日本消化器内視鏡学会雑誌
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内視鏡室の紹介
福岡大学筑紫病院 内視鏡部
責任者:八尾建史  〒818-0067 福岡県筑紫野市俗明院1-1-1
八尾 建史
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2016 年 58 巻 11 号 p. 2338-2341

詳細

概要

沿革・特徴など

福岡大学筑紫病院は,昭和60年7月1日に開院した.開院時より八尾恒良教授(現在:福岡大学名誉教授)が主催する消化器科(現,消化器内科)の医師により,内視鏡室において様々な内視鏡検査や治療が行われてきた.平成3年10月1日より,独立した診療各部の一部門として内視鏡部が新設された.旧病院においては,内視鏡検査室は,わずか4室で,内視鏡検査室と記録室からなる限られたスペースで診療を行っていた.福岡大学筑紫病院が新築されたのに伴い平成25年5月7日の開院以来新しい内視鏡部での診療を開始し,現在に至っている.現在の福岡大学筑紫病院の病床数は310床である.

組織

前述したように,内視鏡部は独立した診療各部の一部門である.内視鏡診療は,内視鏡部と消化器内科に所属する医師が担当している.看護師・看護助手は看護部から,臨床工学技師は臨床工学センターから,受付事務は事務部門から派遣されている.学外からの研修者や海外から研修に来る医師も受け入れている.

検査室レイアウト(Figure 12

現在の内視鏡部の総面積は,373.8m2である.内視鏡部内には7室の検査室を配置し,X線を使用しないすべての内視鏡検査(カプセル内視鏡を含む)や内視鏡治療を行っている.隣接する放射線部の3つの透視室において,胆膵系の内視鏡診断・治療,バルーン内視鏡による小腸内視鏡による内視鏡診断・治療,食道の拡張術などを行っている.

 

 

 

Figure 1 

 

Figure 2 

当内視鏡部の特徴

本内視鏡部の特徴は,患者さんの動線,スタッフと機器の動線が完全に分かれている 1).全内視鏡室には,最新の電子内視鏡システムを配置しており,ルーチン検査から精密検査に至るまで,全例にimage enhance endoscopyを併用した拡大内視鏡を使用できる.また,患者さんが受付をしてから,前処置,検査,リカバリー室での休息,検査後の説明まで,すべての内視鏡診療を部門内で完結できる.スタッフは,モニター室において,すべての検査室の監視カメラ画像,内視鏡画像,生態情報モニターが配置され,内視鏡室の様子が一覧できる(Figure 2).また,上部前処置室,下部前処置室,リカバリー室の監視カメラ映像もモニター室で見ることができる.

機器の導線については,上下部それぞれのスコープを洗浄室まで最短距離で運搬することができ,スコープの装着,脱着,運搬,洗浄まで効率よく業務を遂行できる.生検後や治療後の標本は,専用の検体用のエレベーターを用い3階の検査室まで送ることができる.

スタッフ

(平成28年4月現在)

医   師:指導医7名,専門医4名,その他スタッフ29名

内視鏡技師:その他技師3名

看 護 師:常勤4名,非常勤1名

事 務 職:1名

看護助手:3名

設備・備品

(平成28年4月現在)

 

 

実績

(平成27年4月~平成28年3月まで)

 

 

指導体制,指導方針

当内視鏡部では,内視鏡部・消化器内科に所属する総勢40名の医師が内視鏡診療を担当している.そのうち,7名が日本消化器内視鏡学会指導医である.内視鏡研修は後期研修で入局したのちに開始する.入局後1年目は,まず,上部消化管内視鏡検査から開始し,上級医が研修医に対してマンツーマンで指導にあたる.その半年後から大腸内視鏡検査を開始する.入局後2-3年目から関連病院に出張し,約2年間,通常の内視鏡検査を多数経験することに加え,大腸ポリペクトミーやEMRの経験を積む.再び大学に帰った後,咽頭・食道,胃,小腸,大腸,胆膵の専門分野に分かれ,さらに専門性の高い診断・治療を修練する.

この間,大学院に入れば,消化器病理学や内視鏡医学を中心とし,さらに深い形態診断について腰を据えて4年間勉強し,臨床的研究で一流のジャーナルに論文を投稿し,医学博士の資格を得ることも可能である.現在は,内視鏡部には,3名の大学院生が在籍し最新のテーマに取り組んでいる.

当内視鏡部では,特に画像診断と病理診断に力を注いでおり,病理部とも常に密に連携をとっている.内視鏡部内のカンファレンス室には,写真撮影ができるデスカッション顕微鏡,内視鏡ファイリングシステムの端末,X線画像用の高精細モニター,電子カルテの端末,カプセル内視鏡システムを配置している.すなわち,内視鏡部専用のカンファレンス室で画像所見と病理所見を用い,いつでも自由に画像診断について学習することや議論することができる.このカンファレンス室には,テレカンファレンスシステムも導入しており,国内外の研究者の施設と接続し,カンファレンスを行える.また,内視鏡検査室からは,ハイビジョン画像・音声のケーブルがカンファレンス室まで引かれ出力端子があるので,テレカンファレンスシステムに容易に接続でき,内視鏡ライブデモンストレーションの配信も行える.

さらに,近隣の紹介医を中心とした研究会や他大学との画像診断のカンファレンスを頻繁に開催し,九州胃拡大内視鏡研究会も年2回主催している.また,多数の画像診断カンファレンスに内視鏡画像と病理画像を緻密に対比した症例を呈示している.これらのプレゼンテーションを作成することで,内視鏡画像と病理組織学的構築について,深い理解が得られ,正確な内視鏡画像診断を習得するには適切な環境である.

他の内視鏡施設と異なる点は,初学者であっても,上部,下部のルーチン検査で最新の機器を用い研修ができることである.すなわち,内視鏡部7室すべてにおいて最新のビデオプロセッサーが配置され,いつでもだれでもNBI併用拡大内視鏡を使用することができる.

以上のように,正確な診断に基づいた正確な内視鏡治療を学習させることが本内視鏡部の指導方針である.

現状の問題点と今後

内視鏡部の施設そのものは,理想的なものが完成している.運用に関しても遜色ない.医師のスタッフは十分であるが,診療の内容や数の割には,看護師の数が不足している点が問題である.7対1看護などで,入院管理料を算定するために,看護師は,病棟やICU,HCUに手厚く配置されているが,内視鏡検査部門には,わずか3-4名しか配置されていない.今後,内視鏡学会としても指導施設には,最低でも検査室と同じかそれ以上の看護師を配置するなどの条件を設定し,内視鏡診療が安全に円滑に行われるようなマネージメントが必要と考えられる.

文 献
  • 1.   八尾 建史.内視鏡部門の設計. 松井 敏幸, 赤松 泰次, 田村 君英編.消化器内視鏡技師のためのハンドブック.改訂第7版,医学図書出版東京,2016;61-4.
 
© 2016 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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