日本消化器内視鏡学会雑誌
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内視鏡室の紹介
新潟県立がんセンター新潟病院
責任者:成澤林太郎  〒951-8566 新潟県新潟市中央区川岸町2丁目15番地3
塩路 和彦
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2018 年 60 巻 3 号 p. 277-280

詳細

概要

沿革・特徴など

当院は昭和25年(1950年)5月に県立新潟病院として開院したのち,昭和36年(1961年)1月全国に先駆けてがん診療と研究の総合センターとして県立ガンセンター新潟病院が新発足した.昭和62年(1987年)5月には改築移転に伴い名称は県立がんセンター新潟病院と改められた.平成10年(1998年)には新潟県のがん予防対策の拠点として,がん予防総合センターが隣地に開設された.平成14年(2002年)には地域がん診療拠点病院,平成19年(2007年)には都道府県がん診療連携拠点病院に指定され,がん診療において中心的な機能を担う急性期型総合病院として現在23科,450床で運営されている.

当院の内視鏡室は当初,内科の検査室として発足し,昭和48年(1973年)に内視鏡テレビ室が完成してから中央化がなされ,昭和62年(1987年)に改築移転してからは機構上も中央放射線部と同様に中央内視鏡部として独立している.平成10年(1998年)にがん予防総合センターが開設されると,同センターの2Fに移転.気管支鏡検査など一部の検査は本院の内視鏡室で行っているが,消化器系の検査・治療のほとんどをがん予防総合センターで行っている.

組織

組織上は中央内視鏡部として独立しているが,専任の医師はおらず,検査・治療は消化器内科および消化器外科の医師が担当している.看護師はがん予防総合センターの所属となっている.

検査室レイアウト

 

 

 

当内視鏡室の特徴

内視鏡室は平成10年(1998年)に完成したがん予防総合センターの2Fにあり,内視鏡部門の総床面積は295.3m2である.検査室は7部屋,リカバリーベッドが6床,トイレが6室,男女更衣室,待合室,受付が配置されている.

検査室1から検査室3では午前中に上部消化管,EVL,食道バルーンブジーなどが行われ,午後はESDが検査室1と検査室3で並行して行われる.吐血や異物除去といった緊急内視鏡は主に検査室1で対応している.

検査室4は現在実際の診療には使用しておらず,上部消化管モデルや大腸モデルが設置されており,トレーニングルームとして用いられている.

検査室5,検査室6では午後を中心に大腸内視鏡検査が行われている.

検査室7は透視室であり,大腸内視鏡検査およびERCP,EUSといった胆膵内視鏡検査,イレウス管挿入や小腸内視鏡検査などが行われている.

検査室1および検査室7は内視鏡画像の動画記録に対応しており,検査室7では透視画像の動画も記録できるようになっている.

各検査室はバックヤードで行き来できるが,個室化されておりプライバシーが保たれるようになっている.また,すべての検査室で電子カルテと内視鏡画像ファイリングシステム(Solemio ENDO)が使用できるようになっており,内視鏡前に前回所見の確認やCT,血液検査の確認が可能で,検査終了後には速やかに所見入力が可能である.電子カルテとSolemio ENDOの連携により病理オーダーもSolemio ENDOからできるようになっており,新たに病理依頼書を入力する必要はなく,病理結果もSolemio ENDOから確認できる.また,電子カルテから内視鏡所見や内視鏡画像の確認も可能となっている.

内視鏡室の隣にはカンファレンスルームがあり,毎週火曜日に消化器内科スタッフ全員が参加し,内視鏡カンファレンスを開いている.また,手術症例については肝胆膵グループや大腸グループに分かれて術前検討,術後検討を行っている.

スタッフ

(2017年8月現在)

医   師:指導医4名,専門医2名,その他16名(外科医師11名,非常勤2名含む)

内視鏡技師:Ⅰ種4名

看 護 師:6名

事 務 職:受付クラーク1名

そ の 他:洗浄員3名

設備・備品

(2017年8月現在)

 

 

実績

(2016年1月1日~2016年12月31日まで)

 

 

指導体制,指導方針

当院は新潟大学の研修協力病院として,卒後2年までの初期研修医が年間1名から3名配属される.当院研修期間のうち消化器内科の研修期間は1.5カ月から2カ月ほどであり,この期間に内視鏡研修が行われる.

内視鏡研修中は上級医についてまずは手技の観察から開始し,トレーニングモデルでの内視鏡操作に慣れた後,実際の症例で引抜きでの観察,反転観察,内視鏡挿入と段階をおって指導している.目標は上部消化管のルーチン観察であるが,研修期間が短いこともあり,内視鏡挿入に至らないことも多い.しかし,内視鏡検査および消化器疾患に興味をもつきっかけとなることを期待し,なるべく多くの症例を経験できるように取り組んでいる.

消化器内科に後期研修医はいないが,スタッフの1名は新潟大学からの1年間の出張医で,毎年交替がある.卒後6年目から8年目の医師が多く,上部・下部内視鏡はできるが大学院生または大学院修了直後のため少し臨床からは離れた状態での出張となっている.そのため上部・下部内視鏡検査のブラッシュアップと共に,ERCPやESDといった治療手技の習得を目標としている.最初は上級医の介助から開始するが,なるべく多くの症例を経験することで,1年間でESD適応病変の完遂,緊急ドレナージを目的としたENBD,EBSの留置,止血術ができることを目標としている.

経験した1例1例を大切にすることを重要視しており,生検した症例は必ず結果を確認し,手術が行われた症例では手術結果を確認することで,術前診断との比較検討をしている.その中で興味深い症例について,初期研修医は1回,出張医は2回以上学会や研究会で発表し,症例をまとめるよう指導している.

現状の問題点と今後

がん予防総合センターは主に検診施設からの二次検診に対応する施設として開設されたことや,開設当時は現在の様に鎮静下の治療内視鏡はほとんど行われていなかったこともあり,各検査室に十分なスペースが確保されておらず入口も狭い.そのため,通常のルーチン検査では問題ないが,治療内視鏡で医師,看護師とも複数で行う手技では狭く感じることがあり,緊急内視鏡時にストレッチャーで移送せざるを得ない場合などでは入室に苦労することも多い.特に透視室は狭く,処置具を置くスペースも限られているため,頻用する処置具以外は透視室の外に収納している.近年ERCPだけでなくイレウス管挿入や小腸内視鏡,消化管ステント留置など透視を必要とする検査が増加しており,狭いスペースをできるだけ有効に利用し,増加する症例に対応できるように工夫している.

内視鏡スコープなどの設備はリース契約となっていないため,年度ごとに優先順位をつけて購入申請しているが,必ずしも希望通りの内容で購入できるわけではないため,一世代前のスコープも頻用しているのが現状である.当院はがん診療を中心とした総合病院であるため,炎症性腸疾患に対し小腸の観察が必要となることは少ないが,転移性の小腸腫瘍やGVHDなどで小腸の観察が必要となることもある.また,外科手術が多いため,術後再建腸管症例に対するERCP関連手技も増加している.そのためバルーン内視鏡を使う頻度が増えているが,現時点では常備されていないため緊急時には対応できていない.2014年からEUS-FNAを導入し,病理部の協力により迅速細胞診(ROSE)も行っているが,件数の増加によりスコープの洗浄が間に合わず,全体の検査時間の延長にもつながっている.

2017年4月より指導医が1名増加し,ようやく大腸ESDも施行可能となった.それにともないESDの治療枠を増やしたことで件数も増加している.スペースや設備に問題点もあるが,今後も最新の診断・治療を積極的に導入し,新潟地域のがん診療の中心的役割を担うべく,高度な内視鏡診療を提供できるよう努力していきたい.

 
© 2018 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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