日本消化器内視鏡学会雑誌
Online ISSN : 1884-5738
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59 巻, 7 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
総説
  • 六車 直樹, 藤本 将太, 藤野 泰輝, 岡本 耕一, 高山 哲治
    2017 年 59 巻 7 号 p. 1473-1481
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/20
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    内視鏡分子イメージングは,従来のイメージング技術とは異なる方法でターゲット分子の局在,機能,性質を付加情報として与えることができる新たな技術である.本技術の確立には,1)病変における特異度・感度ともに高いバイオマーカーの発見・確立,2)バイオマーカーとの親和性が高く,明瞭なシグナルを産出可能な蛍光プローブの存在,3)低侵襲でリアルタイムに高解像度のイメージを供給可能な画像機器の開発の3点が重要な要素となる.本技術は,消化管癌に対するスクリーニングのみならず,治療方針の決定や治療効果の判定に応用が可能と考えられる.抗体医薬,低分子化合物の普及などに伴い治療と診断を融合したTheranosticsの臨床応用が期待され,内視鏡分子イメージングは個別化医療においても中心的な役割を果たすと考えられる.

症例
経験
手技の解説
  • 坂本 直人, 長田 太郎, 立之 英明, 村上 敬, 澁谷 智義, 冨木 裕一, 渡辺 純夫
    2017 年 59 巻 7 号 p. 1514-1523
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/20
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    大腸ESDは依然として難易度の高い手技であり,接線方向からのアプローチが難しい症例では粘膜下層が十分視認できず,剥離操作に難渋し,穿孔などを生じる危険性が高くなる.しかし,トラクションにより良好な視野が得られればESDの手技は数段容易となり安全に行うことができる.有効なトラクションを得るには牽引する方向と安定した強さが重要であり,これを目標に多くのトラクション専用のデバイスが考案されてきたが大腸ESDで実際に使用される機会は少なかったと思われる.近年,市販化された「けん引クリップ®(S-O clip)」は通常のクリップと同様に鉗子口を通過可能なデバイスであり,深部大腸においても簡便に使用できる.ESDの主な適応である20mm~50mm程度の平坦型腫瘍においては終始安定したトラクション効果が得られており,大腸ESDを効率よく安全に行う上で有用なデバイスとなるであろう.

  • 加藤 博也, 友田 健, 松本 和幸, 堀口 繁, 堤 康一郎, 岡田 裕之
    2017 年 59 巻 7 号 p. 1524-1531
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/20
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    電子付録

    悪性肝門部胆管狭窄に対して複数本の金属ステントを留置した後のステント閉塞に対する処置は難易度が高い.処置を成功させるためには,ガイドワイヤー,カテーテル,ステントなど,各処置具の特性を理解して適切に選択することが重要であり,処置を行う際には,それらの処置具を扱ううえでのポイントを理解しておかなければならない.stent-in-stent法で留置した複数の金属ステントが閉塞した場合の処置では,金属ステントのメッシュの隙間にカテーテルやプラスチックステントを通過させることが最大の難関であることを知ったうえで,それぞれの処置具を慎重に操作する必要がある.プラスチックステントを留置する際はそれらを留置する順序も重要であり,基本的には金属ステントを留置した順番で留置する.本手技の成功には術者のみならず,介助者のテクニックも重要であり,日頃からスコープを握るだけではなく,ガイドワイヤーの扱いに慣れておかなければならない.

資料
  • 加藤 元嗣, 古田 隆久, 伊藤 透, 稲葉 知己, 小村 伸朗, 潟沼 朗生, 清水 誠治, 日山 亨, 松田 浩二, 安田 一朗, 芳野 ...
    2017 年 59 巻 7 号 p. 1532-1536
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/20
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  • 松本 美桜, 加藤 元嗣, 大庭 幸治, 安孫子 怜司, 津田 桃子, 宮本 秀一, 水島 健, 大野 正芳, 大森 沙織, 高橋 正和, ...
    2017 年 59 巻 7 号 p. 1537-1545
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/20
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    【背景】現在大腸ポリープの切除に際し,切除後の出血予防にクリップをかけることが一般的である.しかし,クリップの有無については術者の裁量に委ねられており,かつ,クリップの出血予防効果についても明らかとはなっていない.

    今回,クリップの効果を明らかにすべく,われわれは2cm以下のポリープを対象に多施設共同の無作為化比較試験を行った.

    【方法】検討期間は2004年4月から2013年7月の間,内視鏡的にポリープ切除を行う2cm以下のポリープを持つ20歳以上の患者を対象とし,ポリープ切除後の出血の有無を調査した.肝硬変や透析症例,ヘパリン置換例など重篤な合併症を持つものは除外とした.クリップ施行群ではポリープ切除後に全例でクリップをかけ,非施行群ではクリップを施行せずに処置終了とした.切除時に露出血管または静脈性出血が見られた場合には,スネアの先端で凝固焼灼を追加した上でそれぞれの群に応じた処置を行い終了としたが,動脈性出血が見られた場合には適切な止血処置を行い検討からは除外した.

    切除後は慎重な経過観察を行い,顕性出血やHb2以上の低下があった場合には緊急内視鏡を行い出血部位を同定した.

    【結果】北海道の7施設が研究に参加し,1,499人3,365ポリープが解析対象となった.そのうちクリップ群は752人1,636ポリープ,非クリップ群は747人1,729ポリープであった.後出血率はクリップ群で1.10%(18/1,636),非クリップ群で0.88%(15/1,729)であった.その差は-0.22%(95%CI:-0.96,0.53)で,95%信頼区間上限が非劣性マージン1.5%を下回り,非クリップ群のクリップ群に対する非劣性が証明された.次いで,クリップ群,非クリップ群それぞれに出血に関わる因子を検討したところ,両群でサイズが有意な因子となった.さらに非クリップ群ではさらに切除後の凝固焼灼の追加も有意なリスク因子であった.

    【結語】大腸ポリープにおける後出血予防としてのクリップ施行は必ずしも必要ではないことが明らかになった.さらに,後出血の危険因子として凝固焼灼の追加が挙げられ,高周波を使用しないコールドポリペクトミーの有用性も示唆された.

ガイドライン
内視鏡室の紹介
最新文献紹介
  • 斎藤 豊, 関口 正宇
    2017 年 59 巻 7 号 p. 1570
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/20
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    【背景】内視鏡的粘膜切除術(EMR)は現在大型大腸ポリープの切除に最も用いられている方法である.しかしながら,大型病変のEMRではしばしば分割切除となり,低いR0切除率と高い再発率を引き起こす.内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は新しい技術であるが,より難しく長時間を要するが,高い一括切除率ときわめて低い再発率のため有望な治療であることは確かである.

    今回の検討は,ESDのEMRに対する対費用効果を短期(6カ月)と長期(36カ月)で比較することを目的とした.ESDは短期的には時間がかかり高い医療費が必要となるが,低い患者負担,高い一括切除率と低い再発率から,繰り返しの検査が必要なく,長期的には医療費の面で効率的であると仮定した.

    【方法】直腸,S状,下行結腸の2cm以上のnon-Ip病変で内視鏡的に腺腫と診断される病変を対象とする多施設ランダム化比較試験(RCT).

    主エンドポイントは6カ月後の内視鏡経過観察における再発率.セカンダリエンドポイントはR0切除率,患者負担とQOL,医療費と外科紹介率,合併症率と36カ月後の再発率とした.質調整生存年数(QALY)はAUCとEQ-5D indexesで評価する.医療費の算定は部門のコストを複数算定する.

    ESDのEMRに対する費用対効果は,「費用の増分」を「効果の増分」で割ることで算出されるICER(増分費用効果比)を用いて評価するが,その「効果」としては「無再発」「QALY」を用いる.

    【考察】本検討でESDが長期的に効果的であれば,余分な大腸内視鏡や,繰り返しの検査の患者負担が将来的に不要となる.

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