2017 年 59 巻 3 号 p. 369-371
当病院は東海大学医学部付属の3番目の病院として1984年に大磯町に開設された.神奈川県の湘南西部医療圏において相模湾のほぼ中央に位置する中郡に属し,大磯町と二宮町からなる.大磯病院は,中郡における唯一の中核病院である.大磯町の人口は約33,000人で65歳以上の高齢者比率が27%を越え,周辺には高齢者施設も多い.そのため内視鏡検査や治療の対象も,ご高齢の方が極めて多い状況である.当院では,2013年4月に診療部として消化器内視鏡診療センターを開設したことにより,消化器内科と外科を中心に放射線診断科,病理診断科との連携を深め,迅速な診断と治療の強化を図っている.
組織内視鏡室は,中央臨床検査科や放射線技術科など10部門からなる診療協力部の1部門に位置付けられ,消化器内科医師が室長として運営管理している.また,内視鏡室は消化器内視鏡診療センターと連携しており,検査・治療は,消化器内科と外科が中心となり施行している.
検査室レイアウト
当内視鏡室は2007年の病棟増床に伴い2階より1階へ移設されたため,内視鏡室としては極めて狭く,総面積も98.66m2である.そのためワンフロアをエリア区分して使用している.エリア内に検査・治療室(2室),リカバリーを中心にカンファレンス室,更衣室,等がある.2検査室において効率よく上部,下部内視鏡検査および内視鏡治療を行うため,午前は検診等を含む上部内視鏡検査より開始,終了後より下部内視鏡検査を行っている.内視鏡治療は,検査の進捗状況によるが,午後に施行することが多い.また,技師は,X線テレビ室での内視鏡検査・治療にも携わっている.X線テレビ室は同じく1階の廊下を隔てたエリアに位置する.専用内視鏡光源セットを常備しTV室ラージディスプレイによりバイタル表示から内視鏡画像と透視画像が同時に一画面に出力できる.
現在,設備面や人的な制約もあり,大腸内視鏡検査の前処置薬服用は院内では行っていない.そのため,検査当日の午前中(8:30頃)本人へ電話をして前処置薬の服用状況・排便状況や回数と便性状・服用後の水分摂取等・処方薬服用等の指導や確認を行っている.それから,前処置良好な患者を優先し,交通機関,付き添い等の問題も考慮しての予約時間設定を当日指示している.電話対応をすることは,多忙な業務の中では煩雑ではあるが,前処置状況や患者情報が取得でき,検査医・患者双方にとって安心・安楽な検査体制づくりに貢献しているといえる.
検査の介助体制に関しては,1室につき看護師と技師の各1名が担当2名体制で施行している.1患者に対して受付・前処置・検査介助・リカバリーまでの管理等の一連の作業を同一看護師が対応していることで,患者の安心感が増すだけでなく,患者情報は一貫性があり,安全な医療の提供に繋がっている.
医療安全面から,患者名,問診票,検査の依頼内容等に関しては,看護師と技師双方で確認し,さらに,検査直前に,検査医とも確認を行うことで検査を担当する全員の情報共有化を図っている.内視鏡部門システムは,2015年度から充実しており,画像ファイリングだけでなく,電子カルテとリンクし,端末が配置されているすべての部署で即時閲覧することが可能となった.
また,咽頭・食道領域の内視鏡治療に関しては,全身麻酔で行うことも多い.そのため,手術室にも内視鏡器材を常設しており,治療に際しては内視鏡技師が出張し,手術室看護師との連携で介助を施行している.
(2016年9月現在)
医 師:指導医5名,専門医2名,その他スタッフ医師3名
内視鏡技師:Ⅰ種看護師1名,臨床検査技師4名
看 護 師:常勤2名(外来部門シフト制)
事 務 職:2名
(2016年9月現在)
(2015年1月~2015年12月まで)
消化器疾患は,診断治療においてきわめて専門性の高い領域である.そのため指導医によるチーム体制で診断から治療までを一貫し担当できる体制で指導している.また研修内容に偏りが起きないように先ず,上部下部のルーチン検査に始まり,習得後は段階的に,生検,止血処置,ポリペクトミーや食道静脈瘤の内視鏡治療等を指導している.
胆膵系に関しては,ERCPからEST,ENBDが習得できるように指導医とともにマンツーマンでの指導を行っている.
内視鏡的粘膜下層切除術に関しては,通常の止血処置やポリペクトミー等の基本処置の習得後に行っている.治療が比較的容易と判断される病変を対象に①マーキング②全周切開③剥離操作と段階的に指導している.操作が停滞した際には適宜介助して,治療が安全かつ予定時間内に完結することは必須としている.
内視鏡治療においては,医師の技術もさることながら,コメディカルの役割も極めて大きい.医師と協働して,治療手順の確認,デバイス操作法のトレーニング等を行っている.毎週行われる消化器内視鏡センターのカンファレンスには,消化器内科外科,放射線診断科医師の他に超音波検査や各種レントゲン検査を行う診療協力部スタッフも参加し総合的な検討を行っている.
医療安全に関する体制は極めて重要であり,内視鏡検査・治療に関係する全職員の意識向上を図り,インシデント,アクシデントレポート報告からその対応策等についての指導を適宜行っている.
人員の問題から緊急内視鏡検査が必要な夜間緊急症例の受け入れは難しい状況にある.入院患者の夜間緊急内視鏡検査には,医師のみでの検査・治療体制に各病棟看護師の介助で行っている.当院での内視鏡受験者の平均年齢は70歳を越えており,ほとんどが高齢者の方である.患者確認や内服薬確認等にも時間を要し,さらに鎮静剤使用例では検査時の管理に加えて,検査終了後の管理もさらに慎重に行うことが必要である.
内視鏡室スペース不足,トイレや待合施設不足,人的制約等から,大腸前処置も院内服用ができず,患者の要望に応じられないなどの問題もある.
今後も,限られたスペース,人員の中で安全かつ質の高い内視鏡検査・治療を地域住民に提供すべく,医師,コメディカルが研鑽を積み一丸となり,チーム医療を充実させていきたい.