日本消化器内視鏡学会雑誌
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内視鏡室の紹介
さいたま市立病院
責任者:堀之内宏久  〒336-8522 埼玉県さいたま市緑区三室2460番地
馬場 秀雄
著者情報
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2019 年 61 巻 3 号 p. 322-325

詳細

概要

沿革・特徴など

当院は昭和28年に浦和市立伝染病院及び結核療養所として開設され,その後昭和43年に浦和市立北宿病院,昭和47年に浦和市立病院に名称を変更し,平成元年に総合病院として運用を開始した.平成13年には浦和市,大宮市,与野市3市の合併により名称をさいたま市立病院に変更した.病床数は567床(一般病床537床,結核病床20床,感染症病床10床)で31科の診療科を標榜している.

当院の特色は,がん診療では「地域がん診療拠点病院」に指定され,小児医療・小児救急医療では小児2次救急患者の受け入れを行っており,周産期医療では「地域周産期母子センター」としての役割を担っている.その他,災害時には「災害拠点病院」として,また,感染症医療でも「第二種感染症指定医療機関」として指定を受けている.

組織

内視鏡センターには専属の医師はおらず,消化器系の診断・治療は消化器内科及び外科の医師が担当している.その他気管支鏡による検査・治療は呼吸器内科,呼吸器外科の医師が行っている.看護師は看護部外来部部門の所属で,各診療科と看護部門が連携を図りながら業務を行っている.

検査室レイアウト

 

 

 

当内視鏡センターの特徴

内視鏡センターは2階にあり,検査室は3室ある.主に上部・下部消化管内視鏡検査,治療を行っている.内視鏡センターにはX線TV室はないため,透視の必要なERCPやステント留置等の検査・処置は地下1階の放射線科TV室で行っている.待合室は廊下のスペースを利用し,内視鏡センター内の待合スペースでは咽頭麻酔等の処置に利用している.リカバリースペースには,リクライニングチェアを3台設置している.トイレはリカバリースペースの隣と更衣室内に各々1カ所ずつある.検査室に隣接する記録室及び医師控室には3つの検査室の内視鏡映像を一覧できるモニターが設置されており,研修医の学習や実施する内視鏡のチェックに使用している.内視鏡ファイリングシステムと電子カルテはリンクしており,電子カルテから内視鏡画像やレポートを閲覧可能である.

下部消化管内視鏡の前処置は患者の希望に合わせて在宅または院内で行っている.院内で前処置を行う場合には内視鏡センターには浣腸を行うベッド・トイレ付個室などのスペースが確保できないため,1階の外来患者全体を対象とした処置室で前処置を行っている.鎮静剤の使用については,リカバリースペースが狭いため検査予約枠を鎮静の有無別で分けて調整している.ミタゾラムやペチジン等の鎮静剤やブチルスコポラミンの使用の有無や量は,内視鏡施行医が患者の希望や年齢,併存疾患を考慮し決めている.

検査・治療枠は,午前中は主に上部消化管内視鏡検査中心で,午後に下部消化管内視鏡検査や上部・下部消化管のESDなど内視鏡治療,胆道検査・治療を当てている.当院では,人間ドックや検診は行っていない.

スタッフ

(平成30年9月現在)

医   師:指導医2名,専門医4名,その他常勤スタッフ2名,非常勤医2名,後期研修医5名

看 護 師:常勤16名(内視鏡技師Ⅰ種資格10名),非常勤2名

業 務 補:1名(内視鏡洗浄)

事 務 職:1名(派遣)

設備・備品

(平成30年9月現在)

 

 

実績

(平成29年4月~平成30年3月)

 

 

指導体制,指導方針

当院は臨床研修指定病院であり,毎年12名の初期研修医を受け入れている.消化器内科での研修は,1年目は6週間,2年目には研修医の希望で1~2カ月間ローテートしている.内視鏡検査に関しては,1年目は基本的に見学のみであるが,レポートの解説等を指導医,上級医から受ける.2年目は上級医の検査を見学し,観察の仕方や所見の読み方等の指導を受ける.希望者には内視鏡モデルの挿入練習や上級医の観察後に上部消化管内視鏡の引き抜き操作を指導している.消化器内科の後期研修医は,1年目には内科全体をローテートするため,消化器をローテートする3カ月は上部消化管内視鏡検査を中心に研修し,消化器以外をローテートする残りの9カ月は週1回上部消化管内視鏡検査に携わっている.2年目以降は,上部消化管内視鏡は3~6カ月間での独り立ちを目指し,その後内視鏡的止血術も始め,最終的にはESDが施行できるところまでを目指している.下部消化管内視鏡は上級医の見学,介助から始まり,下部消化管内視鏡モデルで挿入練習後,引き抜き操作から始める.次に15分の時間の制限を設けて挿入を開始し,最終的には全大腸をスムーズに挿入し,ポリペクトミーやEMRを施行できることを目標としている.また上部・下部消化管内視鏡とも,通常光観察,画像強調観察,拡大観察,色素内視鏡観察の読影力を向上し,治療方針を決定できることを目指している.ERCPは1年目に介助から参加し,処置の手順や注意点の指導を受ける.2年目からは術者となり上級医の技術指導を受け,研修終了までに内視鏡的結石除去術,胆道ステント留置術を完遂できることを目標としている.

現状の問題点と今後

現在消化器内視鏡に従事する常勤医は8名いるが,その内4名は外科医である.外科医は週に半日しか従事しておらず,非常勤医2名も週に半日のみである.夜間,休日の緊急内視鏡の当番を含めて内視鏡業務の多くを消化器内科常勤医4名と後期研修医が対応しており,内視鏡以外に外来やがんの化学療法等の業務もあり消化器内科の常勤医の不足が問題である.

現在内視鏡センターにはリカバリー用のリクライニングチェアが3台しかなく,検査枠をフル稼働して検査を行うためには,鎮静なしと鎮静下の検査枠を設定しなければならないのが現状である.また,検査前の既往歴,内服薬,アレルギーのチェック等患者の安全確認事項が増えたため検査開始前に1人の患者に要する時間が長くなっている.このため検査の回転が滞り医師が待機する時間が増える非効率的なことも起きており,看護師不足も問題の1つである.

現在新病院を建設中で平成32年に開院予定であり,検査室は3室から5室に,リカバリー用のリクライニングチェアは3台から7台に増設されハード面の問題はかなり改善されると考えられる.しかし,新病院開院に伴い検査数は増加することが予想され,高齢者や併存疾患を持つ患者も増加傾向にあることから,医師,看護師不足がさらに悪化することが懸念される.現在新病院開設に向けて前倒しで看護師を含めたコメディカルの確保を進めているが,消化器内科医の確保は進んでおらず消化器内科の常勤医の確保が急務である.

 
© 2019 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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