日本消化器内視鏡学会雑誌
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原著
右側大腸における内視鏡反転観察追加の効果,2回の前方観察との比較:システマティックレビューとメタアナリシス
馬嶋 健一郎 平田 信人村木 洋介
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2019 年 61 巻 1 号 p. 25-35

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要旨

【背景・目的】右側大腸は,大腸内視鏡による大腸癌死亡抑制効果が左側より乏しいとされ,より注意した観察が必要である.大腸内視鏡検査中に右側大腸で反転観察を追加する事と前方観察を2回行う事の効果を調査する.

【方法】無作為化比較試験を対象に,システマティックレビュー及びメタアナリシスを行った.エビデンスの質の評価をGRADEシステムを用いて行った.

【結果】適格基準を満たす研究は2本のみであった.右側大腸で追加発見された腺腫割合の発見リスク比は0.76(95%信頼区間0.55-1.05, P=0.10)であり,反転群で追加発見が少ない傾向を認めたが有意差はなかった.エビデンスの質は低かった.

【結論】右側大腸反転効果に対するエビデンスは極めて少なく,質も高くない事が判明した.限られたエビデンスからの判断だが,前方観察2回に比べ反転観察追加の優位性は認められなかった.今後さらに研究の蓄積が必要である.

Ⅰ 緒  言

本邦の大腸癌死亡は2015年の統計において死亡数49,699人,癌死亡の中で男性で3位,女性1位を占め,大腸癌死亡を防ぐ事は極めて重要な課題である 1.大腸内視鏡検査によるスクリーニングは大腸癌死亡減少につながる有用な手段のひとつと考えられているが 2)~4,大腸内視鏡の死亡抑制効果は左側大腸より右側大腸の方が少ない事が報告されている 2),3.従って右側大腸ではより注意深い観察を行い,病変の発見に努める必要があり,その方法の一つとして右側大腸の反転観察がある 5.前方視野を用いた前方観察では襞の裏側にある病変が死角に入り認識できない事がある 6.特に,右側大腸は襞が深いため,襞裏にある病変を見逃しやすいと考えられる.反転観察は襞の裏側からの観察が可能となり,前方視野のみの観察より病変発見率が高まる事が期待されその重要性が認識されている 5),7.しかし,一般に右側大腸の観察は前方観察のみだけで行われている事が多いと考えられる 8.右側大腸の反転観察を行うべきかどうかは消化器内視鏡医として非常に興味深い事項であるが,エビデンスに基づいた指針はない.

通常観察に右側大腸反転観察を追加すると病変の発見割合が上乗せできる事はシングルアームの研究で報告されており 9),10,近年のシステマティックレビューでも17%の腺腫発見上乗せ効果が示されている 11.しかし2回の前方観察でも病変発見割合は上乗せされ,腺腫の上乗せ発見効果はHeresbachらは21%,Ahnらは17%と報告している 12),13.通常観察に右側大腸反転観察を追加したシングルアームの研究からは,反転観察追加と2回の前方観察のどちらがより有効であるか判断はできない.このため,右側大腸において再度前方観察を追加した対象群と反転観察を追加した介入群との無作為化比較試験から有効性を判断する必要があるが,この視点で行われたシステマティックレビューは存在しない.

本研究の目的は,大腸内視鏡において右側大腸で通常前方観察にもう一度前方観察を追加した対象群と通常前方観察に反転観察を追加した介入群の無作為化試験についてシステマティックレビューを行い,右側反転の有効性および安全性を調査する事である.

Ⅱ 対象・方法

本システマティックレビューはPRISMA(Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses)声明にそって計画・実施し 14,エビデンスの質についてはGRADE(Grading of Recommendations, Assessment, Development and Evaluation)システムを用いて評価した 15.本研究は実施前にPROSPERO(International prospective register of systematic reviews)にプロトコールの登録を行った(登録番号:CRD42017062538) 16

組込む研究の基準

今回のレビューに組込む研究は,大腸内視鏡検査における右側大腸の観察において,通常前方観察にもう一度前方観察を追加した対象群(以下前方群)と通常前方観察に反転観察を追加した介入群(以下反転群)との無作為化比較試験とした.右側大腸の定義は盲腸から上行結腸もしくは横行結腸までとした.対象参加者は18歳以上で全大腸内視鏡を施行されたものとし,右側大腸の切除をしているものは除いた.

アウトカムの種類

アウトカムは有効性の評価として,その後の大腸癌死亡および大腸癌発生,右側大腸における二回目の追加観察で発見された大腸癌の受診者数に対する発見割合およびadvanced neoplasiaの受診者数に対する発見割合(追加観察で発見された大腸癌数/患者数,追加観察で発見されたadvanced neoplasia数/患者数),全体の観察における腺腫発見割合(一つでも腺腫を認めた患者数/患者数),右側大腸において二回目の追加観察で発見された腺腫の割合およびポリープの割合(追加観察で発見された腺腫数/右側大腸で発見された全腺腫数,追加観察で発見されたポリープ数/右側大腸で発見された全ポリープ数)とした.安全性を評価するため穿孔および出血の発症,受容性を評価するため苦痛度もアウトカムとした.また検査効率の評価として右側大腸における追加観察の引き抜き時間をアウトカムとした.

研究の検索,データ収集,エビデンスの評価

MEDLINE(PubMed),the Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL),Embase,ICTRP(International Clinical Trials Registry Platform),医学中央雑誌を用いて2017年5月~6月に検索を行った.データベースの検索式はTable 1に示した.検索において発表年数,発表形態よる制限はせずアブストラクトやレターなども含めた.また組み入れ研究の被引用検索や引用文献リストも参照した.出版状態や言語は問わなかった.データベース検索は二人のレビュアーが,独立してタイトルや抄録を用いて文献を選択し,二人が選択したものをフルテキスト評価の対象とし,レビューに組み入れるかどうかを判断した.二人のレビュアー間での不一致については議論して解決した.組み入れた研究論文からデータを収集する作業は,準備しておいたデータ収集シートに二人のレビュアーが独立して入力を行った.データ収集シートの項目は発表年,タイトル,著者,言語,国,事前研究登録の有無,研究タイプ・対象者・介入・コントロールの組込み基準への適合,対象人数,性別・年齢の分布,スコープ径(通常・細径)での検査数,反転成功率,前述の各アウトカム報告の有無,各アウトカムの結果,各アウトカムのリスクオブバイアスを含めた.二人のレビュアー間での不一致については議論して解決した.必要な項目において論文記載がない場合は,電子メールで著者への問い合わせを行った.

Table 1 

データベース検索式.

各研究のアウトカムごとにおけるエビデンスの評価については,バイアスリスクについてCochrane Risk of Bias Tool 1.0を用いて二人のレビュアーが独立して評価した 17.レビュアー間での不一致については議論して解決し,決定が難しい場合は三人目のレビュアーと協議して解決した.

解析と評価

有効性の評価についてメタアナリシスを行う予定とし,相対リスクと95%信頼区間を算出した.メタアナリシスはReview Manager software (RevMan 5.3)を用いて実施し,ランダム効果モデルを用いた.異質性の評価はフォレストプロットを用いての目視で評価,Ⅰ2値およびCochrane Chi2 test(Q-test)を用いて評価した.Ⅰ2値は50%以上を中等度の異質性があると評価し,P値<0.10を統計学的有意とした.異質性がある場合のサブグループ解析や堅牢性確認のため感度分析を各種予定した 16.有害事象についてはメタアナリシスはせずまとめる方針とした.出版バイアスについては,臨床試験登録サイト(ICTRP)を検索して,完了しているにも関わらず出版されていない研究を検索した.統合した各アウトカムごとにおけるエビデンスの質の評価をGDADEシステムで推奨された方法にのっとり,バイアスのリスク,非一貫性,非直接性,不精確さ,出版バイアスについて評価した 15.評価のまとめとしてアウトカムごとにSummary of findingsテーブルを作成した.

Ⅲ 結  果

研究の検索結果

検索結果の流れをFigure 1に示す.データベース検査において1,071件の研究が検索された.これから重複した報告をのぞいて977件となった.題名やアブストラクトによる評価で該当する研究ではない967件が除外され,フルテキスト評価を10件の研究に行い,適格対象となった研究は3件であった.このうち一本 18は研究中,公表前のもので除外となり,最終的に抽出されたのは2研究のみとなった 19),20.言語の制限により除外された研究はなかった.含まれた2研究において解析対象者は合計で948名含まれていた.抽出された2研究の概要をTable 2に示す.この2研究において右側大腸の定義は脾彎 19,肝彎 20までと異なっていた.また,追加観察を行った内視鏡医がエキスパート1名 19と各種の経験者10名 20という違いがあった.不足した情報について行った著者への問い合わせは返信なく情報をえる事ができなかった.

Figure 1 

論文検索のフロー図.

Table 2 

抽出された研究の概要.

各研究において調査されたアウトカム

両文献で報告されているアウトカムについてTable 3にまとめた.その後の大腸癌死亡および大腸癌発生について調査されている研究はなかった.大腸癌については,両研究の追加観察においては前方群,反転群ともに発見されていなかった.追加観察におけるAdvanced neoplasiaの発見割合,全体の観察における腺腫発見割合はKushnirらの報告 20には記載されていたが,他方の文献には記載されていなかった.追加観察における10mm以上の腺腫発見数については両文献ともに記載がみられたのでAdvanced neoplasiaの発見割合に代用する事とした.追加発見された腺腫の割合についてはKushnirらの報告には直接記載がなかったが,計算して算出する事が可能であった.苦痛度を調査している研究はなかった.追加観察の引き抜き時間は両文献で記載されていたが,純粋な観察時間だけでなくポリープ切除時間も含まれていると考えられた.

Table 3 

各研究のアウトカム.

バイアスの評価

各論文において調査報告されたアウトカムごとのバイアスリスクをTable 4に示した.2本の研究ともにすべてのアウトカムについてランダム化生成と割り付けの隠蔽化が不明であり,内視鏡施行医に対しては盲検化ができないバイアスを認めた.

Table 4 

各研究アウトカムごとのリスクオブバイアス評価.

アウトカムについての評価・エビデンスの評価

追加観察で発見された大腸癌については前方群,反転群ともにゼロであった.よってメタアナリシスも行わなかった.右側大腸における追加観察において発見された10mm以上の腺腫の受診者数に対する割合(10mm以上の腺腫数/患者数)については,Kushnirらの報告で両群とも5例発見されており,Harrisonらの報告 19では病変は認めなかった.このアウトカムは,今回の検討で一番進行した病変であり,メタアナリシスをして結果を残す事とした.結果は発見リスク比0.89(95%信頼区間0.26-3.05,P値=0.85)であり差異は認められなかった(Figure 2-a).右側大腸において追加発見された腺腫の割合(追加観察で発見された腺腫数/右側大腸で発見された全腺腫数)については,Harrisonらの報告では反転群で23.7%,前方視群で33.3%(P=0.31),Kushnirらの報告では18.9%,24.5%(P=0.17,カイ2乗検定,著者施行)でありいずれも前方視群に多い結果であったが有意差は認められなかった.腺腫の発見は大腸内視鏡の精度管理指標として最も重要視されているものであり 21,本レビューで利用できるアウトカムにおいて一番参考になるものと考えられた.このアウトカムについては現存するエビデンスのまとめとして統合しておく意義はあると考え,統合により推定精度を高めるためメタアナリシスを行った.結果は発見リスク比0.76(95%信頼区間0.55-1.05,P値=0.10)であり,反転群で追加発見腺腫が少ない傾向を認めたが有意差はなかった(Figure 2-b).研究間の異質性は認めないと考えられた(I2=0%,P=0.84).右側大腸において追加発見されたポリープの割合については,Harrisonらの報告では反転群38.1%,前方群36.2%,Kushnirらの報告では20.3%,27.0%であり,いずれも有意差はないが逆方向の結果であった.この違いの理由は施行医への非盲検が原因と推測され,Harrisonらの報告では病理結果にて正常粘膜とされたものが追加反転群で8病変(追加前方群では1病変)と多く認められており,Harrisonらの報告は追加反転観察は1名の施行医,Kushnirらの報告は10名で行われている事から,Harrisonらの報告でホーソン効果すなわち介入群で期待に応えようとする傾向 22が生じた事が考えられる.このバイアスの影響がある事と,ポリープは重要度が低いアウトカムである事から,メタアナリシスはしない事とした.検査効率評価のためにアウトカムに設定した追加の右側大腸における引き抜き時間は,2研究とも反転群において短く,Harrisonらの報告では有意ではなかったがKushnirらの報告では有意差を認めた.しかし,この時間は純粋な観察だけの時間ではなくポリープ切除の時間も含まれると考えられ,病変発見について検査の効率性をみる指標とするには注意を要する.よって,引き抜き時間についてもメタアナリシスは行わなかった.

Figure 2 

メタアナリシス結果.

a:右側大腸における追加観察において発見された10mm以上の腺腫の受診者数に対する割合(10mm以上の腺腫数/患者数).

b:右側大腸において追加発見された腺腫の割合(追加観察で発見された腺腫数/右側大腸で発見された全腺腫数).

サブグループ解析は,以上のアウトカムにおいて異質性は認めず,文献からの解析に必要な情報も十分ではなかったので行わなかった.感度分析は,固定効果モデルで検討を行ったところ,結果は変わらなかった.他の方法の感度分析は研究数が少ないため行わなかった.有害事情については,穿孔や出血といったアウトカムは2研究ともに1例も認めなかった.

GRADEシステムにそったエビデンスの評価はTable 5 Summary of findings tableにまとめた.各アウトカムのエビデンスの質は低いもしくは非常に低いという評価となった.

Table 5 

Summary of findings table.

Ⅳ 考  察

大腸内視鏡において右側大腸の癌死亡抑制効果が弱く,より注意深い観察が必要とされる事は近年の関心事項のひとつあり,追加の機器を必要としない反転観察は重要かつ簡便な戦略の1つと考えられる 2),3),5.今回のレビューの結果,右側大腸における内視鏡反転観察の有用性におけるエビデンスは希少かつ質の高くないものしかない事が判明した事は重要であると考えられる.また,メタアナリシスについては,抽出された研究が2研究のみであるため統合の意義を検討する必要があり,まずは結果の詳細をアウトカムごとに俯瞰したうえ,バイアスの影響や重要性を考慮し,次に予定していたアウトカムの中から吟味してメタアナリシスを行うかを決定した.2つの研究は右側大腸の定義が異なっていたが,主要な関心領域となる上行結腸は両研究ともに含まれており統合する事は可能と考えて統合を行った.2研究の限られた状況からの判断にはなるが,前方群に比べ反転群の優位性は認められなかった.

反転群の優位性が認められない理由は,反転観察中はスコープ操作が困難になる事やスコープの影に隠れる部位が生じる事が視認性を低下させるため,反転を追加しても粘膜のすべてが視認できるわけではない事が考えられる 19.多くの病変は,観察方向にかかわらず襞の配置や空気量の変化で視認できるようになると考えられ 20,前方視であっても,丁寧に襞裏や肝彎曲の観察を行えば,かなりの病変が発見できると考えられる.加えて,右側大腸の見逃しは視野角によるもの以外に,鋸歯状病変のような認識しにくい病変が要因の一つと推測されている 20.このように反転観察の優位性が認められなかった事は理論的,経験的に解離はしないと考えられる.しかしながら,頻度は少ないであろうが反転でしか同定できない重大な病変がある可能性はあり 19,特に肝彎やその近傍の癌病変の見逃しは本邦や海外においても報告があり 5),23,これらの病変は反転により視認が容易となった可能性はある.このような反転観察の方が視認しやすい重大な病変を加味し,今後内視鏡後の大腸癌死亡や大腸癌発生といった直接的なアウトカムを調査する研究や少なくともadvanced adenomaの発見をプライマリアウトカムとした研究が望まれる.

右側大腸における引き抜き時間は2研究とも反転群において短かった.入念な前方観察は襞裏を観察する動作が必要なため時間を要すると考えられるので反転観察の方が短い事は想定される 24.しかし,今回抽出した文献における引き抜き時間はポリープ切除の時間も含まれると考えられ,病変発見の効率をみる指標として解釈するには注意を要する.また引き抜き時間の平均値は2研究でかなり異なっていたが,肝彎までと脾彎までの研究である事が一つの要因と考えられる.安全性については,反転群において,穿孔や出血といったアウトカムは認めず,比較的安全な手技であると考えられる.ただし反転手技中に抵抗があった場合は無理をしないという事が重要であると考えられ 19,反転を戻す際も同様に注意をする必要があり,愛護的な操作が必要である 7

今回の結果から,右側大腸の推奨される観察方法を断定する事はできなかったが,前方観察の追加に比べて反転観察追加の優位性は認められない事は認知しておくべきである.右側大腸観察における病変発見率を高めようとする場合,1回だけの観察ではなく,再度2回目の観察を行う事が重要である.大腸内視鏡の効果が右側大腸で劣る事が注目されている昨今,右側大腸の2回の観察は重要視されてきており 25,特に1回目において観察の信頼性が低いと施行医が感じた場合や腺腫が存在した場合,高齢者,男性については追加観察での病変発見率が高まる事が報告されている 20),26.今回のレビュー結果において,有意差には至らなかったが前方観察の方が腺腫発見が多い傾向にある事を考慮すると,2回目の観察において前方観察を用いるのは良い選択肢であり,反転観察と異なり追加スキルやリスクについて考える必要がない点も有利である.また反転観察についても劣性が証明されているわけではないので選択肢になると考えられる.スクリーニング検査など多数の検査を効率的に行わなければならない状況においては,襞裏を観察する操作が必要となる前方観察を入念に2回行う事は労力負担が大きい事も推測され,時間的負担も増大する可能性もある.1回目は入念に前方観察を行い,2回目は反転観察を行うという事をルーチンにした方が実現性は高いかもしれない.このような労力の差を明らかにする事も今後の研究課題となるであろう.

本レビューの強みは,PRISMAやGRADEシステムを用い推奨される方法でレビューおよび評価を行った事である.メタアナリシスに利用できる研究報告が2研究しか存在しなかった事および大腸癌死亡といった重大アウトカムの調査がなかった事が最大の限界であったが,今回のレビューにより右側大腸反転観察におけるエビデンスが量および質的に限られている事が判明した事は重要な発見である.次に,右側大腸の定義が異なっている点や時代の変遷による機種の違いといった相違がある研究を統合した事が限界のひとつとして考えられる.統合するかどうかは思慮を要したが,現在のクオリティインディケーターとして最重要視されている腺腫発見 21の方向性は2研究とも同様であり,メタアナリシスにおいて異質性も認めなかった事は,現時点で利用できる反転効果における最大のエビデンスと考えられる.出版バイアスについては研究数が少なく評価が難しかったが,有意差ありの研究が報告されやすいとされるなかで 14,有意差なしの2研究が発表されている点からバイアスは少ない事が推測され,本研究の強みの一つと考えられた.

Ⅴ 結  論

今回のレビューの結果,右側大腸における反転観察の有用性におけるエビデンスは数および質において限られたものしかない事が判明した.今後さらに多くの研究の蓄積が必要であり,特にその後の大腸癌死亡や,大腸癌発生といった直接的なアウトカムや少なくともadvanced adenomaの発見をプライマリアウトカムとした検討が望まれる.現状では限られたエビデンスを基にした判断になるが,前方観察追加に比べ反転観察追加の優位性は認められなかった.内視鏡施行医はこの事実を認識しておくべきである.

謝 辞

多大なご協力と作業をいただいた片岡裕貴先生(兵庫県立尼崎総合医療センター 呼吸器内科・臨床研究推進ユニット),阪野正大先生(精治寮病院 精神科・神経科,名古屋大学 大学院医学系研究科精神医学分野),辻本康先生(協和会協立病院 腎臓透析センター),辻本啓先生(兵庫県立尼崎総合医療センター 臨床研究推進ユニット)に深く感謝いたします.当先生方にはこのレビューの計画への参画,文献検索の一部施行,データの分析や解釈における大きな貢献,全体手法への指導を頂きました.また論文執筆への参加および原稿の承認をいただき,実際上の著者の一員にあたります.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

文 献
 
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