2018 年 60 巻 1 号 p. 78-81
同病院は,1971年9月に開院した帝京大学医学部附属病院(本院)に引き続き1973年(昭和48年)7月に「帝京大学医学部附属溝口病院」として開院した.当初は,内科,耳鼻科,小児科での診療で病床数は80程度であったが,1981年12月には外科,産婦人科,整形外科等も増設し診療科数は12科となり病床数も263床となった.1990年には病床数は400床となり,この年に当院で日本初となる腹腔鏡下胆嚢摘出術が実施された.2017年5月には,隣接地に新築移転し地域に根差した医療を展開している.
組織内視鏡室は独立しており,2016年4月より消化器内科科長(安田一朗科長)が室長に就任している.
検査室レイアウト
内視鏡室は,2017年5月に新築移転した新病院の地下1階に位置し総面積は179.3m2の広さである.内視鏡受付・内視鏡検査室・説明室・更衣室・洗浄スペース・カンファレンスルーム・リカバリールームで構成されている.各検査室,説明室は個室であり,患者プライバシーに配慮した検査室である.ESD等の治療内視鏡は,広いスペースを有する内視鏡室4で行っている.前処置エリアは,同病院2階に位置する.患者様が検査可能となり次第,順次看護師の付き添いの下で検査室に移動している.
ERCP,ステント留置,小腸内視鏡検査などレントゲン透視が必要な検査は,向かいのエックス線テレビ室で行っている.
(2017年7月1日現在)
医 師:指導医3名,専門医7名,その他スタッフ4名,研修医2名
内視鏡技師:6名
看 護 師:常勤5名,非常勤2名
事 務 職:1名
(2017年7月1日)
(2016年4月~2017年3月)
消化器内視鏡検査の基本事項(機器の取り扱い,検査の流れ,リスクマネージメント等),観察法のレクチャーを受けた後,内視鏡手技の見学を開始する.並行して週1回の内視鏡カンファレンスを通じて内視鏡撮影,観察,内視鏡診断を学び担当患者の検査を中心に生検の介助や治療の外回りを経験する.一定レベルに到達したと判断できた場合,上級医監視下でリスクの少ない症例のみ上部消化管内視鏡検査を行っている.また,吐血など緊急内視鏡症例においても外回りや手技の介助等積極的に参加してもらい,引き続き全身管理も勉強している.初期研修医のローテーションでは,内科の基本手技の取得,救急患者対応や病棟業務にも多くの時間が割かれる上研修期間も限られている.より多くのことを経験していただき,短期間で多くの経験が積め消化器疾患の理解が深まるような研修を目指している.
後期研修医後期研修の目標としては,1)上部・下部消化管内視鏡のルーチン検査を単独で完遂できること,2)内視鏡診断力の向上(通常観察,画像強調内視鏡での観察),3)大腸ポリペクトミーやEMR等一般的な内視鏡治療手技の習得等である.
具体的には,初期研修医が終了し,ルーチンの上部消化管内視鏡検査をまず上級医師の監視下に行う.観察・撮影および診断がある程度的確にできる段階に到達したらリスクの少ない症例を単独で行う.生検が的確にでき内視鏡操作が安定してきた段階で下部消化管内視鏡のトレーニングをスタートする.トレーニングを行う前には,学会やセミナーで挿入法のセッションに参加して大腸の解剖や挿入法の理解を深めている.実際は,上級医師の元で時間を決めて施行している.また,当院ではUPD2を2台有し挿入困難例やループ形成時の介助の仕方等もUPD画像を供覧し指導している.
胆膵領域のEUSは,標準的描出法をマニュアル等で学んだ後,早い段階から実践による学習を行う.当院ではラディアル型とコンベックス型,各1本ずつのスコープを有しているが,観察用途にはスコープ選択の適応は特に設けていない.ERCPなどの透視下手技に関しては,まず介助手技を通して周辺機器やデバイスに関する知識を習得する.その後は,入院を担当する主治医が主術者として先発するのを原則としている.トレイニーが手技を行う際には,習熟度に応じた制限時間を設けることで教育の効率性と安全性のバランスに配慮している.
週1回,消化器内視鏡に携わるスタッフ,研修医が参加しての内視鏡カンファレンスを行っている.ルーチン内視鏡のチェックおよび治療予定症例について検討を行っている.また月1回外科医,病理医とともに,既手術症例で興味ある症例を選択しカンファレンスを行っている.
平成27年は内視鏡件数が6,000件を超え,胆膵領域のEUS,FNAおよびESDが大幅に増加した.検査ブース数が不足していたが,2017年5月新病院に移転後検査室が増え検査が円滑に施行されている.また,外来患者の内視鏡検査の増加に伴って鎮静剤を使用する患者も増えている.新病院の内視鏡室では,旧病院と比べリカバリールームが拡充されたが,リカバリーベッドは常に稼働している状態である.内視鏡洗浄機も,勤務時間内はフル稼働しており内視鏡技師および看護師の業務負担は増えている.そのため,内視鏡洗浄要員および看護師の増員が急務である.
内視鏡手技の高度化に伴い介助も複雑化しトレーニングが必要になってくる.内視鏡特殊手技には中核スタッフのみ介助についているのが現状である.医療スタッフ全員に介助の技術習得が望まれる.また,内視鏡技師会や研究会に積極的に参加し内視鏡知識を深めることも推奨している.
透視下手技に関しては,院内全体で2台の透視装置を共有で使用しているため,曜日や時間帯による使用制限がある.担当する看護師も内視鏡室と所属が異なるため,内視鏡室と放射線科の両方の予定に配慮しながら1日のスケジュールを立てる必要がある.透視処置用の光源やデバイスの保管場所は内視鏡室にあり,透視下手技を行う際には,その都度内視鏡室から運び入れて設置している.旧病院では階をまたいで移動していたが,新病院では内視鏡室と透視室が同じフロアの隣接する区画になり移動のストレスが軽減された.
平成26年消化器内科設立後,順調に内視鏡件数は増加し内視鏡特殊手技(ESD,FNA)も安定した成績を収めている.
今後,さらなる高レベルの内視鏡検査・手技に取り組み患者様により良い医療を提供し,医療スタッフ,研修医の教育も充実させたいと考えている.