日本消化器内視鏡学会雑誌
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新しい手技・処置具・機器
生検バルブを用いた内視鏡送水チューブ保持の工夫
原田 直彦 井星 陽一郎三島 朋徳
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2018 年 60 巻 7 号 p. 1344-1345

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Ⅰ 背  景

内視鏡検査・処置時には,観察を妨げる粘液・血液を洗浄し良好な視野を確保する必要がある.しかし,多数例を検査する場合には効率よく洗浄することが望まれる.前方送水機能を有したスコープならば洗浄は容易であるが 1,前方送水機能を有さないスコープを使用する場合には,注射シリンジを用いて頻回に送水,洗浄を行う必要があり煩雑である.効率よく洗浄するには内視鏡送水装置が有用である 2.内視鏡送水装置(AF-WP1,フォルテグロウ社製,ウオータープリーズ)は,送水チューブを鉗子チャンネルの生検バルブに差し込み,フットペダルを用い多量の水を送水する機器であり,容易に効率良い洗浄が可能となる.

しかし,鉗子等を鉗子チャンネルに挿入し処置する際には,送水チューブを鉗子チャンネルから外さなければならず,処置終了後に送水チューブを再度使用するためには送水チューブを何らかの方法で保持しておく必要がある.外した送水チューブ先端は汚染されているため,交差感染とならない様に保持しなければならない.処置時に周囲を汚染することなく送水チューブを保持するには,簡便でコストのかからない工夫が必要となる.

Ⅱ 送水チューブ保持の工夫

上記を解決する工夫のために鉗子チャンネルに装着する生検バルブに着目した.送水チューブを生検バルブ継ぎ手部分のループ内に入れることで,周囲を汚染せずに保持することが可能となる(Figure 1).鉗子使用時,送水チューブ再使用時にも送水チューブ先端が鉗子チャンネル近傍にあるので容易に脱着可能となる.物品購入も不要であり普及可能と思われる.われわれは「Valve-hold法」と命名し日常用いている.

Figure 1

図左:送水チューブを生検バルブ継ぎ手部分のループ内に入れた状態.

図右:送水チューブ先端を生検バルブより外し処置具挿入した状態.Valve-hold法により送水チューブが保持されている.

Ⅲ 使用アンケート結果

本工夫を紹介し利用経験のある10施設14名の医師に対し行ったアンケート調査結果を報告する.

問1:「生検時・処置時,鉗子チャンネルに差し込んでいる送水チューブを外す必要がある場合には,送水チューブをどのように保持されていましたか?」(複数回答可)に対し,「ベッド上に置く」7名,「光源装置に引っ掛ける」7名,「看護師が保持する」1名,「スコープとまとめて把持」1名,「その他」1名であった.

問2:「Valve-hold法を実際使用してみて如何でしたか」に対し有用8名,やや有用5名であった.

肯定的意見として「送水チューブを頻回に取り外しする大腸検査で特に有用.チューブ先端を探すストレス軽減」,「デバイスの入れ替えがスムーズになった」,「衛生管理上有用である」等であった.

問題点として「外した状態で送水し水を撒き散らしてしまう」,「装着がやや面倒」,「エクステンションチューブで代用すると折れ曲がり送水不可となる」等であった.

Ⅳ 考  察

前方送水機能を有しないスコープでは,内視鏡送水装置を用い容易に効率良い洗浄が可能となるが,処置等で鉗子チャンネルに鉗子・処置具の挿入を繰り返す際に周囲を汚染することなく,容易に可能とする工夫を紹介した.

アンケート回答から,これまでは周囲を汚染する可能性を有した送水チューブ保持方法が多く用いられていることが明らかとなり,本工夫を用いることにより解決できると思われる.特に大腸内視鏡検査,処置時に有用と思われる.

欠点としては,鉗子チャンネルへの送水チューブを再装着しないままで送水すると周囲に水を撒き散らすことである.これは,周囲を汚染することに繋がるため送水時には必ず再装着を確認する必要がある.再装着の確認を十分に行えない場合は,感染管理の視点からバイオシールド(イリゲーター)(US Endoscopy Group Inc.)等のイリゲーター付き鉗子栓を使用するべきである.

アンケートの中で,生検バルブへの装着が煩雑との意見もあったが,検査中の手袋には潤滑剤が付着しており滑るためと思われる.また,検査中に生検バルブを開けると汚染した腸液が逆流し噴出することもあるので,装着は検査開始前に行うことが勧められる.

生検バルブを用いた本工夫は,機器購入も不要であり,直ちに利用可能な工夫であり普及可能と思われる.

本論文の要旨は第93回日本消化器内視鏡学会総会(2017年5月11日,大阪)で発表した.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

文 献
 
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