日本消化器内視鏡学会雑誌
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手技の解説
食道癌に対する光線力学療法(PDT:photodynamic therapy)
矢野 友規 武藤 学
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2017 年 59 巻 12 号 p. 2740-2749

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要旨

光線力学療法(PDT:photodynamic therapy)は,がんに取り込まれる腫瘍親和性光感受性物質(PS:photosensitizer)とPSの吸収波長に一致したレーザー光をがんに照射することで,光化学反応を生じさせて,腫瘍細胞を破壊する局所治療である.2015年に,国内で行われた医師主導治験の良好な結果を受けて,タラポルフィンナトリウム(レザフィリン®,Meiji Seikaファルマ)と半導体レーザ(PDレーザ®)を用いたPDTが化学放射線療法(CRT)後または放射線療法(RT)後遺残再発食道癌に対する治療として薬事承認され,保険適用が認められた.遺残再発食道癌に対するPDTの具体的な適応は,1)リンパ節や遠隔臓器に転移がない,2)遺残再発病変の壁深達度がT2に留まる,3)長径3cm以下,4)半周以下,5)頸部食道に浸潤していない病変になっている.PDTは,レーザー治療なので,病変に対して真正面の位置で出来るだけ近い距離から照射をしないと,治療効果が落ちてしまうという内視鏡治療の特徴とPS投与後の患者は,光線過敏症を起こす可能性があり遮光が必要という患者管理の特徴がある.また,レーザー医療機器は,誤った使用をすると,治療効果が不十分になるだけでなく,重篤な医療事故につながる可能性がある.遺残再発食道癌に対するPDTの各施設への導入に際しては,レーザーの特性や人体に及ぼす影響などの基礎的な講義を含めた講習会の受講が必須になっている.本稿をきっかけに,食道癌に対するPDTが安全で有効な治療として,消化器内視鏡医の間で普及することを期待している.

Ⅰ はじめに

光線力学療法(PDT:photodynamic therapy)とは,がんに選択的に取り込まれる腫瘍親和性光感受性物質(PS:photosensitizer)とPSの吸収波長に一致したレーザー光を照射することで,腫瘍内で光化学反応を生じさせて,腫瘍細胞を破壊する局所治療である.PDTは,レーザー治療ではあるが,レーザー自体は低出力のレーザーであり,抗腫瘍効果はなく,PSとレーザーの反応なくしては効果が得られない.消化管がんの中では,食道癌,胃癌でPDTの保険適用が得られており,消化器内視鏡ガイド下で病変部にレーザー照射を行う.消化管癌に対するPDTは,90年代初めに保険適用が得られた治療ではあるが,ESDの台頭により活躍の場を失っていた.2015年に,遮光期間が短く日光過敏症の副作用が少ないタラポルフィンナトリウム(レザフィリン®,Meiji Seikaファルマ)とコンパクトで使用しやすい半導体レーザー(PDレーザ)が化学放射線療法(CRT)後または放射線療法(RT)後遺残再発食道癌に対する治療として薬事承認され,保険適用が認められた.本稿では,PDTがこの第2世代のPSとレーザーを用いた新しい治療として普及し,本学会員である消化器内視鏡医にとっても身近な治療になることを期待して,食道癌に対するPDTの開発経緯から手技の実際を解説する.

Ⅱ 1.食道癌に対する光線力学療法(PDT)の歴史

光線力学療法(PDT:photodynamic therapy)は,本邦ではポルフィマーナトリウム(フォトフリン®,ファイザー)とエキシマダイレーザー(浜松フォトニクス社)を用いた方法が,表在性食道癌に対する根治的な治療として,1994年に薬事承認されている.1990年9月から92年3月に行われた食道表在癌に対する治験では,登録され治療された10例中9例(90%)で完全奏効(CR:complete response)が得られ,その有効性が認められて1994年承認,96年保険適応となっている 1.薬剤添付文書に記載されているPDTの適応は,1/3から1/2周程度で2×2cm以内の内視鏡的に一視野でとらえられる範囲内にあり,かつEMRが不可能な粘膜下層までの食道表在癌とされている.しかしながら,食道癌を含めた消化管の早期癌におけるEMRは,内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD:endoscopic submucosal dissection)の導入とその急速な普及により適応が拡大されている.前述のPDTの適応とされる病変の大きさは,ESDで治療すると技術的には確実に一括切除できる.ESDで一括切除するとその後,切除標本の詳細な評価が可能になり,粘膜下層浸潤や脈管侵襲の有無が病理学的に診断できる.また,食道癌は粘膜下層に浸潤すると周囲リンパ節転移を念頭に置いた治療が必要になり,リンパ節郭清を伴った外科手術やCRTが行われている.また,フォトフリンは,投与後,皮膚や角膜にも集積し,長期間停滞するため,患者は1カ月半から2カ月遮光が必要になる.患者は,帽子,マスク,長袖長ズボンなど皮膚の露出を避けた服装とサングラスを着用し,明るさを制限した部屋で過ごす必要があり,QOLが低下するため,高齢者などではせん妄を引き起こすことがある.また,エキシマダイレーザーの機器が数千万円と高額であり,設置できる施設が少なかった.ESDの普及台頭やPDTの不便性を理由に,食道がんに対するPDTは普及せず,ガイドラインなどにも掲載されていなかった.

一方,欧米ではPDTは狭窄を伴う進行食道癌患者の症状緩和目的の治療として承認されている.Litleらは症状のある進行再発食道癌215例に対する症状緩和目的のPDTで,約85%の症例で嚥下障害が改善し,嚥下障害のない期間の中央値が約2カ月得られ,PDTからの生存期間中央値は4.8カ月と報告している 2.合併症としては,穿孔2.3%,日光過敏症6%,誤嚥性肺炎1.8%認めた.進行食道癌に対するPDTは,穿孔のリスクがあるが,症状緩和効果が期待できるパワフルな局所治療として認識され,欧米ではガイドラインにも取り上げられていた.

Ⅲ 2.サルベージ治療としてのPDT

食道がんに対するCRTは,臓器温存が可能な内科的治療ではあるが,食道局所の遺残再発割合が高く,以前から問題になっていた.遺残再発を来した患者の予後は極めて不良であり,食道内局所制御の悪さがCRTの治療成績自体を押し下げる大きな要因と考えられていた.局所遺残再発割合が高い一方で,放射線照射野内のリンパ節再発の頻度は低く,食道内局所が制御できれば食道癌に対する治療成績が向上する可能性が期待できた.われわれは,CRT後局所遺残再発病変に対する,より強力な内視鏡的なサルベージ治療の開発を目指して,2002年12月からPDTを導入した 3.PDTの有効性と安全性を評価する目的で単施設第Ⅱ相試験を行った 4.対象は,50Gy以上の根治的CRT後で,リンパ節や遠隔転移がなく,深達度T1b,生検で癌陽性の遺残再発病変を有する症例を対象に,25例登録し,19例でCRが得られCR割合は76%(95%信頼区間,55-91%)であった.主な合併症は,日光過敏症を8例(32%)で認め,重篤な合併症として照射部位からと思われる消化管出血によりPDTから33日目に1例死亡しており,治療関連死亡率は4%(1/25)であった.PDT施行からの観察期間中央値48カ月で,3年全生存割合は38%(95%信頼区間,17%-60%)であった.以上の結果より,PDTはCRT後遺残再発例に対するサルベージ治療として有効かつ合併症は認容可能と考えられた.その後症例を重ね,113例での治療成績を遡及的に解析し報告した 5.113例中66例でCRが得られており,CR割合は58.4%(95%信頼区間:49.3%-67.5%)で,PDT施行してから5年無増悪生存割合は22.1%(95%信頼区間:14.3%-30.0%)5年全生存割合は35.9%(95%信頼区間:26.7%-45.1%)であった.予後因子の解析では,CRT前N0症例,CRT前T1-2症例,CRTからPDTまでの期間は6カ月以上間隔が開いている症例が予後良好であった.有害事象については,5例(4.4%)で穿孔を来しており,うち2例は大動脈穿破が原因と思われる出血死をしており,治療関連死亡割合は1.8%であった.

Ⅳ 3.レザフィリンPDTの適応拡大

フォトフリンPDTの問題点として,遮光期間が6週間と長期であることと日光過敏症の頻度が40%と高頻度であることがあげられ,患者のQOLを損ねるため,PDT普及の大きな障壁となっていた.レザフィリンは,新しい腫瘍親和性光感受性物質で,フォトフリンと比較するとクリアランスが早く,遮光期間が2週間と短く,日光過敏症の頻度も10%未満である.使用するレーザーは,PDT半導体レーザー(PDレーザ®,Meiji Seikaファルマ)でエキシマダイレーザーと比較すると小型軽量化しており,価格も安価になっている.レザフィリンとPDレーザを用いた新しいPDTは,早期肺癌に対しては,完全奏効割合84.6%とフォトフリンPDTと遜色ない治療効果が得られており 6,2003年に早期肺癌のみを適応として承認されている.われわれはこの新しいレザフィリンを用いたPDTを食道癌に適応拡大したいと考え,まずはPDTの食道での組織障害の程度を評価する目的で動物実験を行い,報告した 7.実験は,食道におけるレーザー照射量と組織障害の関係を明らかにすることを主目的にビーグル犬で行った.20mg/kgのレザフィリンを投与して60分後にPDレーザを1カ所に照射した.全9頭を3頭ずつ3群に分け,最初の1群に対しては,25J/cm2照射し,2群3群では,50J/cm2,100J/cm2と増量していった.1週間後に摘出した食道の組織障害を比較すると,照射量が増える毎に,照射後の潰瘍の面積は増大し,影響は深く及ぶようになり,100J/cm2では壁外の臓器にまで炎症反応や壊死が及んでいることが確認できた 7.この結果を受け,ヒトでも最適な照射量を明らかにするため,少ない照射量から慎重に安全性を確認しながら増量していく第Ⅰ相試験が必要であると考えられた.第Ⅰ相試験では,レザフィリン投与量は肺癌で承認されている40mg/m2に固定し,レーザーの照射エネルギー密度をレベル1(50J/cm2),レベル2(75J/cm2),レベル3(100J/cm2)漸次増量し検討した.試験の主要評価項目は,各レベルでの容量制限毒性(Dose-limiting toxicity:DLT)で,DLTとしては,4日以上持続するモルヒネを要する疼痛と39℃以上の発熱,外科的処置または中心静脈栄養を要する食道瘻・狭窄,輸血・IVR・外科的処置を要する食道出血とした.各レベル3例ずつ登録され,いずれのレベルにおいてもDLTを認めなかった.2週間の遮光期間であったが日光過敏症は1例も認めず,それ以外の有害事象もいずれも軽微でgrade2以上の有害事象は認めなかった.また,9例中5例が完全奏効となり,CR割合は56%であった.この第Ⅰ相試験の結果,推奨レーザー照射エネルギー密度は,肺癌と同じ100J/cm2になった 8

Ⅴ 4.食道癌に対するレザフィリンPDTの医師主導治験

レザフィリンPDTは,食道癌CRT後の遺残再発例に対するサルベージ治療として有望と考え,適応拡大を目指して全国7施設で医師主導治験を行った.治験の主要評価項目は原発巣のCR割合で,目標症例数は25例とした.主な選択基準は,1)食道癌に対して50Gy以上の放射線照射が行われている,2)組織学的に癌が証明された遺残再発病変を認め,サルベージ手術を希望しないか不可能,3)サルベージEMR/ESDが不可能,4)遺残再発病変が2カ所以内,深達度T2以下,長径3cm以下,周在性半周以下であることとした.また,前述のフォトフリンPDT後の食道大動脈瘻によると考えられる消化管出血の経験から,CRT前に腫瘍が大動脈浸潤していたとCTで判断された症例や,安定したレーザー照射が困難で喉頭への誤照射が懸念される頸部食道浸潤症例は除外した.2012年9月に治験届けを提出した後に,同年11月に1例目が登録をされ,順調に集積し,2013年12月に登録終了,2014年5月に治験終了した.治験では,26例中23例で完全奏効が得られ,CR割合88.5%(95%信頼区間:69.8%-97.6%)と極めて良好な治療成績が得られた.また,本治験でも遮光期間は2週間だったが,日光過敏症は1例も認めなかった.その他にも,重篤な合併症を認めず,安全性は極めて高かった 9.企業は,医師主導治験の良好な成績を受けて,適応追加申請を行い,レザフィリンとPDレーザを用いたPDTは,化学放射線療法後または放射線療法後の局所遺残再発食道癌に対して2015年5月に承認を取得し,同年10月に保険適用が得られ,保険診療として行えるようになった.

Ⅵ 5.実臨床におけるレザフィリンPDTの適応

現在,保険適用上の適応は,CRT後またはRT後の局所遺残再発例に限られる.実際に,局所再発病変を診断した際の治療選択の流れについて,Figure 1に示した.まずは,CTなどでリンパ節や他臓器に転移がなく局所のみの遺残再発であることを確認する.レザフィリンの薬剤添付文書に記載されている禁忌は,1)レザフィリン過敏症,2)ポルフィリン症,3)CRT前またはRT前の原発巣が大動脈浸潤していたこととされている.特に,大動脈浸潤症例については,前述のようにフォトフリンPDTを行った症例での食道大動脈穿破が疑われる突然死の経験から医師主導治験では除外基準に設定したため,禁忌とされた.禁忌がないことを確認したのちに,まずは最も低侵襲な治療であるEMR/ESDの適応を判断する.深達度T1aと判断され,放射線による潰瘍が消失していれば技術的にはEMR/ESDは可能であるので,EMR/ESDを優先して行う.ただ,放射線治療による粘膜下層の線維化が高度で切開剥離に難渋する症例もあるので,術者自身の技量も勘案してその適応は慎重に判断すべきである.外科手術は,侵襲の大きな治療ではあるが,最も確実性が高く根治切除が出来れば長期生存が得られる可能性がある治療であるので,患者には治療方法として提示すべきである.手術適応については,外科とのカンファレンスで十分に検討し,耐術能があり手術適応があると判断された場合には,外科医から患者に対して手術の説明をしてもらう.そのうえで,患者が手術を拒否した場合にはPDTを考慮する.具体的なPDTの適応については,医師主導治験での適格基準を外挿して,以下の基準で判断している:1)遺残再発病変の壁深達度がT2に留まる,2)長径3cm以下,3)半周以下,4)頸部食道に浸潤していない.遺残再発病変の壁深達度は,特に放射線直後の遺残例で診断が難しいが,超音波内視鏡やCTを併用して慎重に診断している(Figure 2).頸部食道病変については,レーザー照射中の安定したスコープ保持が難しい症例も多く,照射中に内視鏡が抜けてしまい喉頭を誤照射するリスクがあること,生理的狭窄部であるため病変を正面視して的確に照射することが難しいことから,PDTを推奨していない.

Figure 1 

放射線療法後または化学放射線療法後遺残再発食道がんに対する光線力学療法(PDT)適応を判断する流れ.

Figure 2 

化学放射線療法後再発食道がん.

a:胸部中部食道前壁側に2こぶ状の粘膜下腫瘍様再発病変を認める.

b:超音波内視鏡では,第2-3層を中心とした3mm大の腫瘍エコーを認め,粘膜下層を主体とした再発病変で,光線力学療法(PDT)の適応と判断した.

c:a,bとは別の症例で,胸部中部食道左後壁を主座とした潰瘍性の再発病変を認める.

d:超音波内視鏡では,第2-3層を主体とした広範な腫瘍エコーを認め,最深部では,第4層深くまで浸潤し,外膜に及ぶ.CTでリンパ節転移が指摘されたこともあり,サルベージ外科手術を施行.病理学的にもT3の病変だった.

Ⅶ 6.PDT治療の準備

レザフィリンを用いたPDTは,レザフィリン40mg/m2静脈投与してから4-6時間後に遺残再発病変部に内視鏡で観察しながらPDレーザーを照射する.レザフィリンは,クリアランスが早く治療に最適な時間が短いので,レーザ照射時に機器の故障に気付いても,最適な治療時間を逃してしまうので出来るだけ治療の前日に動作確認を行う.また,レザフィリン静脈注射は,レーザー照射時間から逆算して4時間前に行っている.

治療当日,内視鏡観察し,下記の状況であればPDT中止を考慮する:1)PDT施行前の内視鏡評価時に比べて対象病変が急速に増大しており,適応範囲を超えていると判断された場合,2)適切なレーザー照射が不可能と判断された場合(思っていたより食道入口部に近いなど).レーザー照射は,電子内視鏡を用いて行っているが,面順次式の内視鏡を用いると,レーザー照射中には画面が白飛びして観察が出来ないので,原色フィルターを用いた面同時式等の画面の白飛びを避ける機能が供えられた内視鏡を使用する必要がある.当院では富士フイルム社製のLESAREOシステムとEG-L590ZWを用いて照射している.レーザーを導光するプローブは,直径1.5mmと細く,極細径内視鏡の鉗子孔も問題なく通過するので,病変より口側に狭窄があってアプローチが難しい場合や狭窄がある病変では極細径内視鏡(当院では,EG-L580NW)を用いて照射している.また,レーザーは,出力端から発振される光を正面視すると網膜に重篤な障害を来すので,治療部屋はレーザー管理区域として,治療中は入室を制限し,患者,術者,介助者は専用の保護メガネ(Figure 3)を必ず装着する必要がある.

Figure 3 

専用の保護メガネ.

Ⅷ 7.レーザー照射の実際(Figure 4
Figure 4 

PDTの治療経過.

a:下部食道に粘膜下腫瘍様の化学放射線療法後再発病変を認める.

b:超音波内視鏡では,筋層に及ぶ再発病変だが,最外層は保たれており光線力学療法(PDT)の適応病変と判断した.

c:病変の肛門側から,「五輪のマーク」を描くようにレーザーを照射する.

d:病変を12時方向に持ってきて正面視し,プローブ先端が病変に接触しないように注意しながら至近距離から照射する.

e:レーザー照射翌日の内視鏡写真,照射部分に虚血性変化を認める.

f:レーザー照射1週間後の内視鏡写真,照射部分は白苔に覆われた潰瘍になっている.

PDT後,その後の経過.

g:PDTから1カ月後,潰瘍は全体的に治癒傾向で,潰瘍底にきれいな再生上皮を認める.

h:PDTから2カ月後,潰瘍底はきれいになり,わずかなびらんを認めるのみ.

i:PDTから3カ月後,PDT治療部位は瘢痕化し,生検でもがんは認めず完全奏効(CR)と判定できる.治療部位には狭窄を認め,食事の通過障害も出現したためバルーン拡張を施行した.

j:PDTから5カ月後,バルーン拡張は1回行っただけで,拡がり食事の通過障害も改善した.治療部位はCRを維持している.

レーザー照射手技で最も重要なポイントは,病変を正面視してまっすぐレーザー照射を行うことである.具体的には,病変を正面視し確実な照射を行うため,またプローブが粘液や血液で汚れないようにするために内視鏡先端への先端フード装着している.また病変を出来るだけ内視鏡画面の12時方向に持ってきて,先端フードの上端を固定する形で安定させ,なるべく距離を一定に保って照射するように説明している.照射中に病変の範囲が不明瞭になることがあるので,照射前に病変周囲にアルゴンプラズマコアグレーション(APC)などでマーキングしている.照射は,病変の肛門側から始め,口側に移動させていく.照射は,照射パワー150mW,1カ所あたり100J/cm2で行い,照射時間は11分7秒になる.また,照射中に蠕動や体動などで,病変を正面視できなくなった場合にはレーザー照射を一時中断し,正面視が出来るタイミングになったら,照射を再開している.レーザーの辺縁ではパワーが落ちるので,照射円の辺縁を重ねて「五輪のマーク」をイメージして病変全体に漏れなく照射することが重要である.また,照射中にプローブ先端に粘液や血液が付着した場合には,介助者にはプローブ先端をアルコール綿で丁寧に拭き取ってもらっている(Figure 5).プローブ先端が汚れたまま照射を行うと,実際に患部にあたってる照射量が少なくなるだけではなく,プローブの破損に繋がる.また,レーザーのパワーが落ちていることは内視鏡画面上でも確認できるのでその都度プローブ先端をきれいにし,パワーチェックを行いレーザーの出力が低下していないかを確認する.遺残再発食道癌に対するレザフィリンPDTでは,2日目の照射を許容している.理由は,われわれがフォトフリンPDTで一貫して2日間照射法を行ってきたため,それを踏襲していることと,万が一照射漏れがあった場合には根治のチャンスを逃すことになるためである.翌日照射は,レザフィリン静脈投与後22-32時間後に行うことにしている.翌日の内視鏡観察で,初日治療時の照射漏れによる残存病変の有無を確認する.追加照射を行うべき照射漏れの判断基準は,(Figure 6):1)粘膜下腫瘍様隆起成分の残存,2)腫瘍性粘膜,潰瘍の残存,3)発赤または暗青色の色調変化を伴う浮腫上粘膜の欠落と考えている.

Figure 5 

プローブ先端をアルコール綿できれいにする手技.

Figure 6 

光線力学療法(PDT)直後照射漏れの内視鏡所見.

a:PDT直前の内視鏡写真.

b:PDT翌日の内視鏡写真,矢印部分には暗青色変化の乏しい粘膜下隆起を認め,照射漏れと判断し翌日の追加照射を行った.

Ⅸ 8.遮光管理を含めた患者管理

レーザー照射後は,食道痛や嚥下障害などの症状が現れることがあり,適切な対応を行うことが重要である.レーザー照射翌日には内視鏡検査を行い,前述の照射漏れの所見があれば追加照射を行う.追加照射を行った場合は,さらに翌日も内視鏡検査を行い,照射部位の観察を行う.照射後の食道痛が認められた場合は,NSAIDSなどの一般的な鎮痛薬を処方し対応する.通常は,照射初日から,最終照射日の翌日までは絶食点滴管理を行い,水分のみ許可している.翌々日から食事を再開しているが,鎮痛薬でコントロール出来ないような疼痛がある場合には,食事の開始を遅らせている.強い食道痛は,食道壁全層性の炎症が起こっていて,周囲組織に炎症が波及している恐れがあるので,食事摂取を行うと,感染,膿瘍形成を引き起こす可能性がある.膿瘍を形成すると,食道穿孔を来すリスクになり得るので,慎重に対応する必要がある.通常は照射から1週間目に内視鏡検査を行い,出血,穿孔,深掘潰瘍の有無を確認する.経過観察中に,痛みが強くなったり,PDT後の深掘潰瘍が出現した場合には,入院し絶食・点滴で管理する必要がある.また,PDT後の合併症として食道狭窄が懸念され,狭窄してしまった場合や狭窄が懸念されるような広範な照射になった場合には食道拡張術を実施するように伝えているが,深掘潰瘍がある場合や食道痛がある場合には食道拡張術を行わないで,入院して絶食管理を行う.

PDTに特徴的な患者管理は,遮光管理であり,導入するにあたっては医師のみならず院内での周知徹底をする必要がある.レザフィリンは,光線過敏症を引き起こす可能性があるため,患者は投与後2週間の遮光が必要である.遮光管理としては,PDTを施設に導入する前に,病室から治療室までの導線やトイレなどの照度は,予め確認し,患者が直射日光などの強い光を浴びることがないことを確認しておく.レザフィリン投与後は,直射日光を避けさせ,照度500ルクス以下に調整した室内で過ごしてもらう.また,院内での移動中は帽子や手袋などでなるべく皮膚の露出を控えるようにし,投与後3日間はサングラスをかけてもらっている.また,レザフィリン投与後1週間で光線過敏性試験を実施している.具体的な方法は,手の甲に2-3cm大の穴を開けた日光暴露用の手袋を用意し,手袋をはめた状態で手だけを直射日光に5分間曝露する.手の甲の穴を開けた部分に,紅斑や水疱などの過敏反応が出ないことが確認できたら退院するように指導している.医師主導治験では,全例レザフィリン投与後1週間毎に光線過敏性試験を実施したところ,1週間で約70%,2週間で全例が光線過敏反応を示さなくなっていた.

Ⅹ 9.PDT後の効果判定と経過観察

PDTの入院期間は,1-2週間程度あり,その後は外来で経過観察を行う.退院後2-3週間毎に内視鏡で患部を確認する.観察では,入院加療が必要な深掘潰瘍の有無や腫瘍遺残の有無の確認である.腫瘍遺残を疑う所見(Figure 7)としては,1)不整な潰瘍底,2)易出血性粘膜,3)粘膜下腫瘍様隆起などである.PDTから2カ月-3カ月後くらいで,病変部がきれいな瘢痕になり,生検で癌細胞を認めなければ完全奏効(CR)と判定できる.CR判定出来たら1カ月後を目途に内視鏡検査と生検を再度行い,画像上再発の所見がなく生検で癌細胞を認めないことを再確認し,CRを確定している.その後は,3カ月毎に内視鏡とCTで経過観察を行う.フォトフリンを用いたPDTの長期成績では,PDTでCRが得られた症例のうち,16%(11/66)が局所,21%(14/66)がリンパ節,9%(6/66)が遠隔臓器転移を来しているので,早期癌に対する内視鏡治療とは違ってCTを含めた全身的な経過観察が重要である5

Figure 7 

光線力学療法(PDT)後遺残の内視鏡所見.

a:胸部上部食道左壁にPDT後の潰瘍を認める.潰瘍肛門側に凹凸不整な粘膜下腫瘍様隆起を認め,遺残を疑う所見.矢印の部分からの生検で扁平上皮癌を認めた.

b:胸部下部食道にPDT後の潰瘍を認める.潰瘍底は,易出血性で凹凸不整があり,汚い白苔に覆われており遺残を疑う.矢印の部分からの生検で扁平上皮癌を認めた.

Ⅺ 10.終わりに

CRT後またはRT後遺残再発食道癌に対するレザフィリンPDTは,医師主導治験で得られた高い安全性と有効性によって承認された.承認後,保険診療として普及した際に,良好な治療効果を再現するために,日本光線力学学会では,医師主導治験参加施設治験責任医師を中心に局所遺残再発食道癌ワーキンググループが結成された.ワーキンググループでは,日本レーザー医学会安全教育委員会と連携して,レーザーの基礎的な部分やレーザー治療を行う上での注意点も含めてテキストを作成した.そのテキストを用いて,年2回講習会を行っている.現在,再発食道癌に対するレザフィリンPDTはこの講習会を受講した日本消化器内視鏡学会専門医またはそれに準ずる能力を有する医師しか実施できない.導入にあたっては,実際に実施している施設を見学することをお勧めしている.そのうえで,講習会を受講し,施設内の教育や環境整備を整えてから導入する必要がある.本稿をきっかけにより多く内視鏡医がPDTに興味を持って頂けたら,われわれにとっては望外の喜びであるし,食道がん患者にとっても福音をもたらすだろう.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

文 献
 
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