日本消化器内視鏡学会雑誌
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内視鏡室の紹介
高知大学医学部附属病院 内視鏡診療部
責任者:西原利治  〒783-8505 高知県南国市岡豊町小蓮185-1
水田 洋
著者情報
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2017 年 59 巻 10 号 p. 2561-2563

詳細

概要

沿革・特徴など

当院は1981年4月に高知県唯一の国立大学の附属病院として開院し,現在は613床を有する地域に密着しつつもあらゆる面で高度な医療を提供する県内唯一の医育機関としての役割を果たしてきた.今後確率が高いとされる南海大地震をはじめとする大規模災害に向けては旧病棟の改修と新たに建てられた第二病棟の運用も始まっている.

また当院は日本内科学会認定施設であるとともに,日本消化器病学会,日本消化器内視鏡学会など消化器関連学会の関連施設としても機能を果たしている.

2002年より附属病院中央診療施設の一部門として光学医療診療部が設置され主に消化管および胆膵領域の消化器内視鏡検査・治療を担当し,気管支鏡検査などは,放射線部や呼吸器内科,呼吸器外科と連携しながら管理運営してきたが,今年2017年4月より内視鏡診療部とその名称が変更された.

組織

内視鏡診療部は附属病院の中央診療施設の一部門に位置付けられた独立した部署である.消化器系の内視鏡検査は,スクリーニングから精査治療まで消化器内科医師が行い,外科症例の術前検査や術中の補助内視鏡も消化器内科医師が担当している.

検査室レイアウト

 

 

 

当内視鏡室の特徴

当内視鏡診療部は,内視鏡検査室が4部屋と内視鏡洗浄室で約100m2,大腸内視鏡検査の前処置のための待機準備室,医師カンファレンス室からなる.検査室のうち現在3部屋で内視鏡システムを置いて稼働しており1部屋は患者さんに対する説明・面談室として使用している.検査室と洗浄室は通路で繋がっておりスムーズに移動できる導線となっている.検査室の1部屋はストレッチャーに移動することなくベッドのまま搬入出来る出入り口になっており鎮静下の治療・検査を行いやすい環境となっている.

当院は,地域がん診療連携拠点病院であり,消化管・胆膵領域の腫瘍に対する診断治療を中心に行っている.食道・胃・大腸の腫瘍は,必要に応じて色素内視鏡,NBI併用拡大内視鏡,超音波内視鏡などで病変を詳細に観察しEMR・ESDを行っている.胆膵系の腫瘍では,診断のために積極的にEUS-FNAを行い,悪性狭窄に対するステント留置などの処置も積極的に行っている.最近ではバルーン内視鏡を用いて術後腸管に対するERCPも行っている.また,咽頭領域の腫瘍に対するESDも耳鼻科と協力のもと全身麻酔で施行している.

スタッフ

(2017年7月現在)

医師:指導医3名,専門医7名,その他スタッフ医師7名

看護師:4名(うち内視鏡技師Ⅰ種2名)

内視鏡洗浄助手:2名

事務:1名

設備・備品

(2017年7月現在)

 

 

実績

(2016年4月~2017年3月まで)

 

 

指導体制,指導方針

当院は臨床研修病院であり,前期臨床研修医は各学年5-10名が研修をしている.消化器内科および内視鏡診療部も1-2名の初期研修医が1-2カ月のローテーションをしており上級医が消化器内科医にとって基本となる診断治療について指導している.

内視鏡に関しては初期研修1年目は検査から様々な処置の見学,さらにはそれらの介助まで担当している.内視鏡診療部をローテートしてきた初期研修2年目は,上級医の検査を見学した症例についてのレポート10例,シミュレータを用いて20回以上のトレーニング,実際に内視鏡の被験者となり体験した後,鎮静下の患者を中心に上部消化器内視鏡検査を出来るような体制をとっている.3年目の後期研修医は消化器内科に入局しているものがほとんどであるため,上部消化管内視鏡検査を習得するために,内視鏡操作や診断,所見の記載などを上級医と確認しながら行い,ある程度目標が達成できた時点から下部内視鏡検査を始めるようになる.最初はコロンモデルでトレーニングを積みながら下部内視鏡検査の引き抜きから始め,初めは10分と時間を区切って実際の挿入を開始する.

また週に一度,内視鏡所見の読影・理解を深めるために内視鏡カンファレンス・読影会を施行し通常観察のみならず画像強調内視鏡や拡大内視鏡などについても指導を行ったり,生検やESD症例では術前内視鏡と病理を対比しながら症例検討を行っている.2週間に1度は,消化器外科の上部下部消化管グループと合同カンファレンスを行い,術前の内視鏡評価と術後の評価,画像診断,病理診断の対比を行うことで,診断能の向上とともに振り返りの重要性の指導も行っている.

現状の問題点と今後

現在の当院における内視鏡診療部の問題点はコメディカルの配置を含めた人員の問題と,リカバリールーム,X線透視室などのハード面の問題がある.コメディカルの人員は現在内視鏡診療部に看護師4名いるが,検査や治療の数が年々増加していることに加え,大腸内視鏡検査の前処置や検査前の問診,服用薬の確認など時間を要する仕事に手を取られるため人員の増加が望まれる.また夜間緊急の内視鏡検査では放射線部の看護師の協力により対応しており専門的な対応が必要なときには内視鏡専属の看護師が対応出来るような体制が理想であるが,現時点ではマンパワーの問題で困難な状況である.近年は内視鏡検査の時に鎮静を希望される患者が増えているが鎮静後にはリカバリー室が必要であること,胆膵系内視鏡だけでなくX線透視室が必要な検査処置が増えてきているが内視鏡診療部とX線透視室が離れているため,医師,看護師や機器の移動など手間がかかることが効率低下の一因となっていることなどハード面での充実も望まれる.

今後も限られたスペース,人員の中で安全でかつ質の高い内視鏡検査・治療を提供できるように,医師・コメディカルが研鑚を積みチーム医療を充実させていきたい.

 
© 2017 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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