日本消化器内視鏡学会雑誌
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頸部食道に発生した全周性異所性胃粘膜の1例
飯田 文世 清水 啓智吉田 功
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2018 年 60 巻 3 号 p. 251-252

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【症例】

患者:73歳,男性.

主訴:咽頭違和感.

現病歴:以前から喉の引っかかるような違和感を時折自覚していた.2016年の胃X線検査で食道の辺縁不整所見を指摘され,当科で上部消化管内視鏡検査を施行した.

内視鏡所見と経過:切歯列より約17-22cmの食道に淡発赤調かつビロード状の平坦な粘膜を全周性に認めた(Figure 12).同部のNarrow Band Imaging(NBI)併用拡大観察では胃粘膜と同様の腺上皮模様を認め(Figure 3),頸部食道異所性胃粘膜(Ectopic Gastric Mucosa:EGM)と考えられた.生検にて胃底腺を伴った円柱上皮と重層扁平上皮が隣接しており(Figure 4),EGMと確定診断された.

Figure 1 

上部消化管内視鏡検査:異所性胃粘膜の上縁付近.

Figure 2 

上部消化管内視鏡検査:異所性胃粘膜の下縁付近.

Figure 3 

異所性胃粘膜下縁寄りの拡大NBI像:胃粘膜同様の腺上皮模様を認める.

Figure 4 

生検病理組織検査 HE×40:胃底腺を伴った円柱上皮粘膜と重層扁平上皮粘膜が隣接している.

【考察】

食道EGMは胎生期に円柱上皮に覆われていた食道粘膜が中部食道から上下方向に扁平上皮に置換されていく際に何らかの障害により取り残されたものと考えられている.頻度は2~14%とされ ,主に頸部食道に認められる.肉眼的には白色の縁取りを伴った類円~楕円形の境界明瞭な発赤面を呈し,NBI併用拡大観察で胃粘膜と同様の腺上皮模様を認める事からも診断は比較的容易である.左右対に複数のEGMを認める事もあるが,本例のように全周に及ぶ事は稀である.医学中央雑誌(医中誌)で「食道」「異所性胃粘膜」「全周性」をkeywordとして1971年から2017年9月までを文献検索したところ,2例の報告 ),を認めるのみであった.

食道EGMは無症状の事が多いが,6.0~31.8%程度の頻度で ),咽頭違和感や嚥下痛等の原因になる事がある他,潰瘍,狭窄,腺癌等を合併する事もある.こうした合併症の頻度は稀で,同期間で「食道」「異所性胃粘膜」「潰瘍」もしくは「狭窄」で医中誌を検索したところ,潰瘍は4例 )~,良性狭窄は1例 の報告を認めるのみであった.正常EGMは病理学的には主細胞や壁細胞から構成され正常胃底腺と類似する事が多い 10.その酸分泌が慢性炎症や潰瘍形成に寄与し,更にその治癒過程で時に狭窄が形成されると考えられている 11.Von Rahden BHらはEGMの治療方針について,嚥下痛等のある症候性EGMについては症状改善に制酸剤の内服を要し,更に狭窄等の形態変化を合併したEGMについては拡張術等の内視鏡的治療を要する場合もあるとしている 11.本邦でも食道EGMによる咽頭違和感等の症状改善にProton pump inhibitorの内服が有効であったとの報告 ),を認めた他,海外では狭窄を伴った食道EGMに内視鏡的拡張術を行った報告 12),13も散見された.

EGMのサイズが大きいほど自覚症状や合併症を来しやすいとの見解もあり 11,全周性EGMである本例においても今後合併症の可能性を念頭におき,慎重に経過観察していく必要がある.本人の希望もあり現在は無治療経過観察中であるが,必要に応じて制酸剤の内服加療も検討する予定である.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

文 献
 
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