日本消化器内視鏡学会雑誌
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鳥骨異物の大腸穿通により発症した肝膿瘍の1例
鎌田 和明矢内 常人渡辺 守
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2017 年 59 巻 3 号 p. 296-297

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【症例】

症例:80歳 女性.

主訴:腹痛.

現病歴:上腹部痛と37℃台の発熱を認めた.血液検査で炎症反応・肝酵素の上昇があり,腹部造影CTで肝膿瘍を疑い入院した.

既往歴:高血圧症.

内服:バルサルタン アムロジピン トリクロルメチアジド.

生活・社会歴:喫煙歴なし 機会飲酒 海外渡航歴なし.

来院時所見:身長153cm 体重63kg 意識 清明 血圧131/72mmHg 脈拍118/分・整 体温37.8℃ SpO293% 腹部は膨隆・軟 腸蠕動音正常 心窩部と左側腹部に圧痛を認めるが筋性防御や反跳痛はなかった.

血液検査:WBC 12,700/μl CRP 27.25mg/dl AST 49IU/l ALT 60IU/l ALP 218IU/l γGTP 29IU/l T-Bil 0.6mg/dl LDH 169IU/l.

腹部造影CT所見:肝左葉に径3.5cm大の内部に不整な増強効果のある単発の低吸収域腫瘤を認めた.さらに下行結腸内に約4cm大の線状の高吸収域があり,大腸内異物と考えた(Figure 1).free airや腹水はなかった.絶食・補液・抗生物質の投与を施行した.血液培養2セットからは原因となる菌は特定できなかった.病歴聴取により,約3カ月前にフライドチキンを丸呑みしたことが判明した.胆道系感染・腸管感染が生じた経過はなく,海外渡航歴もないことから異物の迷入・穿通によって経門脈的に感染し肝膿瘍が形成されたと考えた.腸管内異物による穿孔は否定的であり,外科と相談し,内視鏡検査を施行した.

Figure 1 

下行結腸内に約4cm大の線状の高吸収域があり,大腸内異物と考えた.

大腸内視鏡検査:肛門縁から約35cmの下行結腸は全周性に粘膜は浮腫状であった.その口側に鳥骨があり,一端が粘膜内に刺入していた(Figure 2).粘膜内に刺入していない異物端からスネアを通して,内視鏡的に除去した.除去後に刺入部を確認すると浅い潰瘍があり,粘膜は浮腫状ではあるが,穿孔を疑う所見はなかった(Figure 3).周囲に憩室など,肝膿瘍を発症しうる器質的異常は認めなかった.鳥骨はCT所見と同様に長径4cm大であった(Figure 4).異物の除去後,症状は徐々に改善し,肝膿瘍も縮小・消失した.

Figure 2 

肛門縁から約35cmの下行結腸に鳥骨があり,一端が粘膜内に刺入していた.

Figure 3 

鳥骨除去後に刺入部を確認すると浅い潰瘍があり,粘膜は浮腫状ではあるが,穿孔を疑う所見はなかった.

Figure 4 

長径4cm大の鳥骨を除去した.

【解説】

本邦の鳥骨による消化管穿孔12例をまとめた太田らの報告 1によると,フライドチキン8例・焼き鳥2例・不明2例とある.虫垂を含め結腸で穿孔した症例は5例あった.食文化が欧米と変化がなくなってきた本邦において鳥骨異物の割合は増加するかもしれない.さて,本症例のような異物により発症する肝膿瘍の多くは,消化管から肝臓へ直接穿通し,発症する事が多く,上部消化管での報告が圧倒的に多い 2)~4.大腸異物が直接穿通し生じた報告は会議録で数例の報告のみであり,本症例のように経門脈的に肝膿瘍が発症した報告は,S状結腸内の爪楊枝が原因で発症した1例のみ 5で,経皮的肝膿瘍ドレナージを施行後に内視鏡的に異物を除去していた.本症例も異物除去をすることで速やかに炎症が収まり,肝膿瘍は縮小した.既報2例ではあるが,大腸異物の経門脈的感染による肝膿瘍は異物を除去し,感染症治療に準じれば膿瘍が軽快する可能性がある.しかし不用意な異物除去は腹膜炎を発症させる可能性もあり,注意しなければならない.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

文 献
 
© 2017 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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