日本消化器内視鏡学会雑誌
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内視鏡室の紹介
松山市民病院
責任者:田中良憲  〒790-0067 愛媛県松山市大手町2丁目6-5
田中 良憲
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2017 年 59 巻 2 号 p. 241-243

詳細

概要

沿革・特徴など

一般財団法人永頼(えいらい)会松山市民病院は1956年(昭和31年)6月1日,松山市城西地区の医療機関として発足した.当初内科・外科の20床の病院だったが,昭和36年には135床となり,産婦人科も新設.昭和39年には救急病院の指定をうけ,その後眼科・耳鼻咽喉科なども新設され昭和41年には総合病院の指定を受けた.現在では各科増設され昨年の病棟改築を経て,医師数99人,432床となり,救急病院,厚生労働省臨床研修指定病院,愛媛県がん診療連携推進病院などの指定を受けている.

昨年改築された新病棟は,免震構造を備えた地上7階建である.各階で既存の病棟ともつながり,各病棟間の移動に苦労しない.また新病棟に合わせて電子カルテシステムも遅ればせながら導入された.この新病棟2階に内視鏡超音波センターも移り,現在検査を行っている.

当院の理念である「松山市民病院は,①地域住民のために存在する.②高度急性期医療を目指す.③思いやりの医療をもって地域社会に貢献する.」ことを目指して地域のニーズにこたえる誠実な医療を目指している.

立地は松山市中心部で松山城の西側に位置しJR松山駅から徒歩5分以内と交通の便も良い.

組織

当院では内視鏡超音波センターとして独立して運営されている.診療は消化器内科医を中心に消化器外科・気管支鏡を担当する呼吸器内科・外科の医師が担当している.看護師は特殊検査部門として独立しており,内視鏡・超音波・放射線処置を担当している.内視鏡技師は7名である.

検査室レイアウト

 

 

 

当内視鏡室の特徴

内視鏡超音波センターは昨年改築された新棟2階内科外来部門の隣に位置している.このため外来中でも緊急時にはすぐに駆けつけることが可能である.内視鏡は上部を行う2室・下部を行う2室・ERCPなどを行う透視室の計5室で行われている.各検査室には複数の内視鏡モニターを配置し,施行医だけでなく周りのスタッフにも見やすいように配置している.また内視鏡施行中の画像は,所見を作成する記録室でも大型モニターで映し出しており,記録室でLive映像をみながら意見の交換なども行っている.この大型モニターは電子カルテの供覧にも使用しており,カンファレンス時にも使用している.また疑問を即座に解決できるよう,記録室にインターネットを導入し文献検索に活用している.またこの記録室で腹部エコーの所見も作成するためエコーを行った後内視鏡を施行することも可能で,スタッフが少ない状況でも柔軟な対応が可能となっている.

検査後の説明室が記録室の隣に3室あり,必要な場合は検査後施行医から遅滞なく結果説明できるようにしている.

設備の主体としてはオリンパス社とのVPP契約で装備しており,適宜機器の更新を行っている.CO2送気も導入し,長時間の内視鏡症例・穿孔の可能性のある症例などでは積極的に使用している.カプセル内視鏡も平成22年から導入している.

昨年の改築で内視鏡洗浄室までのスタッフの動線が患者動線と交わらないようにした.またリカバリー室も今回新設し,希望患者には積極的に鎮静下での内視鏡を行えるようにした.また下部消化管内視鏡施行の前処置室はトイレを6台設置.電動リクライニングができる椅子なども配置し患者がリラックスできるようにしている.

スタッフ

(2016年7月現在)

医   師:指導医2名,専門医2名,その他スタッフ4名

内視鏡技師:Ⅰ種7名

看 護 師:常勤8名,非常勤5名

事 務 職:2名

設備・備品

(2016年7月現在)

 

 

実績

(2015年1月〜2015年12月まで)

 

 

指導体制,指導方針

初期研修医が毎年10名前後入りほとんどの研修医が消化器内科を2カ月以上ローテートする.初期研修医は指導医のもとで消化器各疾患の診療を行う.手技としては腹部超音波・上部消化管内視鏡を中心にトレーニングを行っている.これらの手技は上級医の監督のもと行っている.ERCP/下部消化管内視鏡検査や内視鏡治療は主に後期研修医になってから行っており,各手技が行えるよう経験を積んでもらっている.後期研修医が終了する時点ではERCPでは主施行医として結石除去,ステント挿入・交換ができるレベルを,上部消化管内視鏡はESDを上級医の助けを借りながら行えるレベルを,下部消化管内視鏡も処置が完遂できるレベルを目標にしている.救急病院の指定を受けていることもあり緊急処置も比較的多く,後期研修医には上級医の指導のもと積極的に処置を行ってもらっている.

毎朝消化器内科のカンファレンスを行い,新入院・処置症例を検討しているが,初期研修医には症例提示をしてもらっている.毎週月曜日の夜,消化器内科入院患者全例の症例検討を行い治療方針などを決めている.そのほかに週一回の外科医・放射線科医とカンファレンスを行っており,多方面からの知識の習得・理解につとめている.またいろいろな検査・処置後の問題点・反省点など,適宜フィードバックし医局員全員で問題点を共有するように努め,処置をこなすだけにならないようにしている.

学会や研究会へ積極的に参加し,特に初期研修医・後期研修医には地方会での発表により学術的な知識の向上にも努めるよう促している.

現状の問題点と今後

当院消化器内科は救急外来からの内視鏡的処置も多く,医師・看護師の負担が大きい状態である.時間内に業務が終わらないことも多々あり,コメディカルも含めた人材確保・育成が必要と考える.最近救急車の収容台数も増加傾向(3,300台/年)にあり今後も内視鏡的処置件数が増加すると考えられ,これらに対応できる体制を作る必要があると考える.当院ではEUS関連手技に習熟した上級医が不在のため,EUS-FNAなどの処置は愛媛大学第3内科のスタッフの支援を受けている.今後この分野の処置は増加すると予想されており,手技の習得・向上,人材の確保が急務である.

内視鏡技術向上のため,消化管内視鏡検査などのシミュレーターを積極的に導入したいと考えている.また今後当院からの臨床研究も行えるような体制をつくり,スタッフの知識の向上にも努めたい.

これらのことを進めていき,スタッフ全員がやりがいを感じ,仕事に誇りを持つことができるような体制を構築していきたい.

 
© 2017 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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