日本消化器内視鏡学会雑誌
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内視鏡室の紹介
岩手県立胆沢(いさわ)病院
責任者:萱場尚一  〒023-0864 岩手県奥州市水沢区字龍ヶ馬場61番地
萱場 尚一
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2016 年 58 巻 11 号 p. 2332-2334

詳細

概要

沿革・特徴

岩手県立胆沢病院は昭和11年に購買利用組合胆沢病院として発足,昭和25年に岩手県に移管され県立病院となり,その後,施設の増改築・診療機能の充実を図るなどの幾多の変遷を経て,平成9年3月より水沢市(当時)龍ヶ馬場地区に全面移転新築,と同時に消化器内科の診療体制が新たに整い現在に至っている.周囲の医療圏は,いわゆる胆江地区と呼ばれていたが,平成18年に奥州市が誕生,その人口13万余りと更に遠方からの患者も含め,岩手県南の中核病院としての重要な役割を担っている.

平成16年に病院増築棟内に現在の内視鏡室が拡充移転し,平成19年より日本消化器内視鏡学会の指導施設に認定されている.以前より内視鏡検査・治療を積極的に展開してきており,上下部ESDやEPLBD件数は全国主要施設に引けを取らないレベルである.

組織

消化器内科の外来部門,内視鏡部として独立.看護師・事務・補助者は外来内科部門の所属だが専属である.一部,呼吸器内科医師による気管支鏡検査も担当している.

検査室レイアウト

 

 

 

当内視鏡室の特徴

病院新築10年後に完成した増築棟の1階に位置するが,あらかじめ予算や総面積が限られていたために,内視鏡室自体は198m2とコンパクトな設計となっている.廊下をはさんだ向かい側に共用ではあるが,主に気管支鏡用にレイアウトされたものと,消化器内視鏡用にレイアウトされたTVレントゲン室がある.近年は動画撮影の関係などからDSA室で内視鏡処置を行うことも多くなってきている.内視鏡室は上部3ブース,下部2ブースで,それぞれ1ブースはベッドでそのまま入れる設計になっている.各部屋に電子カルテ,ファイリングシステムの端末が備わっており,狭いながらもリカバリー室・患者用トイレ4室・更衣室2室を有している.消化器内科ミーティングや画像レビューはカンファレンス室で行っている.

上部下部内視鏡検査は毎日午前に施行,午後の治療についても特に制限を設けず施行している.近年の治療件数増に伴い,上部下部ESDを並列で行っていることが多く,更にそれと並行して透視室での処置や緊急での胆膵系内視鏡をこなすことになり,医師・スタッフはいつもギリギリの状態である.また土日・夜間でも可能な限り緊急内視鏡を施行しているので,スタッフの呼び出し回数は他の部門に比べ明らかに多くなっている.

スタッフ

(2016年3月現在)

医   師:指導医1名,専門医3名,その他スタッフ1名,研修医など2名

内視鏡技師:Ⅰ種4名

看 護 師:常勤6名,非常勤1名

事 務 職:1名

そ の 他:1名

設備・備品

(2016年3月現在)

 

 

実績

(2015年1月~2015年12月まで)

 

 

指導体制,指導方針

当院は内科学会教育認定施設,消化器病学会・消化器内視鏡学会指導施設であり,初期研修医が1学年10人弱在籍,2年間の中で2~3カ月の消化器内科ローテートが必修となっている.回ってくる時期にもよるが,当初は内視鏡というより内科や消化器内科全般を見渡せるような指導としている.その後にモデルなどで内視鏡操作を十分訓練し,機会があれば指導医の厳重な監視の下,引き抜きを中心とした内視鏡観察や経皮的処置などを中心に医療行為を行ってもらう.また消化器内科の最新の動向に触れる機会を設けるため,ローテート中に開催される全国規模の学会や勉強会に必ず参加してもらっている.興味を示した研修医については,2年目後半に選択で再度ローテート出来るシステムなので,更に知識や技術を発展させ地方会の発表や内視鏡挿入,治療の介助などを含め,なるべく消化器内視鏡に携われる環境を与えている.当院全体の方針として知識中心ではなく実践型の研修を各科で行っているため,初期研修を終える段階で消化器分野に限らず,臨床医として一通りの処置や救急対応はこなせるようになっている.

後期研修からは一医師として常勤医と同様に外来業務や検査に入り,主治医として入院患者を担当するので,後輩の初期研修医達の指導も含め,多忙ながらも最も充実した時間を過ごすことになる.むろん患者数の制限は必要であり,内視鏡手技的にも数多くの壁に当たるが,常勤医全員でのきめ細かい指導や常に相談しやすい環境を整えているので,後期研修医達は一歩づつではあるが順調に消化器内視鏡医としてのキャリアを積んでいく.同様に大学院生の診療応援や,大学院卒業直後の医師が赴任してくることも多いが,当科最大の特色である消化管ESDを始めとした豊富な症例数を存分に体験してもらい,次のステップに生かしてもらうよう心掛けている.

現状の問題点と今後

病院新築から20年,内視鏡室が移転してから10年が経過し,近年の機材の増加や治療件数増の観点からみても施設の老朽化が問題になりつつある.もともと手狭な造りだったが,次回新設時には多くの指導施設のようにかなり広いレイアウトが望ましいであろう.また右肩上がりの治療件数の中,胆膵系疾患については今後とも内視鏡的診断・治療が主流となるので,共用ではなく専用のTVレントゲン室が是非とも必要と思われる.消化器内科病棟は病床利用率が9割を超え,日勤帯を超えた治療や夜間・土日の緊急の呼び出しも多く,スタッフの疲弊が目立つことなどから,より多くの人材確保も望まれる.消化器内科は,昨年度も入院患者数・入院収益とも院内で一番であり,それに見合ったハード面・ソフト面両方の環境整備は喫緊の課題であろう.

消化器内科・内視鏡室の予算は元々かなり限られており,現存のラインナップも未だ旧式のものが数多く見受けられる.昨年度当院にダヴィンチシステムが導入されたことにより更に厳しい状況となり,スコープ1本新規購入するのにも四苦八苦している昨今であった.幸いなことに2016年度より,部分的ではあるが内視鏡機器リースシステムVPPが導入される見込みとなり,一気に機器の整備が進む可能性が出てきた.最新式の内視鏡システムが整備され,更に診断治療が発展し,地域のために役立っていくことを切に願っている.

 
© 2016 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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