2019 年 61 巻 1 号 p. 86-88
松本市は,長野県の中央に位置し,松本城の城下町として・北アルプスの玄関口として多くの観光客が訪れる風光明媚な地方都市である.当院は松本駅から徒歩20分ほどの距離にあり,明治41年に相澤医院として開設されてから本年で110年となる病床数460床の民間病院である.現在37の標榜科,141名の常勤医師が救急医療・がん診療を中心に診療にあたっており,救急車受け入れ台数は6,000-7,000台/年であり,消化管出血・胆管結石・胆管炎・胆嚢炎などの消化器救急疾患例が多いことが特徴である.また,陽子線治療施設を含め,時代に即した癌診療の提供も常に心がけている.地方都市の特徴として高齢患者が非常に多く,人口減少時代の到来もあり,高齢患者の生活の質の向上を念頭に置いた医療が常に求められる状況である.
当院は国際的な医療機能評価機関「JCI(ジョイント・コミッション・インターナショナル)」の2度目の更新を2018年後半に予定しており,内視鏡センターもその基準に則り,医療品質・医療安全に特段の注意を払いながら運営している.
日本内科学会,日本消化器病学会,日本肝臓学会,日本消化器内視鏡学会,日本膵臓学会の指導施設であり,消化器内科,消化器内視鏡の研修体制も充実している.
組織内視鏡センターは消化器内視鏡(消化管,胆膵領域)と呼吸器内視鏡領域の業務を行う.診療は消化器内科,総合内科,呼吸器内科,呼吸器外科医師が担当している.また健康センター分の検査を中心にパート医師に検査を御願いしている.
検査室レイアウト
内視鏡センターには上部・下部の観察・治療を行う大きめな検査室2室と,観察中心に行う検査室4室,透視室3室の計9室がある.大腸前処置室は男女別に,別のフロア(病院2階)にある.
鎮痙剤のルーチンでの使用は行っておらず,鎮静剤の使用はEUS/ERCP/上部・下部の精査・治療・小腸内視鏡を除いてはリカバリーベッドやマンパワーの問題から積極的には行っていない.また経鼻内視鏡検査も希望者に対してのみ行っている.
病院と併設されている相澤健康センターから依頼される検査含め実績は後述となり,全国的な傾向と一致すると思われるが,上部のESDはやや減少傾向で,下部のESDは増加傾向である.
(2018年4月現在)
医 師(消化器内科・総合内科所属で内視鏡診療に従事している医師):指導医3名,専門医6名,研修医(卒後3-6年)2名
検査技師:常勤7名
看護師・准看護師:常勤8名,非常勤11名
事 務 職:常勤3名
洗浄スタッフ:常勤4名
(2018年4月現在)
(2017年4月~2018年3月まで)
当院では毎年5-10人程度の初期研修医を受け入れている.また内科専門医研修基幹施設として本年は1名の内科研修医が加わった.研修医はローテーションで各科を研修している.
消化器内科スタッフは上部・下部消化管,小腸(ダブルバルーン小腸内視鏡),ERCPを偏りなく研修し,単独でEMR・ESTなどの治療・緊急内視鏡への対応ができるレベルまで技術を高めると共に,積極的に研究会・地方会・総会での発表を行っている.また上記研修の後に,本人の希望に応じてEUS・ERCPを用いた胆膵領域,消化管の精査・治療やESDを中心とした消化管領域の精査・治療についても研修を選択できるように研修/診療計画を組んでいる.
肝臓内科も指導医1名・専門医1名が在籍し,肝疾患の検査・治療を行うとともに,放射線科医がIVRを担当している.
また放射線治療・陽子線治療・化学療法の専門医もそれぞれ在籍しており,悪性疾患に対する最適な治療を常に模索しながら診療を行っている.
カンファレンスについては,
1)毎日行っているのは
①入院患者の入院時の診断・治療方針に関する検討会.
2)週1回行っているのは
①消化器内科カンファレンス:1週間の治療症例・外来入院の問題症例・教育症例につき検討している.
②病棟チームカンファレンス:病棟診療をチーム制で行っているため,入院後の経過・治療方針につき各チームで行っている.
③病理カンファレンス:内視鏡的治療・外科的治療を行った症例につき,外科・病理と週1回症例検討を行っている.
④Cancer board:消化器癌症例全例を対象に外科・放射線科・化学療法科・病理などと合同検討を行っている.
3)月1回行われているのは
①胆膵症例の検討会:膵嚢胞症例を中心に1カ月分の外来・入院症例の検討を行っている.
施設が古く,最新の病院の内視鏡室とは設備・器材の面で不十分な点もあるが,パート勤務の医師を含め医師とセンタースタッフが協力して,最先端の医療を安全に提供出来るよう常に心がけている.