日本消化器内視鏡学会雑誌
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原著
ドロペリドール,フェンタニル,ケタミンを組み合わせた静脈麻酔によるERCP 鎮静法の安全性評価
進藤 浩子 深澤 光晴飯嶋 哲也高野 伸一門倉 信高橋 英横田 雄大廣瀬 純穂佐藤 公榎本 信幸
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2016 年 58 巻 12 号 p. 2389-2398

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要旨

【目的】ベンゾジアゼピンを用いた従来のERCP鎮静ではしばしば脱抑制による体動を認める.安定した鎮静を得られる方法としてドロペリドール,フェンタニル,ケタミンを用いた静脈麻酔による鎮静法の安全性と有効性を評価した.

【方法】対象はERCPの鎮静にミダゾラムとペンタゾシンを用いた従来法群42例とドロペリドール,フェンタニル,ケタミン(DFK法)群17例.評価項目は鎮静関連偶発症および鎮静効果とした.

【結果】SpO2 90%未満を認めた症例は従来法で4例(10%),DFK法で1例(6%)と有意差は認めなかった.体動により処置継続に支障があった症例は従来法で8例(19%),DFK法で0例とDFK法で良好な鎮静効果を得られる傾向を認めた(p=0.09).

鎮静困難ハイリスク症例である飲酒習慣を有する21例では,鎮静不良となる症例はDFK群で有意に少なかった(従来法 50% vs DFK法 0%,p=0.02).

【結論】DFK法は従来法と比較して同等な安全性で施行可能であった.飲酒習慣を有する症例ではDKF法の方が有効な鎮静が得られた.

Ⅰ 緒  言

消化器内視鏡診療における鎮静下で行われる検査の増加に伴い,日本消化器内視鏡学会より「内視鏡診療における鎮静に関するガイドライン」 1が作成された.このなかで内視鏡検査に適した鎮静レベルとしては問いかけや刺激に意図して反応できる「意識下鎮静」が妥当とされている.しかしERCPを含む治療内視鏡では体動のない安定した処置のためにより深い鎮静が必要となる場合がある.深い鎮静に伴う偶発症として気道閉塞,呼吸抑制,循環抑制を引き起こす危険性がある.鎮静薬に関連した偶発症での死亡例も報告されており 2,内視鏡手技におけるMonitored anesthesia careの重要性が高まっている.

ERCP関連手技の際には,一般にベンゾジアゼピンによる鎮静法が用いられているが,脱抑制(奇異反応Paradoxical reactions)による体動で処置の継続が困難となる症例が存在する.鎮痛薬としてペンタゾシンが併用されるが,効果は十分とは言えない 3.最近プロポフォールやケタミン,フェンタニルを組み合わせるバランス麻酔を用いた内視鏡処置時の鎮静法が報告されており 4,鎮静を浅めにし,patient controlで除痛および鎮静継続を行うことの有用性も報告されている 5),6

今回新たな鎮静法として術後疼痛や侵襲的処置時の疼痛緩和としての有効性が報告されている 7静脈麻酔ドロペリドール,ケタミン,フェンタニルカクテル(DKF)法を用いたERCP鎮静法の安全性と有効性を検討した.

Ⅱ 対  象

当院で2012年8月から2013年9月の期間にERCPを施行した症例のうち,術中に鎮静の評価を行った59例を対象とした.ミダゾラムとペンタゾシンによる従来法の鎮静を行った42例とドロペリドール,ケタミン,フェンタニルによるDFK法の鎮静を行った17例の比較検討を行った.DKF群の鎮静に関しては事前に山梨大学倫理委員会の承認(倫理委員会受付番号1034)を得て,麻酔科医立会いの下で施行した.

DFK法群の患者は,ERCP関連手技を施行する肝胆膵疾患を有し,同意取得時の年齢が20歳以上90歳未満を対象とした.除外基準はAmerican Society of Anethesiologists分類 Ⅳ以上,胃切除後(Billoth-Ⅱ再建法・Roue-en-Y再建法),認知症などにより意思決定が困難な患者,ミダゾラム,ドロペリドール,フェンタニル,ケタミン,ペンタゾシンにアレルギーがある患者,上記薬剤の禁忌疾患を有する患者(急性峡隅角緑内障,重症筋無力症,HIVプロテアーゼ阻害薬およびHIV逆転写酵素阻害薬を投与中の患者,痙攣発作の既往,QT延長症候群(QTc 0.45秒以上),脳血管障害,頭蓋内圧亢進症,薬剤性パーキンソニズム,パーキンソン病),その他,主治医が本試験を実施するのに不適当と認めた患者,とした.

処置前に鎮静に関する十分なインフォームドコンセントを行い文書で同意を取得した.患者選択については麻酔科医の立会いが可能な処置日程の患者に対してDFK法を施行し,同時期に従来法で鎮静を行った42例をコントロールとして比較検討した.

Ⅲ 方  法

(1)評価項目

主要評価項目:

呼吸・循環動態への影響評価として,呼吸回数,SpO2,血圧,脈拍数について,DFK法と従来法の比較を行った.

副次的評価項目:

検査時間,鎮静剤使用量,鎮静スコア,体動スコア,術者満足度,患者満足度(鎮静度,苦痛度,終了後の嘔気),検査偶発症の発生頻度について,DFK法と従来法の比較を行った.

(2)施行体制

すべてのERCP関連手技は日本消化器内視鏡学会認定指導医または同専門医の指導のもと内視鏡経験5年以上の消化器内科医が施行した.今回の研究ではCO2送気ではなく,通常の空気送気で施行した.DFK法では麻酔科医が前日の患者への説明を行い,DFKカクテルの作成および入室時に薬剤静注ポンプの設定・接続を行い,検査・処置中も鎮静担当医とともに鎮静管理を行った.検査開始時に経鼻カニューラを用いて酸素投与(2L/分)を行い,動脈血酸素飽和度(SpO2)低下時は鎮静担当医の判断で酸素投与量の増量を行った.また過鎮静に備えて拮抗剤(フルマゼニル注® 富士製薬,ナロキソン塩酸塩注® 第一三共)を準備した.

(3)モニタリング

いずれの鎮静法においても内視鏡医(術者)と別に鎮静管理・患者モニタリングを専門に行う鎮静担当医(非麻酔科医)をおき,経時的に血圧,呼吸回数,脈拍,心電図,SpO2をモニタリングし,5分毎に記録した.また鎮静の質を評価するため患者の体動と鎮静の深さをスコア化(Table 1)し5分毎に記録した.検査終了時に術者の鎮静に関する満足度を,翌日に患者の満足度を評価した.

Table 1 

鎮静スコア,体動スコア.

呼吸回数のモニタリングに用いた機器:MASIMO Rad-87TM(マシモジャパン株式会社,東京)はSpO2,脈拍数に加えて呼吸数(RRaTM)の非侵襲的連続測定が可能なベッドサイドモニタであり,前頸部に音響トランスデューサ内蔵センサを装着し気道音を検出することで呼吸数を連続的に表示する機器である.

(4)鎮静方法(Figure 1

Figure 1 

鎮静法プロトコル.

前投薬:

入室前に制吐剤としてジフェンヒドラミン・ジプロフィリン(トラベルミン注®;エーザイ)1ml 筋肉注射(75歳以上では0.5ml筋肉注射)を行い,入室後にキシロカインスプレーで咽頭麻酔を行った.

従来法群の鎮静:

ミダゾラム(ドルミカム注射液®;アステラス製薬)3mg(75歳以上では2mg)とペンタゾシン(ソセゴン注®;丸石製薬)15mgを静注し3分後に検査開始.鎮静が不十分(鎮静スコア3または体動スコア2以上)な場合にはミダゾラム2mg,ペンタゾシン7.5mgを交互に追加投与した.

DFK法群の鎮静:

ドロペリドール(ドロレプタン注®;第一三共25mg/10ml)5mg/2ml,フェンタニルクエン酸塩(フェンタニル注®;第一三共プロファーマ0.25mg/5ml)1mg/20ml,ケタミン塩酸塩(ケタラール静注用®;第一三共プロファーマ200mg/20ml)100mg/10ml,に生理食塩水18mlを加え,計50mlのDFKカクテルを作成する(組成:ドロペリドール 100μg/ml,フェンタニル 20μg/ml,ケタミン 2mg/ml).

電動式薬剤静注ポンプ設定:

JMS i-FusorTM Plus(株式会社ジェイ・エム・エス,東京)を用いた.設定した速度での持続投与(ベース)および,必要に応じて設定量のボーラス投与が可能であり,ベース 12ml/h,ボーラス 1mlに設定した.

ミダゾラム3mg単回静注(75歳以上では2mg)と薬剤静注ポンプのボーラス1回分(1ml)投与後にベース投与(12ml/h)開始し,3分後に検査開始.鎮静スコア3または体動スコア2以上でボーラス1回投与を行った.開始から30分経過したらベース投与速度を半量に減量した.30分経過する前であっても呼吸回数減少,SpO2低下,血圧低下時に適宜半量への減量を行った.鎮静終了時にベース 0ml/h,ボーラス 0.5mlとし疼痛時のみ投与可能とした.翌朝疼痛なければ薬剤静注ポンプを終了とした.

(5)統計解析

主要評価項目および副次的評価項目ともに,χ2乗検定,Mann-Whitney検定,Fisher検定によりDFK法と従来法の比較を行った.

体動スコア2以上となる脱抑制(奇異反応)のリスク因子評価のためχ2乗検定による単変量解析,二項ロジスティック回帰分析を行った.

いずれの検定においてもp<0.05を有意差有と判断した.

Ⅳ 結  果

(1)患者背景:年齢,性別,BMI,ASA分類,疾患,常習飲酒家の割合,ベンゾジアゼピン常用者の割合の各項目においてDFK群,従来法群の間に有意差を認めなかった.オピオイド投与中の症例は従来法群で1例のみであった(Table 2).

Table 2 

患者背景.

(2)呼吸・循環動態への影響 (Table 3

Table 3 

呼吸・循環動態への影響.

DKF法,従来法いずれも循環動態変化による検査中止例はなかった.検査中にフルマゼニルやナロキソンなどの拮抗剤を要する症例もなかった.

処置中の最低値で収縮期血圧が90mmHg未満となった症例はDKF群で2/17例(12%),従来法群で3/42(7%)で差は見られなかった.DFK群の1例で収縮期血圧60mmHg台への血圧低下を認めエフェドリンの投与を行った.呼吸抑制についてはSpO2の最低値が90%未満となった(または酸素投与量増加を要した)症例はDKF群で1/17例(6%),従来法群で4/42(10%)と差は見られなかったが,呼吸回数を測定した症例において呼吸回数減少(8回/分未満)をDKF群の5/17(29%),従来法群の1/13(8%)に認め有意差はないもののDKF群で頻度が高い傾向を認めた(p=0.20).10秒以上の無呼吸はDKF群で1例,従来法群では0例であった.呼吸回数の減少がみられた症例でもSpO2はほとんどの症例で低下せずERCP後の合併症の頻度はいずれの群も同等であった.

(3)検査時間,薬剤投与量:検査時間はDFK群で58±24分,従来法群で49±20分(p=0.31)で有意差はなかった.従来法群におけるミダゾラム投与量は平均5.9±2.3mg,ペンタゾシン投与量は平均19.5±5.9mgであった.DFK法におけるDFKカクテルの総投与量は平均10.1±4.2ml,ドロペリドール投与量0.02±0.01mg/kg,ケタミン投与量 0.42±0.11mg/kg/hr,フェンタニル投与量4.2±1.1μg/kg/hrであった.

(4)鎮静および体動スコア

奇異反応による体動で検査・処置の中止に至った症例(体動スコア4点)はいずれの群でもみられなかった.処置中に体幹・四肢の抑制が必要であった症例(体動スコア3点)は従来法で8例(19%),DFK法で0例とDFK法の方が体動の少ない良好な鎮静を得られる傾向を認めた(p=0.09)(Figure 2).なお,鎮静スコアは各症例の処置中の平均で従来法群1.37±0.34,DFK群 1.35±0.35と鎮静の深さに差は認めなかった.

Figure 2 

体動スコア.

(5)体動に関連する因子(Table 4

Table 4 

体動の因子.

処置中の体動が出現し抑制を要した症例につき,関連する因子を検討した.性別,年齢(60歳未満),疾患(総胆管結石か否か),ASA(3以上),鎮静法,検査時間(50分以上),飲酒習慣(1日アルコール換算20g/日以上),ベンゾジアゼピン常用,麻薬使用の各因子につき検討したところ,単変量解析では飲酒習慣(p=0.02)で有意差を認め,p<0.2であった性別,鎮静法,検査時間,飲酒習慣の4因子でロジスティック回帰分析を行うと鎮静法(オッズ比 5.4,95%CI:1.2-24.6,p=0.03)が体動のリスク因子として抽出された.

体動ハイリスク症例である1日20g/日以上の飲酒習慣を有する患者21例(従来法12例,DFK法9例)で鎮静法別に体動スコアを比較した結果,処置継続に支障をきたすスコア3点以上はDFK群で有意に少なかった(従来法 50% vs DFK法 0%,p=0.02)(Figure 3).

Figure 3 

飲酒習慣(20g/日以上)を有する症例の体動スコア.

(6)術者満足度,患者満足度 (Figure 4

Figure 4 

鎮静満足度.

a:術者満足度.

b:患者満足度.

終了時の術者アンケートによる満足度は鎮静不良でかなり支障があった症例が従来法群では4/26例(15%)であったのに対し,DFK群では0/17例であった(p=0.14).

翌日の患者アンケートによる満足度は検査中の苦痛について苦痛があったと答えた症例が従来法群で3/33例(9%),DFK群で0/17例(p=0.54)であった.従来法群でのアンケート回答率が低く,有意差はないもののDKF群では体動が少なく術者・患者満足度の高い鎮静が得られる傾向があった.

Ⅴ 考  察

ミダゾラムなどのベンゾジアゼピン系向精神薬は催眠,鎮静,抗不安効果を期待して内視鏡処置中の鎮静に用いられるが副作用として脱抑制にともなう多弁,攻撃性が出現することがあり奇異反応とも呼ばれている.奇異反応は処置中の疼痛などにより惹起されることが報告されており 3,ERCPは内視鏡処置の中でも腹臥位で比較的長時間におよぶため鎮静中の苦痛に伴う奇異反応が出現しやすく,処置を完遂することが困難となることを時に経験する.奇異反応に対してミダゾラムの追加投与を繰り返すと投与量の増加に伴い呼吸抑制のリスクが高まり,処置後の覚醒も不良となる.

本検討ではミダゾラムの初期投与に続くDFKカクテルの持続投与および体動時のボーラス投与によって有意差はないものの,従来法群より体動が少なく安定した鎮静が得られた.それに伴い術者満足度,患者満足度ともに良好な結果となった.鎮静に伴う呼吸抑制については,呼吸回数減少がDFK群で多い傾向があるものの投与量の調整により臨床的に問題となるSpO2低下や無呼吸が増加することはなかった.体動に関する因子の検討では飲酒習慣が独立した危険因子であり,従来法では50%が処置に支障をきたしたがDFK法では飲酒習慣を有する症例においても良好な鎮静が得られた.

近年のERCP時の鎮静の報告ではプロポフォールやデクスメデトミジンを用いたものが多く見られている.プロポフォールは作用発現,作用持続時間が短く覚醒が速やかであることがメリットとされているが呼吸抑制が生じるリスクが高く,鎮静として用いる場合の治療域が狭いため,麻酔技術に熟練した医師の管理が必要とされている.ERCPの鎮静においてはフェンタニル 8,ミダゾラム 9との併用などが報告されている.デクスメトミジンは呼吸抑制が少ないという点から近年ERCPの鎮静法として注目され報告が多くみられるようになった 10)~12がアルコール多飲者の鎮静では単剤では鎮静不良であったと報告されている 13.また呼吸抑制は少ないが除脈,血圧低下などの循環抑制が比較的高頻度にみられるとされている.

今回の検討で用いたケタミン,ドロペリドール,フェンタニルもそれぞれ内視鏡処置時の鎮静に用いた報告がある.ケタミンはプロポフォール 14,フェンタニルとの併用 4),8で鎮静不良例での鎮静効果改善や呼吸抑制減少,覚醒良好などの報告を認め他の鎮静薬との併用でメリットが多い薬剤と考えられる.

ドロペリドールはフェンタニルと合わせてNeuroleptanesthesia(NLA)として,自発呼吸下に耳鼻科における喉頭・咽頭鏡検査および手術を行う際に安全かつ有用な方法として広く一般に行われてきた麻酔方法である.さらにケタミンを混合したDFK法は自発呼吸が維持される麻酔方法として知られている 15.ドロペリドールは強い制吐効果をもつため,少量投与にて有効であると最新のガイドラインにおいても推奨されている 16.ERCPの鎮静においても鎮静困難な患者における鎮静補助に有用との報告があり 17米国ではしばしば用いられていたが2001年にFood and Drug Administration(FDA)よりQT延長に伴うTorsades de pointes(TdP)を引き起こす可能性があると警告されており内視鏡時のドロペリドール使用に関するガイドラインでは鎮静困難な患者に限定し,12誘導心電図でのQT延長のスクリーニング,処置中・処置後の心電図モニタリング,初期投与量は2.5mgを越えないことなどが示されている 18.本邦の添付文書でも「気道確保,呼吸管理などの蘇生設備の完備された場所で麻酔科医の管理下で使用する」とされている.ERCPの鎮静にドロペリドールを用いた報告 19ではスクリーニングでQT延長を認めなかった患者でも処置中のモニターでは7%にQT延長が出現したが,致死性不整脈の出現は認めなかったと報告している.QT延長はdose-dependentとされており 20,本研究で用いた量は最大で2.03mgと低用量でありリスクは低いと考えられる.

鎮静困難となる患者群としては若年,ベンゾジアゼピン常用者,麻薬使用者,アルコール多飲者,不安神経症,鎮静困難の既往などが挙げられる 19.今回の検討でも抑制を要する体動が出現する因子として飲酒習慣を有することが抽出され,従来法では50%の症例で処置に支障をきたしたが,このように鎮静が困難となる症例群でもDKF法は有用であった.本検討では症例数が少なく評価できなかったがオピオイド使用中の患者においても,ペンタゾシンはμオピオイド受容体拮抗作用による離脱症候が出現する可能性があるため使用困難であり,DKF法の良い適応になりうると考える.

本研究ではSpO2 90%未満となる症例をDFK法で6%,従来法でも10%と少なからず認めた.現在,内視鏡処置中の呼吸モニタリングとして頻用されているSpO2は酸素化のモニターであり,換気のモニターではないため低換気の検出は遅延する危険性がある.特に酸素投与下では検出してから呼吸停止・心停止にいたるまでの時間が短く対処が遅れる可能性がある.今回われわれが用いたアコースティックモニタリング法(RRaTM)では簡便に呼吸回数のモニタリングが可能であり,精度はカプノグラフィーと同等と報告されている 21.内視鏡処置中の無呼吸の検出には他の方法より優れているとの報告もある 22.今後より積極的に呼吸回数の評価を取り入れる必要があると考える.

本研究のlimitationとしてはDKF群の症例数が少ないこと,盲検化されていないこと,ランダム割り付けでないことが挙げられる.対象症例も麻酔科医立会い可能な日程で選別登録したため連続症例ではなく,選択バイアスがある可能性がある.また従来法での満足度調査回答率が低いことも挙げられる.

Ⅵ 結  論

ドロペリドール,ケタミン,フェンタニルを用いたERCPの鎮静は従来法と比較して同等な安全性で施行可能であった.

ただし心電図モニタ,呼吸回数測定などの厳重なモニタリングが望ましいと考える.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

文 献
 
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