日本消化器内視鏡学会雑誌
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60 巻, 3 号
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総説
  • 土屋 貴愛, 殿塚 亮祐, 向井 俊太郎, 糸井 隆夫
    2018 年 60 巻 3 号 p. 203-214
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/20
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    Lumen apposing metal stent(LAMS)は,離れた2つの管腔を2つの大きな張り出し(flange)でしっかりと把持し,引き寄せ瘻孔を形成するためのfull-covered typeの金属ステントであり様々な内視鏡治療に用いられている.LAMSはWONに代表されるような膵周囲液体貯留の超音波内視鏡下経消化管的ドレナージ術の有用性,安全性が数多く報告されており,大口径であるためステント内腔に上部消化管内視鏡を挿入することが可能であり,WONに対するネクロセクトミーにも威力を発揮する.さらに,超音波内視鏡下胆管十二指腸吻合術,超音波内視鏡下胆嚢ドレナージ術に対しても用いられ,胆嚢ドレナージ後に胆石を除去したという治療法の報告も散見される.また,新たな試みとして悪性胃十二指腸狭窄に対する治療として,LAMSを用いた超音波内視鏡下胃空腸吻合術も近年開発された.長期予後やコストなど,今後の検討が必要な課題もあるが,新規治療の可能性を秘めたデバイスであると言える.

症例
  • 山崎 健路, 山下 晃司, 九嶋 亮治, 岩田 仁, 中西 孝之, 永野 淳二, 安藤 暢洋, 杉原 潤一, 清水 雅仁
    2018 年 60 巻 3 号 p. 215-222
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/20
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    症例は65歳,男性.糖尿病性腎症による慢性腎不全のため他院で維持透析を行っていた.2016年8月黒色便を認め,上部消化管出血の疑いにて当院紹介.上部消化管内視鏡検査にて胃前庭部から湧出性出血と胃全体に白色の微細顆粒所見を認めた.アルゴンレーザーによる止血術を行い止血し得た.炭酸ランタンを長期服用しており,生検にてランタン沈着症と診断した.ランタン沈着は腸上皮化生を背景とする粘膜に比較的多く認められた.出血症状を呈する胃ランタン沈着症の報告はまれで,炭酸ランタンを投与する際に注意を要する.胃ランタン沈着症の長期的な影響はわかっておらず,多数例での検討が必要である.

  • 中内 脩介, 田中 秀憲, 髙田 良平, 池田 敦史, 堂垣 美樹, 菅 もも子, 畑中 宏史, 脇 信也, 中村 晃, 木崎 智彦
    2018 年 60 巻 3 号 p. 223-229
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/20
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    症例は40歳,男性.前医で上部消化管内視鏡(esophagogastroduodenoscopy;EGD)にて前庭部小彎に10mm大の隆起性病変(0-Ⅱa)を認め,精査目的で当院受診となった.背景胃粘膜に萎縮性変化は認めず,同病変に対して内視鏡的粘膜下層剥離術(Endoscopic submucosal dissection:ESD)を施行した.病理組織学的には高分化型管状腺癌(粘膜内癌)であり,免疫組織化学染色ではCDX2とCD10が陽性,MUC5ACとMUC6が陰性で腸型形質を発現していた.周囲の胃粘膜において鏡検法でHelicobacter pyloriHP)は認めず,血清HP抗体と尿素呼気試験は陰性であり,HP除菌歴もなかった.本症例はHP未感染の患者に発生した腸型形質を有する胃癌であり,比較的まれなため報告する.

  • 安田 剛士, 片山 政伸, 江口 大樹, 竹田 善哉, 伏木 邦博, 小野澤 由里子, 田中 基夫, 重松 忠
    2018 年 60 巻 3 号 p. 230-236
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/20
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    症例は46歳男性.就寝中に突然腹痛が生じ,当院へ救急搬入された.来院後に出血性ショックに陥り,造影CTから正中弓状靱帯圧迫症候群(以下MALS)およびそれに合併した後上膵十二指腸動脈瘤破裂と診断した.緊急でTAEを行い止血を得たが,後日遅発性十二指腸狭窄が生じた.胃空腸吻合術なども考慮されたが,経腸栄養とTPNを併用して保存的に経過を追い,第45病日に退院した.一般的に膵十二指腸動脈瘤破裂後の十二指腸狭窄の原因としては,血腫による圧迫や塞栓術による血流障害,血腫からの炎症の波及が考えられている.今回,TAE後に十二指腸狭窄を来したものの,適切な栄養管理下に保存的治療により手術を回避し得た症例を経験したため報告する.

  • 倉岡 紗樹子, 高橋 索真, 豊澤 惇希, 石田 正也, 香川 朋, 榊原 一郎, 泉川 孝一, 石川 茂直, 和唐 正樹, 稲葉 知己
    2018 年 60 巻 3 号 p. 237-242
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/20
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    電子付録

    症例は87歳の女性.大腸内視鏡検査にて潰瘍性大腸炎が疑われ,プレドニゾロン40mg/dayの投与が開始され,1週間後より大量の暗赤色便を繰り返すようになった.上部消化管内視鏡検査にて,胃十二指腸粘膜は粗造で浮腫状,広範囲に白苔を伴い,極めて易出血性であった.胃十二指腸からの生検病理組織にて多数の線虫様虫体を認め,便検査にて多量の糞線虫を確認し,糞線虫症と診断した.イベルメクチン9mg/dayの2週間連日投与を行い,全身状態は改善を認めた.免疫抑制療法に伴う消化管出血では,腸管寄生虫症は留意されるべき病態と考える.特に,広範囲の粘膜表層に炎症を認めた場合は,粘膜生検が寄生虫疾患の診断に有用である.

経験
  • 楠本 聖典, 中井 喜貴, 日下 利広, 寺村 茉利, 中村 武晴, 大岩 容子, 糸川 芳男, 國立 裕之, 勝島 慎二
    2018 年 60 巻 3 号 p. 243-250
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/20
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    【目的】トレーニー施行のERCにおけるPEP発症危険因子と胆管挿管容認時間について検討した.【対象・方法】胆管挿管を目的としたnative papilla 157例を対象に,胆管挿管成功群(S群)114例と不成功群(F群)43例の2群比較で挿管困難な因子を後方視的に検討し,PEPの危険因子について解析したうえでトレーニーへの胆管挿管許容時間について検討した.【結果】挿管困難な因子は10mm以上の口側隆起で,PEPの危険因子は,トレーニーの挿管時間と10mm未満の口側隆起,メタリックステント留置例であった.挿管許容時間の検討では,PEP発症におけるトレーニーの挿管時間を予測因子としたROC曲線から11分が妥当と考えられた.【結語】挿管時間の延長はPEPの危険因子であり,トレーニーへの許容時間は11分を上限とするのが妥当と考えられた.

注目の画像
手技の解説
  • 横田 智行, 武智 俊治, 上甲 康二
    2018 年 60 巻 3 号 p. 253-259
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/20
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    急性胆嚢炎に対するドレナージの第一選択は経皮的処置であるが,抗凝固剤内服中や腹水の存在,全身状態不良などの理由により経皮処置が困難な場合には経乳頭的ドレナージが検討される.その難易度は胆嚢管の分岐形態によって異なるものの,成功率は未だ低いと言わざるを得ない.しかしながら今後挿入手技の工夫や処置具の使い分けによって成功率をあげられる可能性がある.経乳頭的ドレナージは一度挿入できればその後の経過は良好でありステント交換も比較的容易に行えることから,症例を選べば今後治療選択肢の一つとなり得る.

  • 花田 敬士
    2018 年 60 巻 3 号 p. 260-269
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/20
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    従来から,内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)を用いた経乳頭的膵管・胆道生検および膵液・胆汁細胞診は,膵・胆道系疾患の鑑別診断において重要な役割を果たしており,特に胆膵を専門とする内視鏡医が習得すべき検査法の一つである.しかし,検査後に膵炎,胆管炎,出血などの重篤な合併症が稀ながら発生する可能性があり,正診率が高くないという問題がある.

    胆道アプローチに関しては,内視鏡的経鼻胆道ドレナージ(ENBD)の留置後に行う複数回の胆汁細胞診に加え,胆道狭窄部に対するブラシによる擦過,新たな胆管用デバイスや画質が大幅に向上した経口胆道鏡(POCS)を用いた胆管生検などの併用で,正診率の向上がみられる.

    膵(臓)アプローチに関しては,膵管生検のみの正診率は低率とされ,腫瘤性病変に対しては次第に超音波内視鏡ガイド下穿刺吸引法(EUS-FNA)に組織診の主流は移行しつつある.一方,膵管狭窄例に対しては,ガイドワイヤーやブラシを用いた擦過細胞診が正診率の向上に有用とされている.近年では,膵癌の早期診断を目的とした,内視鏡的経鼻膵管ドレナージ(ENPD)の留置後に行う複数回の膵液細胞診(SPACE)の有用性が報告されている.本稿では実際の手技を中心に概説する.

資料
  • 小倉 健, 恩田 紗織里, 佐野 志達, 都木 航, 奥田 篤, 宮野 亮, 西岡 伸, 今西 みゆき, 天野 美緒, 増田 大介, 樋口 ...
    2018 年 60 巻 3 号 p. 270-276
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/20
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    電子付録

    【背景・目的】内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査(ERCP)下ラジオ波焼却術(RFA)の有用性が報告されているが,重篤な偶発症もまた報告されている.腫瘍が胆管内に露出していない場合,穿孔や出血といった重篤な偶発症が生じうる.また,胆管造影所見のみでは,真のRFA効果が得られているかは不明である.本研究では,RFA前後に経口胆道内視鏡(POCS)を行うことでRFAの真の安全性と有効性を検証することを目的とした.

    【方法】対象は,2016年7月から9月までで,悪性胆道閉塞に対しRFAを行い,POCSにて評価を行った症例.主要評価項目は手技成功率,副次評価項目は偶発症の頻度・種類とした.

    【結果】計12例の症例が集積された.うち6例でRFA前にUncovered self-expandable metal stent(SEMS)が留置されていた.全例で胆管内への腫瘍の浸潤がPOCS所見上確認され,RFA施行可能であった.Zウェン例で臨床的有効が得られた.偶発症は胆管炎を1例に認めた.ステント開存期間中央値は154日であった.

    【結論】さらなる症例の蓄積,前向き試験による検証が必要ではあるが,悪性胆道閉塞に対するERCP下RFAは安全に施行可能であった.

内視鏡室の紹介
最新文献紹介
  • 小野 尚子
    2018 年 60 巻 3 号 p. 281
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/20
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    【背景】シミュレーショントレーニング(以下SBT)を使用する包括的カリキュラム(以下SCC)は,大腸内視鏡検査(以下CS)の臨床パフォーマンスを向上させる.学習者の技術向上に応じた漸進的な学習はこのカリキュラムをさらに強化するかもしれません.われわれは,漸進的な学習を基本としたカリキュラム(以下PLC)がSCCと比較して優れた臨床パフォーマンスにつながるかどうかを判断することを目的とした.

    【方法】これは大学病院で実施された単施設一重盲検無作為化比較試験である.37人の内視鏡初心者(上部内視鏡,下部内視鏡経験が20例未満の医師)を,PLC群(n=18)またはSCC群(n=19)のいずれかにランダムに振り分けた.PLCは6時間のSBTで構成され,徐々に難易度があがるカリキュラムである.SCCの6時間のSBTは,難易度の順番はランダムであった.どちらのグループも専門家のフィードバックと4時間の講義を受けた.主要評価項目は最初の2例における臨床CSのJAG DOPS(Joint Advisory Group Direct Observation of Procedural Skills)スコアである.副次的評価は,内視鏡知識,シミュレーターでの技術およびコミュニケーションスキル,パフォーマンスの違いであり,開始前,トレーニング直後,およびトレーニング後4~6週間の3回評価された.

    【結果】1例目2例目ともにCSにおけるJAG DOPSスコアは,PLC群はSCC群よりスコアが高かった(P<0.001).加えて,PLC群は,シミュレーターCSでも,トレーニング直後および4-6週後の評価で技術,コミュニケーションスキルとグローバルパフォーマンスは優れていた(P<0.05).内視鏡的知識に差はなかった.

    【結論】SCCと比較して,PLCの優位性を実証した.CS初学者では単純で理論に基づいたシミュレーションへのアプローチがCSのパフォーマンスを改善することができる.

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