日本消化器内視鏡学会雑誌
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59 巻, 2 号
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総説
  • 向井 俊太郎, 糸井 隆夫
    2017 年 59 巻 2 号 p. 155-170
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/20
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    膵炎後の局所合併症(主にwalled-off necrosis)に対して,感染例や有症状例は侵襲的治療が必要となる.近年,こうした局所合併症に対するEUSガイド下ドレナージと内視鏡的ネクロセクトミーによる低侵襲な経消化管的治療が開発され,普及してきている.さらに,専用の大口径メタルステントを用いた治療や追加内視鏡ドレナージテクニックにより,多くは内視鏡治療単独で治癒可能となってきた.しかし手技に伴う重篤な偶発症も報告されており,内視鏡治療に固執することなく,経皮的アプローチや外科手術も考慮した広い視野での治療戦略が必要である.本稿では,膵炎後局所合併症に対する内視鏡治療の現状について概説する.

症例
  • 渡邊 里奈, 川口 章吾, 吉村 徹郎, 浅利 享, 澤田 洋平, 荒木 康光, 菊池 公二, 和田 豊人, 楠美 智巳, 福田 眞作
    2017 年 59 巻 2 号 p. 171-176
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/20
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    症例は64歳,女性.10年前に甲状腺原発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(以下DLBCL)に対し甲状腺切除術と化学放射線療法が施行されていた.食後の心窩部痛を主訴に当院を受診し,上下部内視鏡検査,カプセル内視鏡検査にて十二指腸,小腸,結腸に多発する不整な潰瘍性病変を認めた.生検組織像は異型リンパ球がびまん性に増殖し,多彩な炎症細胞浸潤を伴っていた.経過中右口蓋扁桃にも不整な潰瘍性病変が出現し,生検組織は類似の像であり,Epstein-Barrウイルス(以下EBV)が陽性であった.以上よりEBV陽性DLBCLと診断した.甲状腺原発DLBCL治療後の免疫不全状態を背景としてEBV再活性化を伴い消化管DLBCLを発症したものと考えられた.

  • 乗田 一明, 八田 和久, 小池 智幸, 近藤 穣, 荒 誠之, 淺沼 清孝, 浅野 直喜, 笠島 敦子, 笹野 公伸, 下瀬川 徹
    2017 年 59 巻 2 号 p. 177-183
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/20
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    症例は41歳男性.上部消化管内視鏡検査にて胃体下部大彎後壁に径2.5cmで中心に深い発赤陥凹を伴う粘膜下腫瘍様隆起を認めた.NBI拡大内視鏡では辺縁隆起部の拡張血管と陥凹部に粗大な絨毛様構造を認め,内部には口径不同を伴わない細血管が観察された.同部位の生検にてNeuroendocrine tumor(NET)の診断を得た.術前の内視鏡観察にて,血管拡張など他腫瘍との鑑別に有用な内視鏡所見が得られ,CTでは腫瘤近傍に径6.9cmのリンパ節腫大が認められた.背景疾患を伴わないことからRindi 分類Type 3胃NETと病理組織学的に診断した.幽門側胃切除術を施行し,NET(G2),pT3N1M0,pStageⅢb(ENETS)であった.手術後24カ月現在,再発を認めていない.

  • 石郷岡 晋也, 佐藤 望, 小澤 俊一郎, 松尾 康正, 佐藤 義典, 片山 真史, 奥瀬 千晃, 朝倉 武士, 安田 宏, 伊東 文生
    2017 年 59 巻 2 号 p. 184-189
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/20
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    症例は78歳,男性.大腸憩室出血による出血性ショックにて救急搬送された.腹部造影CTでは脾彎曲からの出血が疑われ緊急内視鏡を施行したが,大量の血液で視野を得ることができず内視鏡止血が困難であった.自然止血したため保存的加療となっていたが,入院後再出血をきたした.血圧が保てず緊急手術となった.術中内視鏡を併用し出血源を同定後,内視鏡視認下で漿膜側から責任憩室のみを全層縫合し,腸管切除を回避することが可能であった.これまで同様の報告例はなく,低侵襲かつ確実性の高い方法と考えられたため報告する.

  • 一ノ名 巧, 淺井 哲, 加納 由貴, 竹下 宏太郎, 中尾 栄祐, 赤峰 瑛介, 藤本 直己, 小川 淳宏
    2017 年 59 巻 2 号 p. 190-195
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/20
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    症例は73歳男性.右腹部違和感を主訴に来院され,大腸内視鏡検査(CS)を施行したところ,上行結腸に側方発育型腫瘍(LST)を認めたため,内視鏡的粘膜切除術(EMR)を行った.EMR翌日に,腹痛と発熱を認めたため当院受診された.来院時,血液検査にて炎症反応上昇を認め,腹部単純CTでは上行結腸に重積を認めた.緊急入院とし,診断的治療目的にてCSを施行すると上行結腸に浮腫状粘膜を認めていたが,重積は解除されていた.本症例ではEMR施行時の局注やクリップによる影響に加えて上行結腸の固定が悪く,移動盲腸であったことなどから腸重積をきたしたと考える.EMR後の腸重積は稀であり.若干の文献的考察も踏まえ報告する.

  • 吹田 洋將, 石橋 啓如, 浅木 努史, 足立 清太郎, 豊水 道史, 武田 武文, 安田 伊久磨, 末松 直美
    2017 年 59 巻 2 号 p. 196-202
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/20
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    症例は55歳,男性.主訴は下腹部痛,血便.初診時の腹部造影CT検査にて門脈右枝の造影欠損と下行結腸の浮腫性の壁肥厚とを認め,急性門脈血栓症を併発した大腸炎が疑われた.大腸内視鏡検査では下行結腸に全周性の粘膜浮腫・出血を認めた.臨床症状や内視鏡所見より虚血性大腸炎と診断した.第13病日の大腸内視鏡検査では虚血性大腸炎の所見は著明に改善していた.急性門脈血栓症に対しては抗凝固療法を開始し,退院2カ月後のCT検査で血栓の消失が確認された.急性門脈血栓症を併発した虚血性大腸炎の症例は稀であり今回報告した.

注目の画像
新しい手技・処置具・機器
手技の解説
  • 熊谷 洋一, 川田 研郎, 田久保 海誉, 石田 秀行
    2017 年 59 巻 2 号 p. 207-218
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/20
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    電子付録

    Endocytoscopy system(ECS)は2003年に細胞レベルまで拡大可能な超拡大内視鏡として試作機1号が開発された.現在の第4世代ECSはHi-vision画像で連続して500倍までの拡大が可能となり,市販可能なレベルに到達している.

    食道におけるECS観察を効率的に運用するためにType分類を提案した.Type1:核密度が低く観察される扁平上皮細胞はN/C比が低く核異型のないもの.Type2:核密度は高く,細胞間の境界が不明瞭になっているが核異型が弱い.Type3:核密度が高く核異型が観察される.Type3を悪性とすると内視鏡医の診断は感度93.6%,特異度94.0%であり,病理医の判定は感度93.6%,特異度98.8%であった.

    食道に対するECS診断はOptical biopsyを実現し生検診断省略を可能にする.しかし,あくまで表面から見た病理診断であり限界も熟知する必要がある.

  • 川村 昌司, 菊地 達也, 境 吉孝
    2017 年 59 巻 2 号 p. 219-225
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/20
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    早期胃癌に対するESD治療において,適正な近接視野を確保することは,出血・穿孔などの偶発症予防のために重要である.近接困難部位である胃体下部〜胃角小彎病変に対するESD治療では,体位変換や適度な脱気操作と先端フード使用による近接視野確保が基本となる.一方,このような体位変換・脱気操作でも近接に難渋する例に対する補助として,マルチベンドスコープや通常内視鏡に装着可能な器具(内視鏡装着偏心型バルーン(エアアシスト))がある.ESD治療では,術前に予想しなかった線維化や・近接困難状況になることがあり,治療前から困難状況に対応できる準備をしておくことが求められる.

資料
  • 野中 敬, 稲森 正彦, 宮下 徹也, 原田 紳介, 稲生 優海, 鹿野島 健二, 松浦 瑞恵, 日暮 琢磨, 大久保 秀則, 飯田 洋, ...
    2017 年 59 巻 2 号 p. 226-233
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/20
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    【目的】従来のベンゾジアゼピン系薬剤を用いた鎮静と比較して,食道ESDにおけるプロポフォール(PF)とデクスメデトミジン(DEX)を併用した鎮静の有効性と安全性について検討する.

    【方法】当施設で食道ESDが施行された連続40症例の臨床情報を遡及的に解析した.20例はベンゾジアゼピン系薬剤による鎮静(従来群),20例はPF・DEX併用による鎮静(併用群)が行われた.鎮静の有効性と安全性に関する各パラメータを両群で比較した.

    【結果】併用群は処置時間が有意に短く(61分 vs 89分,P=0.03),抑制を要する体動が見られた患者の割合も有意に少なかった(25% vs 65%,P=0.025).一方,併用群は低血圧(60% vs 15%,P=0.008)と徐脈(60% vs 15%,P=0.008)の発生率が有意に高かった.治療中断を要する重篤な有害事象は両群ともになかった.

    【結論】PFとDEXを併用した鎮静は食道ESDにおいて患者体動を抑えた安定した鎮静となり得る可能性が示唆された.

内視鏡室の紹介
最新文献紹介
  • 小池 智幸
    2017 年 59 巻 2 号 p. 244
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/20
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    【目的】早期胃癌ESD患者で治癒切除基準を満たさない場合,リンパ節転移の危険性から全例追加外科手術が推奨されているが,全例に追加手術を行うことは過剰医療となる可能性がある.そこで,本研究では,このような患者の長期予後,転移再発危険因子を明らかにすることを目的とした.

    【方法】本研究は国内19施設での多施設共同遡及的研究であり,2000~2011年に早期胃癌ESDを行った15,785症例のうち,治癒切除基準を満たさなかった1,969症例を対象とした.ESD後の治療方針により追加外科手術群(n=1,064),経過観察群(n=905)に分けられた.

    【成績】全生存率(3年:96.7% vs 84.0%),疾患特異的生存率(DSS)(3年:99.4% vs 98.7%)ともに有意差を認めたが(それぞれp<0.001,p=0.012),経過観察群でも3年DSSは非常に高かった.追加外科手術群にて,リンパ節転移は8.4%(89例)に認められた.経過観察群での転移再発独立危険因子はリンパ管侵襲であった(ハザード比:5.23,95% CI:2.01-13.6,p=0.001).

    【結論】両群のDSSには有意差を認めたが,3年DSSは経過観察群でも非常に高かった.治癒切除基準を満たさない早期胃癌ESD患者を層別化して低リスク患者を同定できれば経過観察が許容できるオプションの一つとなる可能性があり,今後は更なるリスクの層別化が必要と思われた.

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