日本消化器内視鏡学会雑誌
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総説
胆道病変に対するEUSガイド下順行性治療
岩下 拓司 上村 真也安田 一朗清水 雅仁
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2017 年 59 巻 8 号 p. 1601-1609

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要旨

超音波内視鏡(EUS:endoscopic ultrasound)下胆道ドレナージは,ERCPが施行困難な症例の有用な代替え加療方法として,近年多くの報告を認める.EUSガイド下順行性治療(AG:antegrade treatment)は,EUS下胆道ドレナージの中の一つの方法であり,その特徴として乳頭部・胆管開口部まで内視鏡を挿入することなく,消化管と胆管の間に形成した一過性の瘻孔から順行性に胆道病変に対して処置を行うものである.今回はEUS-AGについて,胆道病変を悪性胆道閉塞,胆管結石,良性胆管狭窄に分類し,それぞれの疾患における現状についてevidenceを交えながら概説する.

Ⅰ 緒  言

ERCPは総胆管結石,良悪性胆道閉塞などの胆道病変に対する低侵襲で確実な治療方法として,広く一般臨床の場で利用されている.しかしながら,十二指腸閉塞や上部消化管術後などの解剖学的理由により,十二指腸鏡を乳頭部まで挿入することが困難な症例では,ERCPを完遂することが困難である.ERCP困難症例に対しては,経皮的胆管ドレナージや外科的処置が代替え方法として施行されてきたが,しかしながら,これらの処置は高い偶発症率が報告されている 1)~3.小腸内視鏡の登場により,上部消化管術後症例においては乳頭部まで到達することが可能となり,良好なERCP成功率が報告されているが 4,一方で依然として施設間の治療成績にもばらつきがあり,治療困難例を経験する.近年,このようなERCP困難症例に対して,EUS下に胆管へアプローチし治療する方法の有用性が報告されている.

2001年にGiovanniniら 5により胆道病変に対するEUS下治療が初めて報告された.ERCP困難な悪性胆道閉塞例に対してEUS下に胆管と十二指腸の間にプラスチックステントを留置し瘻孔形成を行い,適切な胆管ドレナージが可能であり,明らかな偶発症をみとめなかったとしている.この報告に引き続き,多くのEUS下胆管アプローチの有用性が報告されているが,その方法は3つに大別することが可能である 6.胆管と消化管の間に永久瘻孔を形成しドレナージを行う胆管消化管瘻孔形成術(BD:biliary drainage),EUS下にガイドワイヤーを胆管から乳頭を介して十二指腸に留置し,乳頭より出ているガイドワイヤーを利用して再度ERCPを行い胆管カニュレーションを試みるEUS-Rendezvous technique(RV),消化管と胆管の間に一過性の瘻孔を形成し,その瘻孔を介して順行性に胆道病変に対して治療を行うAntegrade technique(AG)である.本稿においては,EUS-AGについて概説する.

Ⅱ EUS‒AGの適応

EUS-AGの適応を判断する際には,患者要因,術者要因,そして施設要因について慎重に検討する必要がある.患者要因では,EUS-AGは内視鏡を胆管開口部まで挿入することなく,消化管と胆管の間に形成した一過性のろう孔を介して胆道病変に対して処置を行うという手技上の特徴から,乳頭へのアクセスが困難もしくは不可能な症例が良い適応であり,具体的には上部消化管術後症例が挙げられる.EUS下に胆管穿刺を行うことから,出血傾向や抗血小板薬・抗凝固薬の使用の有無については事前に確認する必要がある.また,EUS-AGについて患者さんに十分に説明を行い,処置の施行に同意を得ることが必要である.術者要因としては,日本消化器内視鏡学会,日本消化器病学会,日本胆道学会,日本膵臓学会が合同で発表した,「超音波内視鏡下瘻孔形成術による閉塞性黄疸治療に関する提言」にもあるように,EUS-AGの術者および介助者は,手技に関する十分な知識を有しERCP関連手技およびEUS-FNAに熟練している必要がある.初回実施の場合には,経験の豊富な施設で見学,研修を行うことが望ましく,とくに初回実施時にはこの手技に精通した医師の下で行うことが推奨される.施設要因としては,EUS-AGが不成功に終わった場合に,腹腔内胆汁漏出・腹膜炎などの偶発症の発生リスクを最小限にし,また,偶発症が発生した際の治療のために,経皮的,経血管的,外科的処置が引き続き迅速に行えるバックアップ体制を予め施設内で構築しておく必要がある.

Ⅲ EUS‒AGの実際

EUS-AGは超音波内視鏡下に消化管と空腸の間に一過性瘻孔を形成し,その瘻孔を介して基本的にはERCPと同様の処置を胆道病変に対して順行性に行うために,当院ではERCPに準じて周術期管理を行っている.具体的には,絶食・輸液管理の上,抗生剤を予防的に使用し,術前後には血液検査を施行し,膵炎を含めた偶発症の早期診断に努めている.術中もERCPと同様に,被検者の体位は腹臥位とし,鎮静・鎮痛剤はミタゾラム,ペンタジンを投与しながら,パルスオキシメーター,自動連続血圧計,心電図モニターを使用してバイタル管理を行っている.

コンベックス型処置用EUSを挿入し,挙上空腸もしくは残胃から肝左葉を描出し,ドップラーモードも併用し介在する脈管を評価した上で,安全に穿刺可能な肝内胆管(IHBD:intrahepatic bile duct)を決定する.内芯を抜去し造影剤を充填したFNA針を用いてIHBDをEUS下に穿刺し,穿刺針を介して胆汁吸引・胆管造影を行い適切な胆管穿刺を確認する(Figure 1).FNA針は19-gauge針と22-gauge針が選択可能であるが,19-gauge針は0.035-inchまでのガイドワイヤーに適合するのに対して,22-gauge針は0.021-inchまでのガイドワイヤーにしか適合しない.細径のガイドワイヤーは処置具のサポート性能が弱くその後の処置に影響を与えることに留意しFNA針の口径を選択する必要がある.適切な胆管穿刺後,ガイドワイヤーを穿刺針を介して胆管内に挿入し,瘻孔部をダイレーターで拡張し,ERCP用カテーテルに入れ替えを行う(Figure 2).この時点で,経皮経肝胆管アプローチのように胆管造影を適宜追加し胆道病変の評価,胆管走行の確認を行いながら,ガイドワイヤーを操作し十二指腸乳頭部(胆管開口部)を超えて消化管内に留置する(Figure 3).これ以降の処置は胆道病変の種類により異なり,ここでは悪性胆道閉塞,胆管結石,良性胆管狭窄に分けて述べる.

Figure 1 

超音波内視鏡下に肝左葉肝内胆管を穿刺し,造影剤を注入し適切な胆管穿刺を確認した.

Figure 2 

胆管内に穿刺針を介してガイドワイヤーを留置後,瘻孔部をダイレーターで拡張した.

Figure 3 

ERCPカテーテルを胆管内に挿入,ガイドワイヤーを胆管閉塞部,乳頭部を超えて十二指腸内に留置し,胆管造影も追加し閉塞部を評価した.

悪性胆管閉塞に対してはガイドワイヤー上にステントを順行性に進めて胆管閉塞部に留置する順行性ステント留置(ABS:antegrade biliary stenting)を行う.ステントが閉塞・逸脱した際の再処置は容易ではないためにプラスチックステントよりも開存期間が長く逸脱リスクが少ないuncovered self-expandable metallic stent(SEMS)を使用している.また,uncovered SEMSは一過性に拡張した瘻孔部を介して胆管内に挿入するために,挿入性に優れる細径のデリバリーのものが推奨される.uncovered SEMSを閉塞部に留置した後は,胆管造影を行い良好な造影剤の流出を確認しすべてのデバイスを抜去する(Figure 4).胆管結石例ではガイドワイヤー上に乳頭拡張用バルーンを順行性に進めて,乳頭部(胆管開口部)をバルーン拡張する順行性バルーン拡張(ABD:antegrade balloon dilation)を施行後に(Figure 5),ERCP用の結石除去用リトリーバルバルーンを用いて結石を十二指腸内に排石する(Figure 6).良性胆管狭窄では,狭窄部へ胆管拡張用バルーンを進めてABDを行う.なお,再処置の可能性があり胆管へアクセスするルートを確保する必要がある場合や胆汁流出が不良で腹腔内胆汁漏出からの偶発症の発生が懸念される場合には,経鼻胆管ドレナージ(NBD:naso-biliary drainage)を瘻孔部を介して胆管内に留置している(Figure 7).

Figure 4 

胆管閉塞部に対して順行性にuncovered self-expandable metallic stentを留置した.

Figure 5 

順行性に乳頭部をバルーン拡張した.

Figure 6 

結石除去用リトリーバルバルーンを使用して胆管結石を乳頭部から排石した.

Figure 7 

瘻孔部を介して経鼻胆管ドレナージを留置した.

Ⅳ 悪性胆道閉塞に対するEUS‒AGの治療成績

悪性胆道閉塞に対するEUS-AGは,2008年にFujitaら 7により一過性に消化管と胆管の間に瘻孔を形成した後に,10日間の期間を置き再度内視鏡を挿入し留置されているステントを抜去,EUS-ABSを施行する二期的な処置が報告されている.一期的なEUS-ABSについては2010年にBinmoellerらのグループより 8初めて報告された.この報告では,乳頭・胆管空腸吻合部にアクセスできないために通常のERCP下経乳頭的胆管ステント留置が困難な悪性胆道閉塞症例5例に対してEUS-AGを試み,5例全例でEUS-ABSに成功し,明らかな偶発症を認めなかったとした.その後,いくつかのグループからその有用性・安全性の検討が報告されており,EUS-ABSのpooled analysisでは,成功率85%(77/91)・偶発症率14%(6/43)であった(Table 1 8)~15

Table 1 

EUS下順行性胆管ステント留置術のpooled analysis.

EUS-ABSの技術的障壁の可能性がある段階として,胆管穿刺,ガイドワイヤー操作,ステント留置が挙げられる.胆管穿刺は,本処置の対象症例が悪性胆道閉塞を有し胆管内圧が上昇しているために,十分な胆管拡張を認める症例がほとんどであり,EUS-AGでは肝左葉のみにアプローチが制限されるがEUS下の胆管穿刺の難易度は高くはない.ガイドワイヤー操作においても,FNA針で胆管を穿刺した部位から,ガイドワイヤーのみを胆管内に挿入し閉塞部・乳頭部を超えて十二指腸内に留置するためにガイドワイヤー操作の負担が大きいEUS-RVとは異なり 16,PTBDのようにERCP用カテーテルを胆管内に進め必要に応じて胆管造影を行いながら,ガイドワイヤー操作を行うことができるために,ガイドワイヤーの推進性・回転性を維持することが可能でありガイドワイヤー操作の難易度は高くはない.ステント留置では,前述したようにuncovered SEMSを選択することにより細径(6-fr前後)のステントデリバリーのSEMSが利用可能であり,ステント挿入・留置も容易である.EUS-ABSでは,技術的な障壁が少なく,今回のpooled analysisにおいても85%と高い成功率を示し,われわれが報告した前向きのpilot studyにおいても,手技成功率は95%(19/20)と良好であった 15

安全面の検討では,EUS-ABSでは一過性に消化管と胆管の間に瘻孔形成を行い,その瘻孔を介してステントを胆管閉塞部に留置するために,瘻孔部から腹腔内胆汁漏出がもっとも懸念される偶発症と考えられる.pooled analysisでは,偶発症を14%の症例で認め,その内訳は膵炎4例,発熱1例,血腫1例であり,腹腔内胆汁漏出・胆汁性腹膜炎の症例を認めていない.この結果からは,EUS-ABS自体の胆汁漏出の危険性は低い可能性もあるが,われわれの施設では,EUS-ABSのステントを留置する際には,可能であれば胆管閉塞部だけでなく十二指腸乳頭部にもステントを掛けるように留置し乳頭浮腫などにより胆管内圧が上昇する可能性をできるだけ低くするように努め腹腔内胆汁漏出を予防するようにしている.実際にわれわれの施設の検討においても胆汁性腹膜炎の症例を認めていない.一方で,われわれの検討では,軽症であるものの膵炎の発症率が15%(3/20)と高く,この原因として乳頭部に掛けたステントにより膵液流出障害を来したことが膵炎の原因と考えている 15.EUS-ABSにおけるステント留置の際にステントを乳頭部に掛けるように留置するか,可能な限り閉塞部のみに留置するかの有用性・安全性については今後のさらなる検討が必要である.

EUS-ABSの適応症例は,前述したように上部消化管術後症例など乳頭部に到達困難な悪性胆道閉塞症例と考えられるが,胆管と消化管の間に瘻孔を形成しドレナージを行うEUS-BDも選択可能である.Khashabら 17は上部消化管術後症例の悪性胆道閉塞に対する胆管ドレナージの有用性・安全性に関して多施設共同後方視的検討を行い,小腸内視鏡下ERCPとEUS-ABSやEUS-BDを含むEUS下胆管ドレナージを比較している.EUS下胆管ドレナージ49例の結果では,手技成功率は98%(48/49)であり,そのドレナージ方法の内訳はEUS-BD36例(胆管胃吻合術33例,胆管空腸吻合術2例,胆管十二指腸吻合術1例),EUS-ABS10例,RV2例が施行されており,臨床的成功は88%(43/49)であったと報告している.この報告のEUS下胆管ドレナージ全体の良好な結果からは,EUS-BDも上部消化管術後症例の悪性胆道閉塞に対する有用で安全なドレナージ方法であると考えられるが,EUS-BDとEUS-ABSの成績を直接比較した検討がなく,EUS下胆管ドレナージのなかで各種手技の優劣については不明である.また,近年,EUS-ABSとBD(肝内胆管胃吻合術)を併用する方法 18も報告されており,今後,各手技間での有用性・安全性の比較検討が必要である.

Ⅴ 胆管結石に対するEUS‒AG

胆管結石に対するEUS-AGは,2011年にWeilertらにより初めて報告された.この報告では,Roux-en-Y 胃バイパス術後の結石症例6例に対してEUS-AGを試み,全例でEUS下胆管穿刺は成功し,2例で瘻孔部拡張が不成功であったものの,残りの4例は瘻孔拡張,ABD,結石除去に成功している.不成功の2例に対しては,留置したガイドワイヤーを利用して小腸内視鏡ERCPを用いたRVに移行し,結石除去に成功したとしている.偶発症として1例で肝被膜下血腫を認めたが,保存的に軽快したとしている 19.この報告の後に,いくつかのグループによりその有用性が報告されており,それらの報告のpooled analysisでは手技成功率は72%(31/43)であり,偶発症率は16%(7/43)であった 11),19)~21Table 2).依然としてEUS-AGを用いた胆管結石治療の報告数が少なく,その有用性・安全性の検討のためには,さらなる症例の集積が必要であるが,われわれは多施設共同で胆管結石を有する上部消化管術後症例29症例を集積し後方視的検討の報告 21を行っており,その報告を通して胆管結石に対するEUS-AGの現状について検討を行う.

Table 2 

胆管結石に対するEUS下順行性治療のpooled analysis.

われわれの報告における29症例の治療成績は,結石除去成功率72%(21/29)・偶発症率17%(5/29)であり,その治療成績は良好とは言えない.不成功例の原因について検討を行ってみると,胆管穿刺不可6例,ガイドワイヤー留置不可1例,結石除去不可1例であり,ここでは特に成功率に影響を与えると考えられる胆管穿刺と結石処置について述べる.悪性胆道閉塞症例では胆管内圧が上昇しているため肝内胆管が十分に拡張し,EUS下に安全な穿刺ライン確保が可能であれば胆管穿刺は比較的容易であるが,胆管結石症例では胆管拡張が不十分な症例を認め,そのような症例では肝左葉肝内胆管のみにしかアクセスできない本手技では胆管穿刺に難渋する.拡張が不十分な胆管を穿刺するために,通常使用する19-gauge針からより細径の22-gauge針に変更することも穿刺性能を改善するために有効と考えられ,胆管穿刺が成功した23例のなかでも胆管の拡張が乏しい2例で22-gauge針を使用して胆管穿刺を行っている.しかしながら,穿刺針の変更だけで,すべての胆管拡張の乏しい症例に対応することは困難であり,また,22-gauge針を使用するとその後のガイドワイヤーの選択に影響を与えることにも留意しなければならない.結石の処置では,一過性の瘻孔を介して処置を行っているために,ERCP用の結石除去用リトリーバルバルーン以外には,デバイス径やバスケット嵌頓の危険性などからその他の処置具は使用しにくい.そのため,EUS-AGではリトリーバルバルーンで結石を順行性に乳頭を介して消化管内に排石する必要があり,ERCPの際に胆管から乳頭を介して消化管に結石を引き出すよりもバルーンへ力が伝わりにくく,ABDで使用した乳頭拡張バルーン径と大きさが同程度の胆管結石の除去においても排石に難渋する.胆管が非常に拡張しており,リトリーバルバルーン径よりも胆管径の大きいような症例では,結石径が小さかったとしてもバルーンと胆管壁の間に隙間ができ,排石の際に結石がその隙間をすり抜けてしまい結石除去に難渋する.胆管形状が蛇行している場合にも,リトリーバルバルーンに排石するための力が伝わりにくい.穿刺する胆管分枝もその後の処置に影響し,B2穿刺であると乳頭に対して比較的直線的にデバイスを挿入することが可能となり処置具に力が伝わりやすいが,B3を選択すると穿刺部位から門脈臍部にかけて一度頭側に向かい,その後乳頭部側に向かって走行するために力が逃げやすい.しかしながら,B2穿刺も介在する脈管や食道穿刺のリスクなどから常に選択可能ではない点に留意する必要がある.これらの点を考えると,胆管結石に対するEUS-AGは依然として技術的な課題が多く,胆管径,胆管走行,結石径・個数などを事前に評価し適応を検討する必要があり,胆管径と結石径のミスマッチがある症例や胆管走行が蛇行している症例では,現在の結石を順行性に押し出す方法では結石治療に難渋することが予想される.近年学会の報告において,EUS-AGの結石処置の新たな方法として,NBDや胆管ステントを瘻孔部に留置し二期的な処置をすることにより,ESWLの併用や瘻孔が安定することにより結石砕石用バスケットや10fr胆道鏡(SpyGlass,Boston Scientific)などを瘻孔から胆管内に挿入し砕石する報告も認め,今後さらなる症例集積・有用性の検討が待たれる.

安全面に関しては,悪性胆道閉塞に対するEUS-ABSと同様に一過性に形成した瘻孔を介して処置を行うことから腹腔内胆汁漏出・胆汁性腹膜炎が懸念される偶発症であるが,胆汁性腹膜炎の症例を1例認めたのみであり,その1例も保存的に軽快している.結石処置では,乳頭処置に伴う乳頭部浮腫から胆管内圧が上昇し胆汁漏出につながる可能性や残石に対する再処置を必要とする可能性があり,われわれの施設では必ず瘻孔部を介してNBDを留置し,施設によっては胆管ステントを瘻孔部に留置しており,これらの試みが腹腔内胆汁漏出を予防している可能性もある.その他偶発症として,軽症膵炎,胆嚢炎,CRP上昇などを認めたが,重篤なものを認めていない.これらの結果からは,結石治療におけるEUS-AGは比較的安全に施行可能な処置と考えることができるが,依然として検討症例数が十分とは言えず,胆汁性腹膜炎,出血,穿孔など懸念される偶発症の発生の有無については慎重に評価する必要がある.

Ⅵ 良性狭窄に対するEUS‒AG

良性狭窄に対するEUS-AGは少数の症例報告を認めるのみである.Parkら 22は胆管損傷に対して胆道再建が施行され,その後胆管空吻合部狭窄を来した症例に対してEUS-AGを施行,吻合部狭窄に対してABDを行い良好な臨床的改善を認め,明らかな有害事象を認めなかったとしている.われわれも,膵頭十二指腸切除術後の胆管空腸吻合部狭窄に対してEUS-AGを試み,ABDを施行し閉塞は解消され,明らかな有害事象を認めなかったと報告した 11.しかしながら,良性胆管狭窄は,ABDを施行後に狭窄が再発する可能性があり,治療後の長期の経過を考えなければならず,EUS-AGでは一過性の瘻孔から処置を行うため再処置の際には瘻孔形成から再度行う必要があり,その適応は慎重に検討する必要がある.近年,Miranda-Garciaら 23は,良性胆管狭窄に対して二期的なEUS-AGを報告している.肝左葉肝内胆管と胃の間にEUS-BDを施行し,瘻孔が安定した4-8週間後に瘻孔を介してABDを施行したとしている.上部消化管術後のためにERCPが施行できない吻合部狭窄を含む良性胆管狭窄7症例を対象とし,1段階目であるEUS-BDは7例全例で成功したが,2段階目の胆管狭窄部に対するABDは4例で可能であり,その後瘻孔部から狭窄部を介して小腸にプラスチックステント留置を行ったとしている.残りの3例ではガイドワイヤーが狭窄部を超えず,胆管と胃の間の瘻孔を維持したとしている.7例中6例で出血やステント逸脱等の偶発症を認めており,処置方法については再考の必要性があるが,二期的方法では繰り返し良性胆管狭窄部へのアプローチを可能とし有用な可能性があり,今後さらなる長期予後を含む検討が必要である.

Ⅶ おわりに

胆道病変に対するEUS-AGの現状について,悪性胆道閉塞,胆管結石,良性胆管狭窄の3つの病態に分けて概説した.EUS-AG自体の安全性・有用性,その他EUS下処置や小腸内視鏡を用いたERCP・PTBDなどの処置との使い分けについては今後のさらなる検討が必要である.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

文 献
 
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