日本消化器内視鏡学会雑誌
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内視鏡室の紹介
関西労災病院
責任者:萩原秀紀  〒660-8511 兵庫県尼崎市稲葉荘3丁目1番69号
山口 真二郎萩原 秀紀
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2017 年 59 巻 4 号 p. 490-493

詳細

概要

沿革・特徴など

当院は,尼崎市の西北部,国立公園六甲山を仰ぐ風光明媚な武庫川沿いに位置し,阪神間における高度急性期医療を提供する642床の中核病院として,勤労者医療と地域医療の推進に積極的に取り組んでいる.特に,当院が所在する尼崎市は,人口46万人余りを有する大都市でありながら市立病院がないことから,市民が当院へ寄せる期待は大きく,「地域に生き,社会の要請に応える病院」として,その存在意義は高く評価されている.

組織

2012年4月より内視鏡センターとして独立しているが,専任スタッフはおらず,消化器内科と消化器外科の医師が内視鏡診療を行っている.看護師は外来部門所属となっている.

検査室レイアウト

 

 

 

当内視鏡センターの特徴

当内視鏡センターは,4部屋の内視鏡ブース・リカバリー室(リカバリーベッド5台)・全検査室の検査がモニターできるカンファレンス室からなり,総面積は235.24m2である.検査後もストレッチャー等に移乗することなく検査ベッドのままリカバリー室までスムーズに移動でき,鎮静を行いやすい環境となっている.また,透視下内視鏡は放射線科内の2室を利用して行っている.

緊急内視鏡検査は,上級医1名・後期研修医1名のオンコール体制で行っており,消化管出血,腸閉塞,胆管炎などの消化器領域の救急疾患に24時間対応している.

当院は「地域がん診療連携拠点病院」であり,消化管・胆膵領域の腫瘍に対しての診断・治療を積極的に行っている.食道・胃・大腸の腫瘍には,拡大内視鏡や超音波内視鏡を用いて診断後,EMR・ESDを積極的に行っており,年々症例数は増加してきている.胆膵系の内視鏡処置においても胆膵系悪性狭窄に対するステント留置やEUS-FNAなど精力的に取り組んでおり,最近ではダブルバルーンを用いた術後腸管に対するERCPにも対応している.また,当院の特徴として,透析患者や心筋梗塞,脳梗塞,重症下肢虚血といった高度の動脈硬化をきたした患者など重篤な併存疾患を有したハイリスク症例が多いが,そのような症例に対しても積極的に内視鏡治療を行っている.

スタッフ

(2016年10月現在)

医    師:指導医5名,専門医5名,他スタッフ2名,レジデント4名

看 護 師:10名(そのうち,内視鏡技師Ⅰ種7名)

内視鏡洗浄員:3名(契約会社よりの派遣)

医療クラーク:1名

受    付:1名(契約会社よりの派遣)

設備・備品

(2016年10月現在)

 

 

実績

(2015年4月~2016年3月まで)

 

 

指導体制,指導方針

当院は臨床研修病院であり,前期臨床研修医は各学年10-12名が研修をしている.当科には常に1-2名の初期研修医が1-2カ月間ローテーションをしており,ペアの上級医が消化器内科医にとって基本である消化管出血・腸閉塞・胆管炎などの緊急症例に対する初期対応に関して指導をしている.また,内視鏡に関しては初期研修医1年目は検査の見学,生検の介助から始めて,止血術,EMR・ESDなど様々な内視鏡処置の見学や介助を担当している.初期研修医2年目は,実際に上部消化管内視鏡の被験者となり体験した後,希望者には指導者のもと鎮静下の患者を中心に上部消化管内視鏡検査を行っている.初期研修の間に30例程度の上部内視鏡検査を経験することが可能である.3年目の後期研修医は,まず上部消化管内視鏡検査を習得することを目標とする.適切な内視鏡操作,正確な生検,所見の記載などを指導医と確認しながら行っていく.ある程度目標が達成できた時点で,下部内視鏡検査を引き抜きから始め,コロンモデルでトレーニングを積みながら実際の挿入を開始する.3年目の後半からは止血術・イレウス管挿入・EVL・EMRを,4年目からは小腸ダブルバルーン内視鏡・EUS・EIS・ERCPを,4年目後半にはブタの切除胃を用いたESDハンズオンセミナーを受講後に胃ESDを開始している.5年目以降はより多くの内視鏡関連処置を行い,各自で治療戦略を考えて治療にあたっている.

毎週の内視鏡カンファレンスでは,内視鏡所見・病理診断をもとに治療方針を決定している.後期研修医が症例提示を行い,内視鏡所見の確認や治療方針について理解を深めるようにしている.さらに,消化管・肝胆膵のキャンサーボードを定期的に開催しており,外科医・放射線科医とも密接に連携しながら,治療方針を決定している.

現状の問題点と今後

内視鏡件数・内視鏡センターの規模の割にコメディカルの配置数が少ない.検査や治療の数が年々増加していることに加え,近年は内視鏡検査の際に鎮静剤の使用を希望する患者が増え鎮静後のリカバリーの対応に人手がとられるため,コメディカルの増員が望まれる.また,看護師の勤務体制は内視鏡センター・心臓カテーテル室・放射線科などのローテーションであり,近年内視鏡処置は多様化・専門化しているにも関わらず,内視鏡センター専任の看護師が不在な点も問題である.内視鏡技師免許を取得している看護師の数は年々増え,内視鏡センターをよくしようとする熱意を持った看護師が積極的に内視鏡検査・治療に関わってくれているが,今後は内視鏡専任の看護師や内視鏡技師の確保が急務と考える.多くの施設で看護師や内視鏡技師の確保は懸案事項であり,病院幹部や看護部に日々実績を示すとともに増員を依頼し,人員確保に努めていく.構造上,非透視部門と透視部門の距離が離れているため,医師,看護師,洗浄員,機器の移動に手間のかかることが効率低下の一因となっており,今後内視鏡センターに透視室の併設が望まれる.

また,近年の内視鏡検査数の増加に伴い,常に3名の専任の洗浄員を配置し,迅速な機器洗浄を行っているが,内視鏡機器の数が充足しているとは言えない.最新の機器の充実は,検査の質の向上やルーチン検査の迅速化につながり,時間を要するESDなどの内視鏡治療に専任することが可能となるため,最新の内視鏡機器の購入が必須と考えており,2017年3月以降のVPPの更新時に,最新の内視鏡機器を導入予定である.今後も地域医療と高度内視鏡診療を提供すべく,内視鏡センターの体制,内視鏡機器のさらなる向上に取り組んでいく.

 
© 2017 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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