日本消化器内視鏡学会雑誌
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内視鏡室の紹介
鳥取赤十字病院
責任者:田中久雄  〒680-8517 鳥取県鳥取市尚徳町117
田中 久雄
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2019 年 61 巻 10 号 p. 2422-2425

詳細

概要

沿革・特徴など

当院は,大正4年4月に県立鳥取病院が日本赤十字社へ無償譲渡され,日本赤十字社鳥取支部病院として開設され,昭和12年12月には鳥取陸軍病院赤十字病院,昭和20年3月には舞鶴海軍病院鳥取赤十字病院へと改称され,同年9月に鳥取赤十字病院となった.

昭和33年3月に総合病院に承認された(420床).平成11年5月には災害拠点病院の指定を受け,平成20年7月には地域医療支援病院に承認され,鳥取県東部地域の地域医療を担っている.平成19年には山陰で初めて小腸用カプセル内視鏡を導入し,平成26年には大腸用カプセル内視鏡検査も開始された.その後も,手術用支援ロボット ダヴィンチの導入や,山陰で初となる下肢静脈瘤血管内レーザー装置の導入など,最新の先進医療も取り入れ高度な急性期医療を提供している.平成26年より新病棟の増改築工事に着工し,平成28年1月に新本館が竣工,平成30年5月には新病院がグランドオープンした.新本館の竣工に伴い内視鏡室は内視鏡センターとして新たに移転整備され,山陰地方で最多数(年間約1万件)の上部下部内視鏡検査を実施しており,地域の消化器内科の診療ニーズに応えている.

組織

平成2年8月 B館(現:外来棟)改築竣工 B館1階に内視鏡室設置.

平成28年1月 新本館竣工 本館2階に内視鏡センターとして移設整備.

検査室レイアウト

 

 

 

当内視鏡室の特徴

当院では,上部下部内視鏡,ERCP合わせて年間1万件を超える内視鏡検査を行っている.病棟新築(2018年8月)に伴い1期工事完成時の2016年1月に現在の内視鏡センターへ移転した.

検査室4室,リカバリールーム,診察室,下部内視鏡前処置室などを備え,洗浄室を独立させた.以前の内視鏡室に比べかなり広いスペースを確保でき,また内視鏡機器を最新のものへ更新した.

特徴:1 検査室は4室 個室化することで患者様のプライバシーを保っている.

2 患者の動線とスタッフの動線が交差しない.

3 洗浄室を独立させ,洗浄機の騒音,有害物質の拡散を防止.

4 リカバリー室を設置.外来患者の鎮静を用いた内視鏡検査後の観察を介助についた看護師が引き続き観察,介助についていない看護師が観察する場合でも連絡が取りやすい.

5 消化器系透視室が同じフロアの隣接した場所となり,物品の運搬などが便利となった.

6 下部前処置室を設置.洗腸液を飲んで検査の準備をしていき,患者の様子がわかりやすい.また車椅子用トイレ,車椅子更衣室も備えた.

7 診察室2室を併設した.医師の診察,病状,治療の説明を家族とともに画像を見ながら聴ける.また看護師の問診,検査の説明の場所としても利用できる.

8 カンファレンスルームを設置.別室で検査画像を確認したり,画像を用いたカンファレンスができる.

現状と改善点:検査室が個室化したため,各検査の状況がスタッフ間でわかりづらくなっている.応援を呼ぶタイミングなど各スタッフの判断に任されるところがある.そして日々のリーダーは検査の進行の調整,医師との連絡,スタッフとの情報共有,伝達など役割は大きい.また検査技師,臨床工学技士は他業務との兼務,看護師,看護助手は病棟とのローテーションメンバーを含み,人材育成が大きな課題となっている.

スタッフ

(2019年4月現在)

医   師:消化器内視鏡学会 指導医1名,消化器内視鏡学会 専門医3名,その他スタッフ4名,研修医など4名

内視鏡技師:Ⅰ種6名

看 護 師:常勤5名,非常勤 病棟ローテーション4名

事 務 職:1名

そ の 他:臨床工学技士5名(交替1~2名/日),臨床検査技師2名(交替1名/日)

設備・備品

(2019年4月現在)

 

 

実績

(2017年4月~2018年3月まで)

 

 

指導体制,指導方針

●医学一般の知識習得

(1)消化器病学一般,救急処置などの習得は必須と考え,外来診療,病棟診療を通じ,各種疾患への診療経験を広げていく.また内科抄読会,症例カンファレンスなど定期的に行い,積極的な参加を促している.

●内視鏡検査について

(2)内視鏡検査の適応および禁忌の習得,内視鏡機器の取り扱いの習得が必要.

(3)最初は熟練した医師(内視鏡学会認定指導医など)の検査を見学し,介助を行う.ついで,熟練した医師の観察,撮影が終了したらスコープを渡してもらい,ただスコープを抜去するだけとする.

(4)また,熟練した医師の検査を見学し,介助を行うことで,患者への接し方,挿入前,挿入中の声かけなど,内視鏡医に必要なコミュニケーションのとり方を習得してもらう.

(5)その後は内視鏡経験豊富な医師(内視鏡学会認定専門医など)にスコープを挿入してもらい,食道に入ったところでスコープを渡してもらい,食道,胃,十二指腸球部,十二指腸下行脚まで挿入する.スコープをある程度操作できるようになってから挿入を行う.一般に実際に内視鏡を挿入するまで2~3週間を要し,一人で検査を行うには最低1カ月以上必要と考えている.この際,仮想内視鏡や模型の使用は有用と考え実践している.

(6)現在は電子スコープが主流であり,熟練した医師と一緒にモニターをみることが可能なため,見逃しは少ないと思われるが,撮影したフィルムを見直すことも大切である.毎週水曜日の午後4時から内視鏡フィルムの有所見例を中心に,読影カンファレンスを実施している.

●消化器病学専門性習得に関して

(7)内視鏡検査にて生検を行うようになったら,生検を行う目的を明確にし,生検組織所見と内視鏡所見を厳密に対比する.手術を行った症例の場合には切除臓器の病理所見と内視鏡所見とを対比する.理想的には内視鏡医自ら病理組織標本をみる姿勢が望まれる.毎月地域の病院の内視鏡医による症例検討会が開催され,内視鏡所見の読影および病理所見,内視鏡所見の対比を行うトレーニングを行っている.

(8)大腸内視鏡検査,内視鏡的逆行性胆管膵管造影,治療内視鏡については,最初は見学および検査の介助を行い,手技の理論や技術的な実際の流れを十分に習得してもらったうえで,徐々に検査を行ってもらう.

(9)超音波下で行う肝生検,ラジオ波焼灼術などは,肝臓専門医の指導のもと,見学からはじめ,助手の経験を得て,技術,知識の習得を行っていく.

(10)消化器がん化学療法,緩和医療に関しては,消化器カンファレンスを通し,チームの治療方針に従って治療を行う.

(11)病理解剖を積極的に行い,生前の病態,病因などの検討,治療法などの考察にもとづいた各症例ごとの病理検討会を行う.

(12)各種カンファレンス,学会,研究会などへの症例報告,研究発表,さらには論文発表を行い,疾患,医療への理解および論理的思考能力を深めていく.

現状の問題点と今後

鳥取県東部地域の内視鏡検診や大腸癌検診の2次精査など幅広く検査を受け入れ,地域の医療ニーズに応えてきたが,ここ数年は内視鏡件数も1万件を越え,日々の検査キャパシティーが問題になっている.内視鏡検査医不足分は外勤医師にてまかなっているものの,コメディカルは慢性的な不足状態で,透視室含め5つの検査室,7台の検査機器を十分に生かし切れていない.その分全体の検査終了が時間外夜間にまで延長しており,働き方改革の問題と相まって早期の対策を余儀なくされている.

また,2019年4月からは念願の呼吸器内科の常勤医配置が決まっており,内視鏡センターへ気管支用スコープ4本(超音波気管支スコープ含む),気管支内視鏡用透視室の新たな稼働が決まっており,コメディカルスタッフ含め,消化器内視鏡検査との兼ね合いなど懸案事項となっている.

さらにもうひとつ,大きな問題として2019年4月より開始される新専門医制度に際し,当院は現在までのところ初期研修医や後期研修医を年1~2人程度しか採用できておらず,今後は多くの研修医育成にも力をいれていきたいと考えている.ちなみに2019年4月からは新専修医が2名,新初期研修医が1名の採用が決まっている.

最後に,近年の消化器内視鏡診療は専門性,技術の高度化が進んでおり,当院の内視鏡センターもその大きな変化に対応していくよう,鳥取大学との人的派遣の協力も仰ぎながらであるが,努力していかなければならないと考えている.

 
© 2019 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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