日本消化器内視鏡学会雑誌
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内視鏡室の紹介
日本大学病院
責任者:後藤田卓志(消化器病センター長)  〒101-8309 東京都千代田区神田駿河台1-6
池原 久朝
著者情報
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2017 年 59 巻 6 号 p. 1460-1462

詳細

概要

沿革・特徴など

同大学病院は1925年に設置許可を得た日本大学専門部医科の附属病院として建設され,翌1926年に「日本大学附属駿河台病院」として開院した.病院の開設式典は同年10月30日から3日間に渡って行われ,診療は同年11月1日に開始された.

また,専門部医科は日本大学医学部附属板橋病院を開院し,1935年5月に東京都板橋区に新校舎落成移転したが,駿河台日本大学病院は廃止されること無くその後も運営され続けた.1963年に駿河台日本大学病院は病棟を新築したものの建物の老朽化から,2014年10月1日に日本大学カザルスホールの隣接地へ新築移転し同時に医学部附属から大学本体直属となり日本大学病院として新たに開設された.

組織

当院の内視鏡室は中央検査部の一部に位置づけられており,平成27年11月より後藤田卓志が責任者として統括管理している.現在,内視鏡室は消化管内視鏡検査・治療および気管支鏡検査の管理の運営を行っている.

検査室レイアウト

 

 

 

当内視鏡室の特徴

内視鏡室は総床面積約242.7m2であり,内視鏡室4部屋とX線TV1室の計5部屋で検査・治療を実施している.気管支鏡検査はX線TV室で実施している.リカバリーベッドは4ベッドと限られているため鎮静剤の使用は症例を選んで行っている.また,診察室を1室設置しており,検査後の説明や大腸前処置薬の内服などに使用している.またカンファレンス室では全内視鏡室の検査がモニターできるようになっている.カンファレンス室にはプロジェクターおよびスクリーンが設置されており,症例検討会などで使用している.

スタッフ

(2016年12月現在)

医   師:24名,指導医5名,専門医10名,その他スタッフ6名,研修医など3名

内視鏡技師:4名,Ⅰ種4名

看 護 師:8名,常勤6名,非常勤2名

事 務 職:4名

設備・備品

(2016年12月現在)

 

 

実績

(2016年1月〜2016年12月)

 

 

指導体制,指導方針

当院は研修指定病院であり,初期研修医がローテートしてくる.また,専修医や大学院生も内視鏡診療に携わっており,上級医の指導下に研鑽を積んでいる.内視鏡室での研修は検査の見学から始まり,主に生検や色素散布といった検査の介助を行い全体の流れをつかんでいく.基本的な介助経験を積んだ後に止血やポリペクトミーといった治療関連手技の介助を担当する.消化器内科をローテートする研修医は上部消化管内視鏡のシミュレーターで内視鏡の基本操作を学ぶ.また,病棟受け持ち患者から同意を取得した後に,上級医の指導下,鎮静下に内視鏡の挿入,観察を体験してもらうようにしている.日本大学においては卒後4年目から各専門科へ入局するが,消化器内科入局後は半年間で上部消化管内視鏡検査を習得することを目標とする.こうした中でルーチン撮影,色素散布の必要性,画像強調内視鏡の使い方,正確な生検などの手技的要素を習得していく.同時に検査所見の作成作業を通して内視鏡診断学も学んでいく.また,内視鏡レポートは上級医が全例チェックし最終確定を行う方針をとっている.上部内視鏡が一定レベルに達した段階で,下部消化管内視鏡検査を始める.下部内視鏡は無理な内視鏡操作を行うと強い疼痛を伴うため,コロンモデルで基本的挿入法を習得した後に実診療での検査を開始するようにしている.約1年間の研修終了時までに上下部内視鏡を1人で完遂できることを目標とする.また,定期的に大学関連の市中病院へ異動し更に内視鏡手技の研修を継続する.また,当院消化器内科は肝臓グループ,胆膵グループ,消化管グループに分かれて日常診療を行っている.専修医は各グループを一定期間ごとにローテーションする.そして,特殊内視鏡手技(ESD,小腸内視鏡,EUS,ERCP,EST,EISなど)は各診療グループをローテーション中に指導する.また,週2回のペースで消化器外科とカンファレンスを行い,内視鏡所見と手術所見・病理結果を個々の症例ごとに詳しく検討し,お互いの診断能・技術・知見の向上するよう努力している.

現状の問題点と今後

当院は大学病院という特性上,医師の入れ替わりが多く,内視鏡に関わる医師は定期的な人事異動に伴い変動する.内視鏡室の検査業務は徐々にしており常勤医(助手,助教以上)だけでなく専修医(いわゆる後期研修医)も大きな役割を果たしている.また,ここ数年は非常勤(元常勤のOBの先生方)の協力も得ながら運営している.このように医師の確保は常に課題となっている.また,透視室下内視鏡処置(ERCP,EIS,ダブルバルーン内視鏡)は内視鏡室内に設置された透視室にて施行している.通常検査と並列する場合は看護師の確保が必要であり,事前に看護師と協議した上で検査・治療のスケジュールを決めている.

2015年11月以降,ESDの件数は順調に増加し,困難症例に挑戦する機会も増えてきている.このような背景の中,当院では消化器内科が直接手術室を予約できる環境を整えており,上部消化管の困難病変に対するESD(特に食道表在癌)は全身麻酔下で施行するようにしている.術中の全身管理を麻酔科医に委ねることにより,内視鏡医はESDに集中することが可能となった.

近年,超過勤務に対する社会的関心が高まっており,医療現場においても医師・パラメディカルの無用な超過勤務は可能な限り減らすよう配慮することが求められている.特に長時間かかることが予想されるESDに挑む際には術当日の通常検査の件数を制限するなどの工夫が必要と考えている.

新病院への移転に伴い,内視鏡室が新しくなりハード面は充実した.今後は若手医師の確保,看護師や内視鏡技師の確保といった人材面の充実に努めることにより徐々に増加する内視鏡検査に対応していく必要がある.また,データベースを整備し消化器内視鏡分野における臨床研究も積極的に進めていく予定である.

 
© 2017 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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