2019 年 61 巻 6 号 p. 1245-1246
症例:40歳代,男性.
主訴:心窩部痛.
現病歴:サバなどを生食され,その約7時間後から心窩部痛を自覚された.症状が改善されないため,当院へ紹介受診された.
初診時現症:腹部は自発痛あるも明らかな圧痛所見は認めなかった.
血液検査所見:WBC:13,800/μl(Neut:82.1%,Eosino:2.4%),CRP:1.03mg/dl.
胸腹部造影CT:食道全体に浮腫状の壁肥厚と周囲に液体貯留が認められた(Figure 1).CTでは胃や小腸には明らかな異常所見は認めなかった.

胸腹部CT造影所見:食道全体に浮腫状の壁肥厚をきたしており,周囲に液体貯留が認められた.
当初は原因不明の食道炎と考え,経過観察目的に入院された.翌日には疼痛は軽減されたが,食道病変の評価目的に上部消化管内視鏡検査を施行された.
上部消化管内視鏡検査:切歯から29cmの9時方向に白苔が付着しており,その近傍に虫体が疑われ,同部位は粘膜浮腫と食道内腔の狭細化をきたしていた(Figure 2).洗浄すると虫体が認められたため,把持鉗子で摘出した(Figure 3).他は縦走溝や輪状溝,粘膜浮腫と血管透見の低下が認められ(Figure 4),胃に虫体は認めなかった.アニサキス摘出後には疼痛は更に改善され,退院された.

上部消化管内視鏡検査:著明な浮腫をきたし,食道内腔の狭細化が認められた.9時方向に白苔が付着しており,近傍に虫体を疑う所見が認められた.

上部消化管内視鏡検査:把持鉗子でアニサキス虫体を摘出した.

上部消化管内視鏡検査:縦走溝と輪状溝が認められ,粘膜は浮腫状の変化をきたし,樹枝状血管の透見性が低下していた.
消化管アニサキス症のなかで胃アニサキス症が最も多く,食道アニサキス症は稀である.アニサキス症は内視鏡検査などにより偶然発見されることもあり,無症状の症例もあることから,アニサキス刺入によるⅠ型アレルギーやアナフィラキシーのアレルギー症状が疑われている 1).
自験例の内視鏡像の特徴として,好酸球性食道炎に認められる縦走溝や輪状溝,粘膜浮腫,血管透見の低下 2)をきたしていた.好酸球性食道炎は食物抗原に対するアレルギー疾患であり,診断指針の必須項目として食道機能障害に起因する症状と食道粘膜の生検で好酸球数15個以上/HPF存在することがあげられている 3).また参考項目として内視鏡やCTなどの画像検査があり,CT所見では小山 4)は広範な食道壁肥厚と周辺に波及する炎症性変化に合致する疾患として好酸球性食道炎をあげている.
2000年から2017年まで医学中央雑誌で「アニサキス」「食道」,Pub Medで「anisakiasis」「esophagus」をキーワードに検索したが,食道アニサキス症の報告は発見と摘出に着目しており,特徴的な内視鏡像や好酸球性食道炎に類似するものは認めなかった.自験例では生検未施行のため好酸球数が確認されていないが,問診にて発症前に食道機能異常に伴う自覚症状はなく血液検査でも好酸球増多を認めなかった.内視鏡像ではアニサキス付着部位は浮腫が著明のため,送気による拡張が不十分のため縦走溝や輪状溝の所見を認めなかったが,他の部位は好酸球性食道炎に類似していた.摘出前後の内視鏡像がないため比較できないことなどから確定診断には至らなかったが,内視鏡像とCT所見,そして経過からアニサキス症による急性の二次的なアレルギー症状による好酸球性食道炎を発症した可能性が高く,病態を理解するうえで示唆に富む貴重な画像であると考えられ,報告した.
本例はGastroenterology. 2018 May;154(6):e7-e8. An Unusual Cause of Severe Epigastric Pain. に掲載された症例と同一症例である.
本論文内容に関連する著者の利益相反:なし