2018 年 60 巻 10 号 p. 2342-2344
当院は1965年(昭和40年)4月に認可病床数80として大阪府高槻市に開設され,2006年(平成18年)5月に新築移転となった.現在は217床の急性期総合病院として,地域医療支援病院,大阪府がん診療拠点病院,基幹型臨床研修指定病院の認可を受け,三島圏域の地域医療に貢献している.特にがん診療においては,がん診療推進室を設置し,化学療法センター,がん相談支援センターとともに,がんの診断・治療,早期からの緩和ケア,がん患者および家族に対する積極的なサポートの体制を敷いている.
消化器内科は当院の中心的な診療科として位置付けられ,2016年度(平成28年度)の新入院数は6,108人であり,全診療科の31.1%を占める.消化器内視鏡検査は内視鏡センターにおいて施行され,夜間・休日の緊急内視鏡検査にも対応している.
組織組織上,内視鏡センターとして独立しており,現在,センター長は消化器内科医長が兼任している.消化器内視鏡検査・治療は消化器内科の医師が中心となって施行している.内視鏡センターの看護師は外来所属の位置付けである.
検査室レイアウト
内視鏡センターは病院の2階に位置しており,3部屋の内視鏡検査室と1部屋の内視鏡X線TV室,洗浄室,トイレ,更衣室などがある.すべての内視鏡検査室では内視鏡検査のDVD録画が可能であり,各検査室の内視鏡画像は内視鏡センター内のカンファレンス室で常時モニターしている.内視鏡X線透視室では,消化管X線造影検査の他,ERCP・PTCD・PTGBD,シングルバルーン小腸内視鏡検査,経鼻内視鏡を用いたイレウス管挿入,CVポート留置などを行っている.
内視鏡検査所見と病理所見報告についてはダブルチェックの体制をとっている.特に病理所見報告に関しては,院内のアラートシステムを構築して運用しており,病理陽性所見における結果説明の失念がないよう管理している.カプセル内視鏡検査の読影に関しては,大阪医科大学第2内科による読影支援ネットワークにより,専門医による2次読影がなされている.
(2018年4月現在)
医 師:指導医3名,専門医2名,その他スタッフ6名,研修医など1名
内視鏡技師:Ⅰ種3名,Ⅱ種1名,その他技師5名(臨床工学技士)
看 護 師:常勤5名,非常勤2名
(2018年4月現在)
(2016年4月~2017年3月まで)
当院の指導体制は,日本消化器内視鏡学会指導医・専門医により,下記のような計画のもと,消化器内視鏡検査の研修に関して教育,指導を行っている.
1)上部消化管内視鏡検査・ERCP
内視鏡初学者の教育に際しては,最初は内視鏡機器の取り扱いと観察のみとし,その後,挿入のトレーニングを中心として,観察・撮影,生検の順で許可するようにしている.EMR,ESD,EIS,EVL,ERCP(EST)などの内視鏡治療については,指導医・専門医の指導のもとで治療手技を行うこととしている.
2)下部消化管内視鏡検査
大腸内視鏡検査の初学者に対しては,まずは書籍・DVDなどを用いて挿入理論・観察方法を勉強してもらい,その後,引き抜き時の観察,S状結腸までの挿入と段階的に研修して習得している.ポリペクトミーやEMRなどの内視鏡治療については,上部消化管内視鏡検査と同様に,見学の後に介助を担当し,一定の症例数を経験して指導医が認めた者については,指導医・専門医の指導のもとで治療手技を行うこととしている.
3)カプセル内視鏡検査・小腸内視鏡検査
カプセル内視鏡検査については,機器の取り扱いを学んだ後に,書籍などを参考にしながら,読影を上級医とともに担当する.小腸内視鏡(シングルバルーン内視鏡)検査は,上級医とともに挿入し,治療手技の介助を行う.
研修医・専攻医が担当する消化器内視鏡検査・治療については,1例1例を大事に勉強する習慣を指導しており,特に病理組織との対比を重視している.生検組織,内視鏡切除標本,手術切除標本の病理組織を自らルーペ像と顕微鏡で確認することは,自身の内視鏡技術の向上に必須であると考えている.また,週1回の消化器カンファレンスでは,画像所見を含めた症例呈示の修練を積んでいる.教訓的な症例を経験した際には,積極的に研究会,学会発表を行うよう指導している.
当院の内視鏡センターの問題点としては,スペースが狭いことが挙げられる.3部屋の内視鏡室は,処置のために複数人が検査に携わったり,ストレッチャーのまま検査を施行したりする場合には手狭になってしまう.また,各内視鏡室の検査状況をモニタリングし,内視鏡所見を記載し,検査後に施行医に指導を行う場であるカンファレンス室も現在の広さは十分ではない.そして何より,リカバリーコーナーや前処置室が設置されていないのが大きな問題点である.苦痛のない検査を提供するために鎮静剤が広く使用されているが,当院では1階の処置室を間借りして,リカバリールームとしているのが現状である.動線の問題のほか,外来の点滴患者が多いときには,内視鏡検査後の休憩場所の確保ができないこともしばしばである.また,当センターには前処置室がないため,下部消化管内視鏡検査前の腸管洗浄剤は自宅で内服してもらっている.公共交通機関を利用して来院される大腸検査の患者には,かなりの負担を強いている状況である.
今年度から当院の所在する高槻市の胃内視鏡検診が始まり,当院もその一翼を担うこととなっている.公的な事業であり,その検診精度の管理にも十分配慮する必要がある.当院消化器内科の専門医の資格を有する医師3名がダブルチェックによる精度管理を含めて内視鏡検診をすすめる方針である.また,当院には消化器内科の専攻医のほか,他の内科の専攻医,研修医も消化器内科をローテートする際に内視鏡センターで研修する機会も多い.研修される先生に対しては,安全面に十分配慮しながら内視鏡検査を指導するとともに,消化器内視鏡検査の魅力を伝えていきたいと考えている.