日本消化器内視鏡学会雑誌
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内視鏡室の紹介
埼玉医科大学総合医療センター
責任者:屋嘉比康治  〒350-8550 埼玉県川越市鴨田1981番地
松原 三郎
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2019 年 61 巻 1 号 p. 81-85

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概要

沿革・特徴など

1972年(昭和47年),埼玉医科大学の開学と同時に開設された埼玉医科大学附属病院(現埼玉医科大学病院)に続き,1985年(昭和60年),本学第2の附属病院として川越市に開設された.病床数1,053床,病床稼働率90%以上,1日の外来患者数約2,000名,医師数4百数十名,職員数は2,000名を超える県内最大級の総合病院であり,また現在では全国的にも有数の規模を誇る総合周産期母子医療センターと高度救命救急センターを有し,県内で唯一のドクターヘリ事業を行っている.内視鏡部は当院開設に伴い1985年(昭和60年)6月より始動したが,内視鏡室が3室しかなく検査数の増加に対応できていなかった.2017年(平成29年)4月に1階から3階に移転・拡充し,最新の機材を導入し新たに内視鏡センターとして稼働を始めた.受付から待合室,廊下には「森の中の内視鏡センター」をイメージした塗装や椅子が置かれ,待合室や通路も広くなり従来の内視鏡室のイメージを一新している.

組織

当センターの責任者は消化器・肝臓内科特任教授の屋嘉比 康治が兼任している.組織上は独立した部門だが専任の医師はおらず,消化器・肝臓内科,消化管外科,呼吸器内科らの医師がスタッフとして検査・治療に従事している.看護師は当センター専任であり,17時以降は準夜勤の看護師1名,24時以降はオンコール体制を敷いており,緊急内視鏡に24時間対応可能となっている.

検査室レイアウト

 

 

 

内視鏡室の特徴

当センターの総面積は611.5m2である.通常内視鏡室が5室.うち検査室2のみFUJIFILMのシステムが設置されており,他はオリンパスのシステムである.ESDはスペースの広い検査室5で主に施行している.透視室は2室あり,消化器内視鏡と気管支鏡に分かれている.消化器内視鏡を行う透視室1にはオリンパスとFUJIFILMのシステムがEUSの観測装置とともに設置されており,ERCPやEUS関連処置,ダブルバルーン内視鏡,EIS,消化管ステント留置,イレウス管挿入など様々な処置に対応可能である.

スタッフ

(2018年6月現在)

医   師:指導医12名,専門医10名,その他スタッフ33名

内視鏡技師:Ⅰ種9名

看 護 師:常勤19名,非常勤2名

事 務 職:1名

設備・備品

(2018年6月現在)

 

 

実績

(2017年4月~2018年3月まで)

 

 

指導体制,指導方針

当センターは専任の医師はいないため,指導体制・方針は各診療科に一任されている.ここでは消化器・肝臓内科について述べる.

初期研修医は見学が主体であるが,やる気のある研修医には,患者さんの同意を得た上で,「抜き」操作のみ行わせている.早い段階で内視鏡に触れることで,少しでも内視鏡に興味を持ってもらえるように心がけている.

後期研修医は,1年目は上部消化管内視鏡検査から始める.と同時に,内視鏡全般の処置に関して介助に入り,手技の流れやデバイスについて知識を身に着けられるようにしている.2年目からは下部消化管内視鏡検査を始め,後半からは受け持ち症例の上部の処置(止血,EVL,EIS,PEG造設など)を始める.3年目からは,受け持ち症例の下部のポリペクトミーやEMR,またERCP手技の一部(バルーン造影やプラスチックステント挿入など)を行っている.自分で内視鏡を行った症例については,週1回の内視鏡カンファランスですべてチェックを受け,写真の撮り方から鑑別診断まで学ぶ.

4年目以降は,原則として消化管・肝臓・胆膵の各専門グループに配属され,ESDは消化管グループ,ERCP関連手技およびEUS関連手技は胆膵グループで行っている.ESDはまず正確な内視鏡診断ができることが前提である.治療は上部から開始し,習熟度に応じて順次ステップアップしていく.ESD対象症例はすべてチーム内で情報を共有し,難易度に応じて術者の割り振りをしている.ERCPに関しては,後方斜視鏡であること,鉗子起上装置があることなど,他の消化管内視鏡とは内視鏡の構造自体が大きく異なることから,EST後症例や定期的にステント交換を行っている症例など,難易度が低く膵炎のリスクの少ない症例に対して,十二指腸内での操作から始め,まずは後方斜視鏡に慣れさせる.ある程度慣れたところで,後方斜視鏡の挿入,未処置乳頭のカニュレーションを始める.ESTに関しては安定して乳頭正面視ができ,確実な内視鏡操作ができるようになってから行う.EUSは,当センターにはラジアル式はないため,すべてコンベックス式で行っている.まず外来患者を中心に,観察から始める.EUSスコープは先端に超音波探触子が装着されているため先端硬性部が長く,乱暴な操作は穿孔のリスクがある.そのため,まずは胃内操作から始め,膵体尾部が描出できるようになったら,十二指腸からの観察に進む.十二指腸からのEUS観察の経験を積むと同時に,内視鏡操作に慣れたところで,経口挿入を始める.FNAに関しては,胆膵解剖のすべてをくまなく観察できなくても問題ない.病変を描出でき,そして安定して観察しつづけることができる場合には,まず経胃的な穿刺から開始し,習熟度に応じて十二指腸病変に進む.Interventional EUは内視鏡センター移転に伴い開始したが,指導体制に関してはこれからの課題である.

現状の問題点と今後

内視鏡治療・外科治療の境界にあるような消化管癌に関しては,今まで外科と内科で治療前に密にディスカッションすることはなく,それぞれの判断で治療を行い,必要に応じ個別に相談していた.最近は外科と内科で月に1回治療に関する合同カンファランスを治療開始前に行うようになったが,月に1回ではすべての症例に対処することは難しく,今後の運用法に関して検討中である.

昨年の内視鏡センター移転に伴い検査室が増え,近隣の医療機関への案内の効果もあり,内視鏡件数は増加傾向にある.特に,胆膵系の内視鏡件数が飛躍的に増加した.ERCP件数も増えたが,これまでほとんど施行していなかったEUS-FNA,EUSガイド下ドレナージなど,EUS関連処置が導入され,またそれに伴い観察EUSの件数も増え,胆膵系全体でこれまでの倍近くの件数をこなさなければならなくなった.また処置内容も,従来に比べ複雑で高度な内容が多くなり,処置に時間がかかる症例も増えてきた.透視室が2部屋あるものの,1部屋は気管支鏡専属の部屋であり(CO2装置なし),1列でしか行えないため,月・水・金の胆膵処置日には終了時刻がかなり遅くなってしまうことが問題である.現時点では胆膵系内視鏡の責任者が一人しかいないために週3回しか処置ができないが,今後指導の結果若手が順調に育てば,胆膵処置日を増やすことができ,終了時間を早めることができるようになると期待している.

 
© 2019 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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