2019 年 61 巻 2 号 p. 209-211
当院は大正9年5月に広島駅構内に設置された広島鉄道治療所として開設された.昭和15年6月には診療所から病院へ機能強化を行い,病院名を広島鉄道病院と改称した.昭和20年8月原爆投下によって病院建物が全壊した事による移転を経て,昭和38年9月現在の広島駅前に移転した.昭和57年に保険医療機関の指定を受け国鉄職員・家族だけが利用する病院から一般診療を行う病院となった.以降は地域に密着した中核病院として機能を果たしている.平成28年1月には旧病院に隣接した敷地で新病院(275床)の運営を開始し,平成28年4月には西日本旅客鉄道株式会社から独立した医療法人を設立,名称もJR広島病院に改称した.新病院の開院後は広島駅前の立地の良さも生かし,内視鏡診療の一層の充実を図っている.
組織平成28年1月より内視鏡センターとして独立しているが,専任スタッフはおらず,内視鏡検査と治療は消化器内科と健診センター医師が担当している.内視鏡看護師・内視鏡技師・事務員は外来部門となっている.
検査室レイアウト
内視鏡センターは当院1階の外来部門にあり,内科外来と救急室からのアクセスが比較的良好な場所にある.内視鏡センターは内視鏡ブース,待合室,更衣室,咽頭麻酔室,4つの洗浄機付きトイレを有する大腸前処置室,リカバリー室,診察室,洗浄室,サーバー室で構成されその総面積は223.2m2であるが咽頭麻酔室,大腸前処置室,リカバリー室を集中配置することでスタッフの動線を短くし目が届きやすくなるように配慮している.内視鏡室は3ブースを備えており,各ブースはボンベを利用したCO2送気が可能で下部消化管内視鏡検査,長時間を要する内視鏡治療手技を行う際には原則CO2を使用している.また,高周波装置も3台備え,治療内視鏡,緊急内視鏡が並列で対応可能な環境を整えている.
内視鏡対応の透視室は1部屋で,内視鏡センターと分かれて存在しているが,廊下を挟んで内視鏡センターに隣接しており,移動は容易である.また,内視鏡システムは常設しており内視鏡検査・治療と平行して検査を行う事が可能である.
内視鏡室では,上下部消化管内視鏡検査とEUS,EMR,ESD,EVLなどの内視鏡治療を行い,透視室では胆膵内視鏡検査・治療,消化管拡張術,消化管ステント留置術,EIS,小腸内視鏡を行っている.鎮静剤はジアゼパム,ミダゾラム,ペチジン塩酸塩,デクスメデトミジン塩酸塩などを検査種類,症例に合わせ使用し,患者に苦痛の少ない検査,治療を心がけている.鎮静剤を使用した外来患者はリカバリー室で安全に帰宅できるまでの経過観察を行っている.内視鏡画像は画像ファイリングシステムで管理しており,院内すべての電子カルテより画像,レポート含め閲覧可能である.
(2018年7月現在)
医 師:指導医3名,専門医6名,その他スタッフ1名,研修医など1名
内視鏡技師:Ⅰ種5名
看 護 師:常勤4名,非常勤2名
事 務 職:1名
(2018年7月現在)
(2017年4月~2018年3月まで)
研修医は毎週①病棟カンファレンス,②消化器内科・外科・放射線科・病理合同カンファレンスに出席し消化管造影検査,消化管内視鏡検査およびCT検査などの読影を行い,最後に手術結果と対比することで診断能力を向上させている.その他,毎月全科による初期研修医レクチャーを行い医師としての技量の向上を行っている.
初期研修医1年目
当科をローテーションする際には,病棟管理は勿論のこと,入院担当患者の検査,治療の見学や介助を行い上級医より指導を受ける.また消化器の解剖および内視鏡機器の構造,操作法について理解し,機器を直接手にしての操作を行う.
初期研修医2年目
初期研修医2年目の消化器内科を選択した研修医に関しては上級医によるマンツーマンの指導のもと,上部消化管内視鏡検査の引き抜きから開始する.次に挿入のみ上級医が行い食道から十二指腸まで観察を行う.またその他種々の内視鏡検査・治療の介助を行い,その手技,方法を習得する.
後期研修医
後期研修医は咽喉頭を含めた消化管の解剖の把握ができており,かつ抜去・深部挿入がスムーズに問題なくできれば,上部消化管内視鏡の挿入を初めから行う.下部消化管内視鏡検査は,初め引き抜きを経験させ,スコープの操作法,観察法を習得する.スムーズに行えるようになれば肛門挿入の時点からスタートさせる.およそ15分でSDJを超えていない場合は上級医に交代し挿入後観察を行うが,深部でも操作状況によっては上級医に交代して挿入を行う.また,挿入時間にこだわることなく,丁寧な短縮を行ってあくまでも痛みのない挿入を心がけるよう教えている.うまくいかなかった原因を,指導医とともにディスカッションを行い,理論的かつ最適な挿入法を体得する.
その他の手技に関しては後期研修医の習熟度にもよるがおよそ1年目には
1.内視鏡検査装置,洗浄器および高周波装置などの使用方法を習得し,使用できるようにする.
2.上下部消化管内視鏡検査でターゲットを絞った確実な生検などの処置が行えるようにする.
3.以下の内視鏡検査・治療の介助を行い,その手技,方法を習得する.
・EUS,FNA,ポリペクトミー,EMR,ESD,止血術,小腸内視鏡,ERCP,EST,EIS,EVLなど.
2年目には下記の検査・治療を経験する.
・EUS,FNA,ポリペクトミー,EMR,止血術,ERCP,EST,EIS,EVLなど.
3年目にはさらにESDなど高度な内視鏡治療や小腸内視鏡などを経験する.
当院は平成28年1月に新病院が開院したが,旧病院が老朽化,狭小であったため機器の更新が停滞気味となっていた.開院に合わせ新規機器購入を行っているがすべての機器の更新は同時に行われておらず,最新の機器と古い機器が混在し順次更新を行う必要がある.特にオリンパスの290シリーズが旧ファイリングシステムと接続が行えなかったことにより260から290シリーズへの更新が遅れている.これに関しては早急に内視鏡システムをすべて290シリーズに更新し,合わせて上下部消化管内視鏡の更新も行う予定となっている.その他超音波内視鏡システムの更新,カプセル内視鏡の導入を予定している.
内視鏡件数,治療件数は順調に増加しているが,内視鏡室設備,内視鏡システム上はまだ余裕があることより広島駅前の利便性のいい立地条件を生かし今後も内視鏡件数,治療件数を増加させたいと考えている.また,同時に検査件数の増加や治療内視鏡の増加に対応する医師やコメディカルのマンパワーの不足に関しても検討している.
初期研修,後期研修を問わず積極的に研修医を受け入れる予定であり,より消化管内視鏡に触れてもらうため内視鏡トレーニングモデルの導入を予定している.
やる気のある若手医師や内視鏡に興味をもつ看護師,内視鏡技師が当院に関心を持って集まってもらえるよう,今後も環境の整備にも一層の力を入れていく予定である.