日本消化器内視鏡学会雑誌
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成人腸重積症による腸管壊死の1例
佐藤 宗広 古川 浩一橋立 英樹
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2016 年 58 巻 12 号 p. 2430-2431

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【症例】

症例:68歳,男性.

主訴:右下腹部痛,血便.

現病歴:受診1週間前より右下腹部痛を自覚.その後血便を認めたため,精査加療目的に当科に紹介された.

初診時現症:血圧178/88mmHg,脈拍63/分,体温36.7℃.腹部は平坦,右下腹部に圧痛あり,腹膜刺激症状なし.

血液検査所見:WBC10,900/μl,Hb 13.9g/dl,CRP0.84mg/dl,CK104IU/l,LDH199IU/l.

腹部造影CT:上行結腸に同心円状の層構造を認め,回腸を先進部とするfat density areaを認めた(Figure 1).また,腸管に明らかな造影不良域は認めなかった.

Figure 1 

腹部CT造影所見:同心円状構造とfat density area(赤矢印)を認める.

入院後経過:脂肪腫による腸重積症が疑われ,診断・整復目的に同日緊急に大腸内視鏡を施行した.上行結腸に嵌入した回腸を認め,先進部の粘膜は暗赤色調に変色しており,一部に粘膜の脱落を認めた(Figure 2).観察範囲内では嵌入した回腸の粘膜も同様に変色し,出血をきたしていた(Figure 3).内視鏡所見から腸重積症による高度の虚血性粘膜障害と診断.経過も長く進行性で不可逆的な腸管壊死をきたしている可能性が高いと判断し,同日緊急手術を施行した.手術は右下腹部に重積腸管を認め,回盲部切除を施行した.切除標本所見は回腸の粘膜は黒く変色しており,大きさ4cm大の有茎性の腫瘤性病変を認めた(Figure 4).組織学的に腫瘤は粘膜下層に発生した脂肪腫であり,広範囲に粘膜壊死・脱落と一部に全層性壊死を認めた.術後の経過は良好で,第9病日に退院した.

Figure 2 

大腸内視鏡検査:先進部は暗赤色調に変色し,一部に粘膜脱落を認める.

Figure 3 

大腸内視鏡検査:嵌入した粘膜も暗赤色調に変色し,出血を認める.

Figure 4 

切除標本:回腸粘膜は黒く変色しており,有茎性の腫瘤(黄矢印)を認める.

【解説】

成人の腸重積症は比較的稀な疾患であり,原因として腫瘍などの器質的疾患が多い.診断は症状のみからでは困難であり,腹部超音波やCTが有用である.また,内視鏡は原因となる器質的疾患の診断が可能であることから必要とする報告がある 1).治療は腸管切除・用手整復術を含めた外科的な処置が多いが,保存的治療で軽快する症例もある.手術の時期については診断後に緊急となる場合が多いが,待機的な手術も可能であり,全身状態を考慮して判断すべきである.しかし,ひとたび腸管が広範囲な壊死に陥ると致死的となるため,迅速な診断が必要となる.最近はCTの進歩により腸管壊死の診断が早期に可能となったが,本症例の様にCTのみでは判断に迷うことがあり,臨床経過や腹部症状・血液検査,そして内視鏡などから総合的に逐次判断していくことが重要と考える.

医学中央雑誌(1981〜2015年)で「成人腸重積」「内視鏡」をキーワードに検索したところ,本症例と同様に腸管壊死の診断に至り緊急手術をされた症例 2や,診断後に待機的に低侵襲な腹腔鏡手術をされた症例 3など術前に内視鏡をすることで治療方針の判断に有用であった報告が多い.

本症例において,腹膜刺激症状などは認めず,全身状態は比較的良好なため緊急内視鏡を実施したところ,腸管粘膜が暗赤色調に変色していた.腸管壊死における内視鏡所見は非閉塞性腸管虚血症(NOMI)や壊死型虚血性腸炎などが報告されており 4),5),黒色から青銅色調,また暗赤色調に変色を呈すると言われている.本症例も腸管粘膜が同様に変色し,高度の腸管虚血による内視鏡所見に矛盾せず,腸管壊死へ移行していると考えられた.送気にて整復を試みるところだが,過剰な送気が腸管内圧の上昇をきたし,腸管の脆弱な部位が穿孔をきたす可能性もあると考え,極力送気を抑え観察のみで終了した.内視鏡的整復が困難なため,致死的な腸管壊死へ進行するリスクが高いと判断し,迅速に手術をされたことが良好な術後経過につながった.

成人腸重積症における内視鏡は,診断・整復のみならず腸管粘膜の評価もできることから早期の手術介入の判断に有用である.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

文 献
 
© 2016 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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