日本消化器内視鏡学会雑誌
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内視鏡室の紹介
沖縄県立中部病院
責任者:篠浦 丞 (消化器内科部長・内視鏡室長)  〒904-2243 沖縄県うるま市宮里281
篠浦 丞
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2017 年 59 巻 7 号 p. 1567-1569

詳細

概要

沿革・特徴など

沖縄県立中部病院は沖縄県うるま市に位置する病床数550床の総合病院であり,救命救急指定病院・臨床研修病院・地域医療支援病院・地域がん診療連携拠点病院・日本医療機能評価機構認定病院である.

日本国内で唯一の地上戦を経験した沖縄は,1945年以降1972年までアメリカ合衆国の直接・間接の統治下にあり,その間保健医療制度も日本本土とは異なる独自のものが整備された.

沖縄県立中部病院の母体は,終戦前に沖縄に上陸した米軍の要請下に当時沖縄本島に生存していた医師達による,具志川村宮里で米軍海兵隊病院が使用していた天幕小屋での医療施設であり,この医療施設が1946年にはコザ市に移転し「中央病院」と改称,さらに1952年にはコザ市胡屋にオープン病院として移転した.1956年には「コザ病院」に改称,1966年には現在とほぼ同じ具志川市宮里(現うるま市宮里)に移転,病院名を「中部病院」として業務を開始した.1966年,ハワイ大学派遣医学教育顧問団団長N.L.Ganlt Jr医師以下32名を迎え,1967年には研修医師8名(沖縄出身5名,本土出身3名)で第1回目の臨床医学研修を実施した.1972年に本土復帰に伴い「沖縄県立中部病院」となり,2002年に旧病院より隣接した敷地にある現病院に移り,現在に至る.

組織

消化器内科は,1988年,独立した専科として慶田慶秀消化器内科部長が就任した時期をもって発足としている.その後二代菊池馨部長から現在,三代篠浦丞に至る.消化器内科発足当時より,慶田部長の指導のもと上下部内視鏡,ERCPなどが行われてきたが,2002年の移転に伴い内視鏡室の整備が行われ,その後も小規模の拡張,改築を経て現在に至っている.現在指導医1名,専門医及び専門医相当の医師6名,小児消化器科医1名の体制で診療しており,研修医3-4名がローテートしている.

検査室レイアウト

 

 

 

当内視鏡室の特徴

内視鏡室は別図に示す通りで,上部消化管用検査スペース3,X線TV室3部屋の計6スペースで検査を施行している.TV室は放射線透視検査全般と共用である.リカバリーは5ベッドあり,また狭小ながら下部消化管検査前処置用の専用スペースを有する.

スタッフ

(2017年4月現在)

医   師:指導医1人,専門医等7(うち小児消化器医1)人,後期研修医3人から4人

内視鏡技師:3人

看 護 師:15人

事 務 員:6人

設備・備品

(2017年4月現在)

 

 

実績

(2016年1月~2016年12月まで)

 

 

指導体制,指導方針

当科が養成を目指す消化器内科医は,沖縄県立中部病院が市中病院である性格上,まずは救急消化器疾患に漏れなく対応できる総合消化器医であること,さらにそれとともにそれぞれの得意分野としてのスペシャリティを有し,ジェネラルとスペシャリティの双方において質の高いエビデンスベースドの診療およびマネジメントができる能力を有する医師である.

消化器専攻研修はPGY3より4年間とし,最初の1年間(PGY3)は,循環器,呼吸器,腎臓,感染症,綜合内科等の内科の各分野をローテーションし,後期研修2年目(PGY4)からは消化器科のフェローとして消化器科中心のローテーションとなる(うち1年間は離島中核医療機関等での実践的研修).この間,当院が内科学会認定の教育関連施設であることから内科の研修も継続することが出来る.さらに,医師の希望により国内外の専門施設への留学後再び中部病院に戻りスタッフとして活躍することが可能である.これまでは,海外ではメイヨークリニック,ワシントン大学,エール大学,カリフォルニア州立大学アーバイン校,トロント大学,国内では国立がんセンター中央病院,国立がんセンター東病院,自治医科大学,杏林大学医学部,千葉大学医学部,九州がんセンター,愛知県立がんセンター,武蔵野赤十字病院などでの研修を積んだのちに戻ってきた医師たちが,それぞれのスタイルで,自由にしかしタイトなチームワークをもって診療を行っている.初期研修医は病棟でのマネジメントが中心で,後期研修医は初期研修医の指導(屋根瓦式研修),他科からのコンサルトや緊急症例への初期対応を中心に修練を積んでいる.

また,放射線科・外科・病理診断科とのカンファレンスが定期的に開催されており,これらも研修医にとっての修練の場となっている.

現状の問題点と今後

現在,種々の事情により,前処置やリカバリーのスペースや検査スペースが十分でないため,爆発的に増加しつつある検査需要に遅滞なく対応することが困難になっている面は否めない.この点については,スタッフの今以上の充実と現在のスタッフの疲弊防止が重要なことは言をまたない.さらに,県立病院として果たすべき公的医療遂行の観点から,離島へのスタッフ派遣やEUSなど特殊検査の出張指導と,特殊手技を含む各種内視鏡検査・治療の両立が課題であるといえる.

 
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