近年,Interventional EUSによる診断や様々な治療手技が開発され実施されている.EUS-FNAはこれまでアプローチ困難であった消化管および消化管近傍の病変に対して安全かつ確実な生検診断を可能とした.Interventional EUSによる治療は,大きく3つに分類される.すなわち,1)EUSガイド下ドレナージ術,2)EUSガイド下腹腔神経叢ブロック・融解術,3)その他の治療である.また,最近では,膵癌などによる十二指腸狭窄に対して,EUSを用いた胃空腸吻合術も臨床応用されるようになった.Interventional EUSによる診断と治療は限りない可能性を秘めており今後のさらなる発展が期待される.
近年,良好な予後が期待出来るStage 0,Ⅰ膵癌の画像および臨床徴候の報告が散見される.多数例の集積報告から,契機となる画像所見はUSの膵管拡張が最も重要で,CTで腫瘍が描出されなくてもMRI(MRCP),EUSで膵全体を俯瞰する必要性が示唆されている.膵癌診療ガイドライン2016では,小型腫瘍性病変が同定された場合はEUS-FNAの施行を検討し,膵管狭窄および口径不同,周囲の膵嚢胞性病変を認めた場合はERCP下連続膵液細胞診(SPACE)の施行を提案している.小型腫瘍性病変に対するEUS-FNAの正診率は高率であるが,経胃的穿刺の場合はtract seedingの可能性を念頭におく.SPACEは特に上皮内癌の診断に有用であるが,検査後の膵炎に注意する.また,危険因子を有する症例に対するEUSの介入は,早期診断に有用である可能性があり,一部の地域医療圏では病診連携を生かした取り組みが成果をあげている.一方で,内視鏡的に採取した十二指腸液,膵液中の遺伝子異常,miRNAの変化に着目した新規マーカーの研究も進捗している.早期診断され切除となった症例では,再発の形式が進行癌と異なる可能性が報告されており,今後CTにEUSを加えた長期的な経過観察法の検討が求められる.
【背景・目的】右側大腸は,大腸内視鏡による大腸癌死亡抑制効果が左側より乏しいとされ,より注意した観察が必要である.大腸内視鏡検査中に右側大腸で反転観察を追加する事と前方観察を2回行う事の効果を調査する.
【方法】無作為化比較試験を対象に,システマティックレビュー及びメタアナリシスを行った.エビデンスの質の評価をGRADEシステムを用いて行った.
【結果】適格基準を満たす研究は2本のみであった.右側大腸で追加発見された腺腫割合の発見リスク比は0.76(95%信頼区間0.55-1.05, P=0.10)であり,反転群で追加発見が少ない傾向を認めたが有意差はなかった.エビデンスの質は低かった.
【結論】右側大腸反転効果に対するエビデンスは極めて少なく,質も高くない事が判明した.限られたエビデンスからの判断だが,前方観察2回に比べ反転観察追加の優位性は認められなかった.今後さらに研究の蓄積が必要である.
栄養障害型表皮水疱症の20歳代女性.嚥下困難感を主訴に来院.原疾患による開口障害を認め,経鼻内視鏡にて精査を行ったところ,NBIにて中部食道に食道狭窄およびbrownish areaを認めた.生検にて軽度異型上皮と診断したが,原疾患のため侵襲度の高い治療を行うことができず,開口訓練にて経口内視鏡が挿入可能となった時点で,同領域に対してアルゴンプラズマ凝固法による焼灼を行った.以後経過良好で,慎重に経過観察中である.
78歳男性.7年前に内視鏡的経皮胃瘻造設術を施行した.患者の胃瘻からの栄養剤の投与が出来ず,栄養剤の漏出を認めるため当科紹介となった.EGD,EUS及びCT検査を行い胃瘻のバンパー部が胃粘膜下層内に埋没したバンパー埋没症候群と診断した.経皮的に胃瘻を抜去出来なかったため,把持型鋏鉗子を用いて埋没したバンパー直上の粘膜及び粘膜下層を切開しバンパー部を露出後,経口的に胃瘻チューブを抜去し,新しい胃瘻チューブを再留置する事が出来た.
症例は79歳男性.数日来持続する胃痛と突然の嘔吐を主訴に当院へ救急搬送された.精査の結果,幽門狭窄を伴う進行胃前庭部癌と誤嚥性肺炎を指摘された.入院後,胃管による胃内容のドレナージを試みたが効果は不十分であったため,胃癌狭窄部に対して内視鏡的胃十二指腸ステント留置術を施行した.留置後は良好なドレナージが得られ,肺炎の軽快を得た.その後胃切除術を施行し,患者は術後12日目に合併症なく退院した.胃癌術前症例に対する内視鏡的胃十二指腸ステント留置術についての報告はこれまでに僅かであり,その安全性や有効性はいまだ明らかでない.この度自験例で得られた有用性について文献的考察と共に報告する.
筋層牽引所見(muscle-retracting sign;MR sign)は大腸の大型隆起性病変で認める事があり,ESD施行時に同所見を認めた際は剥離を中止すべき所見とされているが,術前予測は困難である.当院では同所見によるESD中断例を3例経験後より,MR signの術前予測のために20MHzの細径プローブによるEUS(miniature probe EUS;mEUS)を施行している.病変基部から病変内部に連続性に筋層が描出された際にEUS-MR sign(E-MRs)陽性と定義し,mEUSを施行した8例中3例でE-MRs陽性を示した.mEUSにおけるE-MRs陽性例は全例でMR sign陽性であり,また,E-MRs陰性例は全例でESD施行中のMR signは陰性であった.E-MRs所見とMR signの有無は全例で合致した.EUSは従来困難と言われていたMR signの術前予測のための一手段となり得る可能性が考えられる.
内視鏡機器や診断学の進歩により,咽喉頭表在癌が数多く発見されるようになってきた.そのため内視鏡治療可能な症例が増えてきており,咽喉頭領域における内視鏡診断と治療の重要性は高まってきている.今回,咽喉頭癌における内視鏡診断と治療の工夫について解説する.
【目的】 悪性胆道狭窄に対するself-expandable metallic stent(SEMS)留置後の主な合併症のひとつに胆嚢炎があげられる.虚血は胆嚢炎の危険因子のひとつであるが,SEMS留置後の胆嚢炎の発症における胆嚢栄養動脈への腫瘍浸潤の影響については知られていない.本研究はSEMS留置後胆嚢炎の危険因子を同定することを目的とした.
【方法】 対象は2012年1月から2016年6月までに京都大学医学部附属病院および大津赤十字病院で,切除不能遠位部悪性胆道狭窄に対しSEMS留置を行った107例について,胆嚢炎の発症率,9つの予測因子を後方視的に検討した.
【結果】 SEMS留置後胆嚢炎は107例中13例(12.1%)で発症し,観察中央期間は262日であった.単変量解析の結果,胆嚢栄養動脈への腫瘍浸潤(P=0.001)および胆嚢管合流部への腫瘍浸潤(P<0.001)が危険因子として同定された.多変量解析ではこれらふたつの因子が有意かつ独立した危険因子であることが示された(胆嚢栄養動脈腫瘍浸潤:オッズ比 22.13;95% 信頼区間 3.57-137.18;P=0.001,胆嚢管合流部腫瘍浸潤:オッズ比 25.26;95% 信頼区間 4.12-154.98;P<0.001).
【結語】 胆嚢管合流部への腫瘍浸潤に加え,胆嚢栄養動脈への腫瘍浸潤がSEMS留置後胆嚢炎の危険因子であることをはじめて示した.
【背景および目的】胃癌の内視鏡的スクリーニングが罹患率または死亡率にどのように影響するかは明らかではない.胃癌に対する内視鏡的スクリーニングと死亡率および発生率との関係を評価するためのシステマティック・レビューおよびメタ解析を行った.
【方法】PubMedとEMBASEを比較し,2018年3月8日までに死亡または発症の転帰を報告した,少なくとも1回は内視鏡的スクリーニングを受けた成人のコホートおよび症例対照研究を個別にレビューし,関連するデータを抽出した.評価する効果見積りは相対リスク(RR)であり,RRと95%信頼区間(CI)を組み合わせるためにランダム効果モデルを使用した.
【結果】最終解析にはアジアからの342,013人を含む6つのコホート研究と4つのコホート内症例対照研究が含まれていた,対象6研究を統合した結果(RR,0.60;95%CI,0.49-0.73)は,内視鏡的スクリーニングが胃癌死亡率の40%相対リスク低下と関連することを示した.内視鏡的スクリーニングと発生率の関連は観察できなかった(RR,1.14;95%CI,0.93-1.40).サブグループ分析では,スクリーニングなし(RR,0.58;95%CI,0.48-0.70)またはX線スクリーニング(RR,0.33;95%CI,0.12-0.91)と比較して内視鏡スクリーニング後の胃癌死亡率が有意に減少した.しかし,内視鏡的スクリーニングは,期待死亡数と比較して死亡数は有意に低下させなかった(RR,0.67;95%CI,0.38-1.16).
【結論】システマティック・レビューとメタ解析では,アジア諸国において内視鏡スクリーニングは胃癌による死亡リスクを低下させ,胃癌発生率に影響を与えないことがわかった.本知見の裏付けには地域集団ベースの前向きコホート研究が必要である.