2018 年 60 巻 9 号 p. 1621-1624
当院は,1958年11月に青森県厚生農業協同組合連合会経営の三八城病院を買収し市民病院として発足し,1997年9月に現在の田向地区に新築・移転した.1999年には臨床研修病院に指定され全国から多くの研修医を受け入れてきた.2002年に地域医療支援病院,2005年に地域がん診療連携拠点病院として承認・指定を受けるとともに,2000年に日本医療機能評価機構の認定をうけ医療の質の向上に努めている.急患室受診患者数は年間21,330人,救急車搬送4,698件を数え,2009年3月にドクターヘリ,翌年3月にドクターカー運行を開始,現在の年間出動件数は,ドクターヘリ約500件,ドクターカー約1,400件に上り地域の救急医療に寄与している.地域医療の中核病院として機能し,現在一般病床552床,消化器科を含めた32診療科が稼働している.多くの学会から施設認定されているが,当科に関連するものでは内科学会教育病院,消化器病学会認定施設,消化器内視鏡学会指導施設に認定されている.
組織当院の内視鏡室は診療部に属しており消化器科・消化器内視鏡科が管理している.看護スタッフは外来部門の所属であるが,内視鏡室専属で消化器内視鏡のみの業務にあたっている.
検査室レイアウト
内視鏡室の総面積は年間約7,000件の検査件数にしては非常に狭い127.02m2で検査室は2部屋のみである.透視検査ができる部屋に1台の内視鏡システム,もう一方にはカーテンで仕切られた2台の内視鏡システムがあり合計3台の内視鏡システムで検査・治療を行っている.少ない台数で多くの検査をこなす必要があることからそれぞれの検査台では上部消化管・下部消化管内視鏡の区別なく行っている.出張用のシステムが1台あり,急患室・ICUでの緊急内視鏡や手術室での術中内視鏡に使用している.透視を要する検査の増加に伴い2017年から内視鏡室に近い透視室を優先的に使用できるようになった.
以前は耐用年数を超えた内視鏡が多く修理コストがかさみ新規で購入できる数は限られていたが,2009年4月からVPP(value per procedure)契約を結んだことから環境は劇的に改善した.2018年度には富士フイルム社内視鏡システムLASEREOも導入予定である.
当院は1次から3次までの救急に対応しており,それを反映して緊急内視鏡が多く2017年は1,190件だった.また小児内視鏡も年間30件前後と積極的に行っている.鎮静に関しては希望者にのみ主にミダゾラムで行っているが,近年その割合は増加しており2017年は13%となっている.
(2018年3月現在)
医 師:指導医1名,専門医3名,その他医師3名,研修医1名
内視鏡技師:I種4名
看 護 師:常勤8名,事務職1名,その他1名
(2018年3月現在)
(2017年1月~2017年12月まで)
医師,メディカルスタッフを対象に,適切な内視鏡機器を選択し正しく使用するためにその構造・特性を,また感染予防のために洗浄・消毒法を学ぶ「軟性内視鏡講習会」を年1回開催し内視鏡に携わる者には受講を義務付けている.
初期研修に関しては定員18名の研修医は2年間のローテートの中で2~3カ月間消化器科で研修する.内視鏡に関する初期研修ではまず,内視鏡検査の適応や禁忌,合併症などを理解し患者にそれを説明できることが求められる.さらに実際の内視鏡検査の見学や内視鏡治療の介助などを行う.将来内視鏡を扱うことを考えている研修医に対してはまず教育用モデルを用いたスタッフの指導の後,厳重な監視のもと時間制限を定めた上で挿入もしくは引き抜きを経験する.
消化器内科後期研修医(2018年度からは専攻医)に関しては,フィルムレビューでの評価に耐えうる画像が撮影ができるようになるまでは,上級医の監視・指導のもとに内視鏡を行う.通常観察や生検を正確に出来るようになった後,リスクが低い症例を選んで治療内視鏡を行うようになるが,自信をもって出来るようになるまでは上級医が後ろで見守り,またその後も困難があればすぐに応援を求められる体制を敷いている.後期研修医は年間1,500件〜2,200件程度の内視鏡を行うため上達は早く,また本学会専門医を取得するのに十分な経験を積むことが出来ている.実際の手技の習得については,概ね上部消化管内視鏡・下部消化管内視鏡の挿入と通常観察ならびに拡大・画像強調観察から始め,技術の習熟度に応じて夏頃から内視鏡的止血術,大腸EMR,異物除去などの治療や超音波内視鏡を習得する.年末には独りで待機当番ができるレベルになっているが,少しでも困難を感じたら直ちに上級医をコールすることを徹底している.1年目の秋~冬からERCP関連手技,食道静脈瘤治療を行い,2年目の後半からESDを始める.研修中には学会に参加して最新の知識を得ると同時に自らも発表を積極的に行うことを奨励している.また,当院のみならず近隣の医療機関に勤務する医師の内視鏡研修も受け入れている.
内視鏡件数に比してマンパワーと検査室が決定的に不足している.件数は増加の一途を辿り10年前の1.5倍となり,また難度が高く時間が要するものが増えている.少ない台数で多くの検査・治療をこなすために看護師のリーダーが効率よく検査が組まれるように計画しているが,それでも待機期間をできるだけ短くしていることや緊急内視鏡の多さから,検査は連日遅くまでかかり深夜に及ぶことも珍しくない.夜間の内視鏡呼び出し件数も多く2017年は年間で213日,延べ件数398件だった.医師だけではなく看護師も遅番や待機当番を決め24時間の内視鏡に対応するなど,スタッフの熱意と献身的な努力で維持されているが,長時間労働が社会問題化している昨今,早急な対策が必要と考えている.それには自助努力だけでは限界があり地域連携強化,医療圏内の役割再編など近隣の医療機関との協力が不可欠と思われる.
検査室に関しては2台の検査台が薄いカーテン1枚で仕切られているだけであることからプライバシーの点で大きな問題がある.動線の交差が多く患者の入れ替えがスムーズに行えないことから時間のロスが生じていることや,内視鏡室として受付がないこと,トイレ・更衣室の不足,患者に説明するスペースがないことなど設備に関しては課題が多い.
最後に現時点では内視鏡レポートシステムがJEDに対応していないが,これに関しては2020年の導入に向けて目下準備を急いでいる.