確な組織学的診断基準が無かったこともあり,組織学的に確定診断が可能であったのは19例(43%)であったとした 9).その他のグループからも19-gauge針を用いたEUS-FNAの有用性が報告されている.Larghiら 10)は,粘膜下腫瘍,リンパ節腫大,膵腫瘍などの病変に対してEUS-FNAが既に施行されるも診断に至らず,組織学的検討が診断に重要と考えられる120例に対して,19-gauge通常針を用いたEUS-FNAを施行しprospectiveにその有用性を検討している.経十二指腸穿刺1例を除く119例(98.9%)でFNAに成功,穿刺可能であった症例の97.5%(116/119)で組織学的検討に十分な検体が採取され,良悪性診断感度は91.8%であり,良好な手技成功率・診断能を報告している.しかしながら,この報告では,経十二指腸での穿刺を必要とする膵頭部腫瘍は対象から除外されている.同じグループから,forward viewing EUS下に,19-gauge通常針を用いて121例の粘膜下腫瘍に対してEUS-FNAを施行し,10mmと比較的小さな胃粘膜下腫瘍症例1例を除く99.1%(120/121)でFNAは成功し,組織学的検討は93.4%(113/121)で可能,良悪性診断感度は92.8%(113/121)であったとした 11).Larghiらは,膵内分泌腫瘍診断における19-gauge通常針を用いたFNAの有用性についても報告しており,30例にFNAを試み全例で穿刺は成功し,93.3%(28/30)で組織学的検討可能な検体が採取され,検体が採取された全例で膵内分泌腫瘍の診断が可能であり,Ki67 proliferation indexを用いたWHO 2010分類のgradingも86.6%(26/28)で可能であったとした.さらに,手術検体を用いたgradingの比較が可能であった10例における検討では,FNA検体と手術検体のWHO2010分類でのgradingは良好な一致を示したとした(κ=0.62) 12).肝生検での有用性も報告されており,Stavropoulosら 13)は肝胆道系酵素異常を認める31例にEUSを施行し,EUS上閉塞性黄疸を認めなかった22例に対して,19-gauge通常針を用いたFNAを肝生検として施行し,91%(20/22)で組織学的検討に十分な検体が採取され肝障害の原因診断も可能であったとした.肝生検における19-gauge通常針を用いたEUS-FNAの有用性を検討したpilot studyはその他にも認めている 14),15).これらの報告からは,19-gauge通常針の使用は,EUS-FNAにおいて組織採取率を改善するための1つの有用な方法と考えることができる.また,先端に逆刃付きの側孔を有する19-gauge組織針(EchoTip ProCore,Cook Medical)も開発されている.Iglesias- Garciaら 16)は消化管壁内・周囲の114病変に対して19-gauge組織針を使用してEUS-FNAを施行し,112病変(98.2%)で穿刺に成功し,89.5%(102/114)の病変で組織学的検討に十分な検体が採取され,良悪性診断感度は90.2%であったとしており,19-gauge組織針の使用が組織検体採取率をさらに改善する可能性があり,今後さらなる比較試験の結果が待たれる(Table 2).

Table 2 

19-gauge通常針を用いたpilot studyの一覧.

19-gauge針の使用が組織採取率を改善する可能性はあるものの,19-gauge針は口径が大きいために,穿刺針自体の剛性が増し,EUS-FNAの成功率に影響を与える可能性がある.Itoiら 17)は様々なEUSのポジションで口径の異なる針の穿刺抵抗を机上で機械を用いて客観的に測定・比較しており,19-gauge通常針は22や25-gauge通常針と比較すると,EUSのアングルを強くかける必要があるようなポジションでは穿刺抵抗が非常に大きいとしている.また,Itoiら 18)は膵腫瘍に対するEUS-FNAにおける19-gauge Trucut針,19-gauge通常針,22-gauge通常針のprospectiveな比較試験も報告している.この報告では,16例の膵腫瘍(膵鉤部3例,膵頭部5例,体尾部8例)に対してEUS-FNAを試み,22-gauge針は全例でEUS-FNAが可能であったのに対して,19-gauge針を用いると,膵鉤部病変は全例,膵頭部病変は5例中2例で穿刺が困難であったとした.組織学的診断は19-gauge針で穿刺可能であった症例は全例で組織学的に悪性診断が得られたのに対して,22-gauge針を用いた症例では,11例で悪性の診断が可能であったもの,2例では異形までの診断,3例では検体量が不十分であったとしている.Songら 19)は,膵腫瘍に対するEUS-FNAにおける19-gauge通常針と22-gauge通常針との無作為化比較試験を行い,膵腫瘍117例(19-gauge針群 60例,22-gauge針群 57例)に対してEUS-FNAを施行,19-gauge針を用いた膵頭部腫瘍に対するFNAは,5例で技術的に困難であり穿刺成功率80.8%(21/26)であったのに対して,22-gauge針では膵頭部腫瘍全例(29/29)で穿刺可能であり,膵頭部病変に対するEUS-FNAの穿刺成功率は有意に22-gauge針で良好であった.なお,膵体尾部病変においては,19-gauge針,22-gauge針ともに全例で穿刺に成功している.細胞診での検討ではあるが,intention to treat解析では,19-gauge群と22-gauge群の正診率に有意差はなかったが[19-gauge群86.7%(52/60):22gauge群78.9%(45/57);p=0.268],穿刺が可能であった症例のみのper-protocol解析では,19-gauge針群で有意に診断能が高かったと報告している[19-gauge群94.5%(52/55):22gauge群78.9%(45/57);p=0.015].机上の検討やこれらの比較試験からは,19-gauge針を用いたEUS-FNAは穿刺が可能であれば診断能を改善する可能性があるものの,経十二指腸穿刺などEUSのアングルを強くかける必要があるような病変の穿刺は難易度が高く,穿刺成功率は低くなると考えられる.近年,EUSのアングルを強くかける必要があるような病変であっても穿刺を容易にするために,針の素材をより柔軟なナイチノールに変更した穿刺針(Expect 19-gauge Flex Needle;Boston Scientific,Massachussetts USA)も開発され,本邦においても使用可能である.Varadarajuluら 20) は,19-gaugeナイチノール針を用いて38症例に対してEUS-FNAを行い,経十二指腸穿刺32症例を含む全症例で穿刺に成功し,93.7%(36/38)で組織学的検討および正診することが可能であったとしている.Rameshら 21)は,膵腫瘍に対するEUS-FNAにおける19-gaugeナイチノール針と25-gauge通常針の無作為化比較試験を報告している.膵腫瘍100症例(19-gaugeナイチノール針群50例,25-gauge通常針群50例)に対してEUS-FNAを行い,穿刺成功率100%:98%(49/50),組織検体採取率88%(44/50):44%(22/50)といずれも19-gaugeナイチノール針群で良好な結果であった.これらの報告からは,ナイチノール針を用いることにより19-gaugeであっても,様々なEUSのポジションからの穿刺に対応できる可能性があると考えられる.

EUS-FNA関連する有害事象については,10,941症例を検討したsystematic reviewにおいて,偶発症発生率0.98%(107/10,941),死亡率0.02%(2/ 10,941)とされており,比較的安全に施行できる処置である.膵腫瘍に対するEUS-FNAにおいて,19-gauge針(215例)と22-gauge/25gauge針(5,957例)の偶発症発生率を比較したメタアナリシスでは,19-gauge針群で3.5%,22-gauge/ 25gauge針群で1.8%であり有意差を認めなかったとしている 22).現時点では,穿刺針のサイズと偶発症発生率には,明らかな因果関係はないとされており,偶発症の観点から穿刺針を選択する必要性はないと考えられる.

これらの報告からは,高い穿刺成功率を維持しながら,組織採取率を改善するためには,穿刺針の使い分けが重要であると考えられる.われわれの施設においては,組織学的検討が診断に必要と考えられる症例においては,穿刺経路に関わらず,可能な限り19-gauge針を使用して穿刺を行い,穿刺が不可能であった場合に22-gauge針やナイチノール針を使用している.しかしながら,経十二指腸穿刺などEUSのアングルを強く使用しなければならない病変に対しては,19-gaugeナイチノール針や22-gauge通常針・組織採取針,25-gauge組織採取針などを最初から使用するほうが,穿刺成功率を高め,ひいては検体採取率・安全性を確保できる可能性があると考える(Figure 1).

Figure 1 

穿刺経路別の穿刺針選択.

Ⅳ 穿刺テクニックの実際

EUS-FNAに際して,病変内で針を前後させるストローク方法,穿刺針に付加する吸引圧に関しても様々な有用性の検討が報告されている.ストローク方法では,病変内で穿刺針の方向を扇状に変更してくfanning法の有用性がBangらにより報告されている 23).この報告では,膵腫瘍54例に対してEUS-FNAを行い,ストロークを行う際にfanning法(26例)と通常法(28例)で比較検討し,FNA成功率,診断能,偶発症率に差はなかったものの,診断を得るまでに必要な穿刺回数がfanning法群で有意に少なかったとした(fanning法 平均1.7回,通常法 平均1.2回)(Figure 2).その他のストローク方法として,詳細な検討は報告されていないが,穿刺針のハンドルをストッパーに叩き付けて穿刺針を素早く動かし検体採取を試みるdoor knocking法があり,有用な可能性がある.これらのストローク方法による組織検体採取率への影響の報告は認めないが,われわれの施設では,病変内部の病理所見は均一ではなくfanning法を用いることでsampling errorを減らせるのではないかと考えており,fanning法を可能であれば実践している.door knocking法も,通常のストローク法で検体が採取されないようであれば試みている.注意事項として,door knocking法を用いる場合には,ストッパーが確実にロックされていることを確認し,ハンドルをストッパーにぶつけた際に,ストッパーが外れて意図しない深い穿刺にならないように十分に注意する必要がある.

Figure 2 

左:通常・Door knocking法では同じ部位でストロークを行い検体採取する.右:fanning法では,病変内で針の方向を変更しながらストロークを行う.

病変内でストロークを行う際の吸引圧に関しても,10ccや20ccのシリンジを使用して陰圧を負荷する通常法,吸引を行わないno-suction法 24),バルーン拡張に使用する50ccのシリンジを使用して陰圧を負荷する高陰圧法 25),スタイレットを少しずつ引きながら弱い陰圧を負荷するslow-pull法 26),穿刺針の中を生食で満たし陰圧を負荷するwet-suction法 27),などの有用性が報告されている.組織検体採取率を改善するという観点から吸引圧について検討してみると,Kudoら 28)は90症例に対して25-gauge通常針でEUS-FNAを行う際の吸引圧を高陰圧法と通常法で比較検討し,組織学的検体採取率が高陰圧法で有意に良好であったとしている(高陰圧法90%(81/90),通常法72.2%(65/90)).Nakaiら 26)は膵腫瘍に対するEUS-FNAにおける吸引圧を通常法とslow-pull法を後方視的に比較検討し,最終診断が悪性膵腫瘍であった82症例において,slow-pull法において組織学的検体採取率(slow-pull法90.0%,通常法73.1%),組織学的感度(slow-pull法72.2%,通常法57.3%)が有意に良好であったとしている.これらの結果からは,陰圧の程度と組織検体の採取率に一定の傾向がないために,織学的検体を採取するのに理想的な吸引圧について結論を見出すことは困難である.われわれの施設では10ccの吸引圧を負荷しEUS-FNAを行っているが,血液が多く混入する症例もあり,検体処理の段階で可能な限り肉眼的に白色検体のみを採取しホルマリン固定を行い組織診に提出している.

EUS-FNAの際のその他のテクニックとしては,病変に対してEUSでの圧排が効きにくい病変や可動性のある病変に対する穿刺を行う際に,穿刺針を進めていくと消化管粘膜自体や病変の被膜を切る際の抵抗から,穿刺針と共にEUSのプローブから消化管壁が離れていきEUSでの描出が穿刺中にできなくなることを経験する.そのような場合には,われわれの施設では2つの方法で対処している.1つは,2段階穿刺であり,まずは消化管壁をFNA針で穿刺し,その後,穿刺針を消化管壁から抜けないギリギリまで引き,再度穿刺方向を調節し病変に対して穿刺を行う方法である.2つ目は,消化管壁・病変が動いてしまうぎりぎりまでFNA針を進めていき,そこからdoor-knocking法と同様にハンドルをストッパーに叩き付けるように素早く病変を穿刺する方法である.この方法の場合,前述したようにストッパーが外れると,意図しない深い穿刺になり非常に危険である.穿刺の前には,ストッパーが確実に掛かっていることを必ず確認する必要がある.

Ⅴ 検体処理方法

EUS-FNA後の検体処理方法として,FNA後にすぐに細胞診検体を検査の場で染色し迅速診断を得る方法(ROSE:rapid on-site evaluation)が,検査中に検体量および質の評価ができ,検査後の検体量不足やFNAの穿刺回数を減らすことができると報告されている.しなしながら,組織学的検体量を予測におけるROSEの有用性は不明である.

われわれの施設では以前より,特に19-gauge針を使用した際に,EUS-FNAで得られた検体をスライドガラス上にスタイレットで押し出し,肉眼的に白色検体を確認し血液部分を除去,白色の部分だけを取り出しホルマリンボトルに入れて提出してきた(MOSE:macroscopic on-site evaluation)(Figure 3).可能な範囲で血液部分を除去することにより,組織学的検討の際に,効率よく病変部を検討できると考えている(Figure 4).MOSEによる白色検体の出現と組織学的検体量の相関についても検討を行っている.19-gauge針を用いて固形腫瘍111病変に対してEUS-FNAを行い,MOSEの有用性を検討したpilot studyにおいて,白色検体長が4mm以上認められた穿刺においては,有意差をもって細胞診,組織診で良好な良悪性診断感度を示しており,MOSEが組織検体量予測の一つの方法となりうると考えている 29)

Figure 3 

A:穿刺針よりスタイレットを使用して,スライドガラス状に検体を押し出す.B:肉眼的に白色調の検体を分ける.C:白色調の部位を組織診のためにホルマリン固定し,残りの検体でスメアを引き,細胞診のためにアルコール固定をする(文献29の図を改変).

Figure 4 

青色部分が病変部の組織検体,赤色部は混入した血液部分.A,Bともに病変部の検体量は同じであるが.Aでは,血液の混入が少ないために,効率的に病変部を組織学的に評価可能である.Bでは,割面によっては病変部が効率的に評価できず,深切り切片での評価が必要になる可能性がある.

Ⅵ 新たな試み

EUS-FNAの際の組織検体を採取する新たな試みを2つ紹介する.

EUS下に組織学的検体を採取する方法として,19-gauge通常針を介して0.75mmの細径生検鉗子(MTW Endoskopie,Wesel,Germany)を挿入し生検(TTNFB:trough the needle forceps biopsy)を施行した後に,FNAを行う方法が報告されている.Nakaiら 30)は17症例・18処置にEUS-TTNFBを施行し手技の成功率,安全性,診断能を評価している.49回のEUS-TTNFBを試み全例で成功し,TTNFBにより67%の穿刺で組織検体が採取されたとしている.TTNFBとFNAを合わせると94%の穿刺で組織検体が採取され,1回のTTNFBとFNAを併せた病理学的評価では,89%穿刺で組織が獲得され,良悪性診断感度は83%であったとした.また,偶発症を認めなかったと報告している.1回のFNAの穿刺の中で,生検鉗子を用い上乗せで検体採取ができる可能性があり,その有用性についてさらなる検討の結果が待たれる.

実際に組織検体を採取する訳ではないが,EUS-guided needle-based confocal endomicroscopy(NCLE)の有用性も近年報告されている.Confocal endomicroscopy(CLE)とは,蛍光物質(fluorescien)を投与した後にconfocal microscopy(共焦点顕微鏡:CM)を使用して粘膜を観察することにより,生体内で顕微鏡レベルの拡大観察を行うことを可能とした機器である.0.85mmのマイクロプローベ(Cellvizio:Mauna Kea Technologies,France)が開発され,19-gauge針の中を介して病変内の拡大観察が可能となり,膵嚢胞 31)や膵固形腫瘍 32)の観察の有用性が報告されている.本手技をもちいることにより実際に組織検体採取をしなくても組織学的検討がreal-timeで施行できる可能性がある.

Ⅶ おわりに

EUS-FNAにおける組織採取のコツを,evidence基づきながら,われわれ自身の経験も交えて概説した.組織採取におけるゴールデンスタンダードはなく,今回報告した組織採取のコツを知った上で,各施設の状況,術者の技量に応じた,効率的で安全なEUS-FNAにおける組織採取法を検討する必要がある.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

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