日本消化器内視鏡学会雑誌
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内視鏡シミュレーショントレーニングにおける漸進的な学習は,臨床パフォーマンスを改善する,盲検無作為化試験
小野 尚子
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2018 年 60 巻 3 号 p. 281

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抄録

【背景】シミュレーショントレーニング(以下SBT)を使用する包括的カリキュラム(以下SCC)は,大腸内視鏡検査(以下CS)の臨床パフォーマンスを向上させる.学習者の技術向上に応じた漸進的な学習はこのカリキュラムをさらに強化するかもしれません.われわれは,漸進的な学習を基本としたカリキュラム(以下PLC)がSCCと比較して優れた臨床パフォーマンスにつながるかどうかを判断することを目的とした.

【方法】これは大学病院で実施された単施設一重盲検無作為化比較試験である.37人の内視鏡初心者(上部内視鏡,下部内視鏡経験が20例未満の医師)を,PLC群(n=18)またはSCC群(n=19)のいずれかにランダムに振り分けた.PLCは6時間のSBTで構成され,徐々に難易度があがるカリキュラムである.SCCの6時間のSBTは,難易度の順番はランダムであった.どちらのグループも専門家のフィードバックと4時間の講義を受けた.主要評価項目は最初の2例における臨床CSのJAG DOPS(Joint Advisory Group Direct Observation of Procedural Skills)スコアである.副次的評価は,内視鏡知識,シミュレーターでの技術およびコミュニケーションスキル,パフォーマンスの違いであり,開始前,トレーニング直後,およびトレーニング後4~6週間の3回評価された.

【結果】1例目2例目ともにCSにおけるJAG DOPSスコアは,PLC群はSCC群よりスコアが高かった(P<0.001).加えて,PLC群は,シミュレーターCSでも,トレーニング直後および4-6週後の評価で技術,コミュニケーションスキルとグローバルパフォーマンスは優れていた(P<0.05).内視鏡的知識に差はなかった.

【結論】SCCと比較して,PLCの優位性を実証した.CS初学者では単純で理論に基づいたシミュレーションへのアプローチがCSのパフォーマンスを改善することができる.

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© 2018 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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