日本消化器内視鏡学会雑誌
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内視鏡室の紹介
日野市立病院
責任者:林  篤  〒191-0062 東京都日野市多摩平4-3-1
林 篤
著者情報
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2019 年 61 巻 4 号 p. 427-429

詳細

概要

沿革・特徴など

当院は昭和36年に町立国民健康保険病院として開設され,その後日野市立総合病院を経て,平成14年4月に日野市立病院として現在地に移転した.中央線豊田駅(新宿駅から中央特快で35分)から徒歩12分に位置しており,18万人の日野市民をささえる中核病院である.急性期300床,21診療科を有する二次救急病院であり,年間約3,900件の救急搬送を受け入れている.市民のまさかの時の医療ニーズに応えることを目標に,「市民に信頼され,選ばれる病院」を理念として職員一丸となって日々診療にあたっている.日本消化器内視鏡学会の指導施設,日本消化器病学会の認定施設であり,消化器内視鏡の研修体制も整備されている.内視鏡室では,病院の理念を踏まえて,安全・安心でかつ質の高い内視鏡検査・治療を目標として医師・看護師等が協力して診療にあたっている.

組織

内視鏡室は診療部の一部として位置づけられている.専属医師はおらず,消化器内科・呼吸器内科および消化器外科医が検査・治療を行っている.看護師は外来部門に所属しており,そのほとんどが内視鏡技師の資格を取得している.スコープの洗浄や検査・治療の補佐は外注のアシスタントが実施している.また,月1回開催される内視鏡室運営委員会において各種検討事項を討議している.

検査室レイアウト

 

 

 

当内視鏡室の特徴

内視鏡室は2階に位置しており,総面積は84.925m2である.内視鏡室専用の透視室はないため,1階の放射線科の透視室を使用している.全検査室に炭酸ガス送気装置を配備しており,下部消化管内視鏡やERCP・ESDに際しての患者の苦痛軽減に努めている.

スタッフ

(2018年10月現在)

医   師:消化器内視鏡学会 指導医4名,消化器内視鏡学会 専門医3名,その他スタッフ8名(非常勤4名),研修医など3名

内視鏡技師:Ⅰ種3名

看 護 師:常勤4名(Ⅰ種3名含む),非常勤1名

事 務 職:2名

そ の 他:6名

設備・備品

(2018年10月現在)

 

 

実績

2017年4月~2018年3月まで)

 

 

指導体制,指導方針

当院では消化器内視鏡研修カリキュラムを作成し,それに則った指導を行っている.内視鏡医の心構えとして,常に患者の苦痛の軽減と安全を心がけること,また看護師などとのコミュニケーションを密にしたチーム医療を心がけることを重視している.

当院は臨床研修病院であり,各学年2~3名の初期研修医を受け入れている.初期研修の段階では研修期間に限りがあるため,検査および処置の見学が中心となる.選択研修などで研修期間に余裕がある場合には,リスクの低い患者の上部消化管内視鏡の抜去時観察と写真撮影,さらには自力でのスコープ挿入までを目標としている.

後期研修医以降では,臓器の解剖を理解した上での適切な内視鏡操作の習得を目標とする.上部消化管内視鏡による観察と所見の記載,および生検や色素散布などの比較的侵襲の低い処置から始め,ポリペクトミー・EMR・ESDなどの侵襲性の高い処置へと進む.また,上級医とともに吐下血などの緊急内視鏡を行い,止血術などの緊急処置の習得も目指す.さらに,下部消化管内視鏡の挿入・観察を研修し,ポリペクトミー・EMRなどの処置を習得する.下部消化管内視鏡の挿入に際しては,大腸の解剖を十分に理解し,スムーズで安全・安心な検査を心がける.同様に,ERCPでは膵管・胆管の解剖を踏まえた,理にかなったカニュレーション技術を習得する.カニュレーションがある程度スムーズに行えるようになってから,ステント留置やEST・砕石などの処置の習得を目指す.下部消化管内視鏡とERCPに際しては,患者の苦痛軽減と安全の観点から,内視鏡挿入時間やカニュレーションの試行回数に一定の制限を設け,制限を超過した場合には上級医と交代することを心がけている.

また,検査・処置後にはその場で上級医とともに画像および手技の見直しを行い,改善点があればフィードバックする体制をとっている.

現状の問題点と今後

当院の内視鏡室の問題点として,まずは看護師の不足があげられる.内視鏡検査・処置の介助が可能な看護師が5名いるが,救急外来と兼務であり,夜勤にも組み込まれているために通常の内視鏡業務の人員確保が困難なことがしばしば経験される.全病院的にも看護師の確保には苦労しているところであり,今後も看護部と相談しつつ,安全な業務遂行に必要な人員確保を考えていきたい.

次にスペースの不足があげられる.現在のリカバリースペースは狭いうえに,隣とはカーテンで仕切られておりプライバシーの確保も難しい.放射線科透視室で検査を受けた患者は,近くにある救急外来のスペースを借りて休憩している.また,前処置室はあるものの上部消化管内視鏡検査前の咽頭麻酔のスペースであり,院内での腸管洗浄剤内服を希望する患者の要望に応えることは出来ていない.また,内視鏡室と透視室のフロアーが異なるためスタッフの導線が悪く,内視鏡室と透視室で並行して検査が行われる場合の業務の効率が低下する.当院では,病院の増築に伴う機能向上プランが始動しているため,これを機に内視鏡室のスペース確保とスタッフの導線の改善を検討しているところである.

さらに,当院では機器の老朽化により現在超音波内視鏡は施行していない.また,カプセル内視鏡・小腸内視鏡は未導入である.地域の中核病院としては積極的な導入が望ましいところであり,上記の機能向上プランを機にハード面での整備を検討する方針である.

また,消化管出血や胆道ドレナージなどの緊急内視鏡に対応できるスタッフの数が不足しており,夜間の緊急対応が不十分なところも問題である.スタッフのスキルアップや後期研修医の指導で対応しつつ,消化器内視鏡に興味を持った若手医師にとって魅力ある体制づくりを目指していきたい.

 
© 2019 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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