2019 年 61 巻 6 号 p. 1345-1347
当院は昭和21年に開院し,平成9年には厚生省指定臨床研修病院の指定を受け,京都市北東部地域の医療圏を中心とした地域の基幹病院として活動している.一般医療だけでなく,救急医療,高度先進医療などにも力を入れており,京都府立医科大学の教育関連病院として臨床研修体制を充実させている.
平成26年には,独立行政法人地域医療機能推進機構に移行され,現在の「京都鞍馬口医療センター」に改称した.地域のニーズに答えるため,平成28年には地域包括ケア病棟ならびに訪問看護ステーションを開設し,さらなる地域医療に貢献している.
その中で,消化器内科は内科部門の主翼を担う部署として診療を行っている.上部消化管内視鏡の半数近くを占める人間ドッグをはじめとし,院内他科からの内視鏡依頼やコンサルトも積極的に引き受け,近隣の医院や病院からの緊急紹介にも迅速に対応している.(許可病床数300床,平成29年度内科外来患者数45,469人,内科入院患者数2,725人,そのうち消化器内科入院患者数961人.)
組織内視鏡センターは診療支援部門の一部として位置づけられている.センター長のもと,内視鏡検査・治療は消化器内科医師を中心に行っている.
検査室レイアウト
内視鏡室の面積は59.3m2,透視室の面積は合計35.3m2である.主に上部消化管内視鏡検査は内視鏡室で,下部消化管内視鏡検査,超音波内視鏡検査,胆膵系内視鏡検査は透視室で行っている.下部消化管内視鏡検査の前処置は主に自宅で飲用を基本としている.昨今の高齢者の増加や近医からの内視鏡依頼紹介などのニーズに答えるため,一部の患者は内科処置室で前処置を行っている.鎮静希望症例では,問題が無い限り積極的に鎮静を行い,苦痛の少ない内視鏡検査を心掛けている.鎮静後は内科処置室やリカバリールームで経過観察を行い,意識の完全覚醒・バイタルの安定などを確認した後に帰宅を許可している.
(2018年12月現在)
医 師:消化器内視鏡学会 指導医2名,消化器内視鏡学会 専門医2名,その他スタッフ2名,研修医など2名
内視鏡技師:Ⅰ種7名
看 護 師:常勤10名,非常勤2名
事 務 職:4名
そ の 他:洗浄員3名
(2018年12月現在)
(2017年4月~2018年3月まで)
初期臨床研修(医師1,2年目)では消化器全般の知識習得と診療を優先させている.特に1年目は当院の内科全体を半年かけてローテーションし,最低でも週2回内視鏡室での検査・治療を見学できる状態にしている.また希望する研修医には検査・治療の介助を行えるように配慮し,消化器分野に興味を持てる環境作りを行っている.十分な知識と経験を得た研修医には,指導医の監督のもと一部の内視鏡操作・観察を行い,さらなる経験を積めるように段階的なプログラムを用意している.
消化器専攻医(医師3年目以降)は,指導医立ち合いのもと上部消化管内視鏡の引き抜き観察から始まり,適切な内視鏡操作・写真撮影の訓練を行う.さらに,指導医が「内視鏡操作が可能」と判断した専攻医には食道入口部からの挿入を許可している.
基本的には上部消化管内視鏡の操作・観察の習得に1年かけ,診断・生検などが臨床的に問題なしと判断した場合に(概ね100件前後),下部消化管内視鏡の引き抜き・観察を開始する.下部消化管内視鏡の操作が可能になった場合,肛門からの挿入を許可する.指導医の立ち会いのもと,挿入を行い,患者の苦痛がない範囲で深部挿入を目指す.
緊急内視鏡処置や胆膵内視鏡は可能な限り立ち合う事としており,下部消化管内視鏡の挿入が安定するころより,緊急処置カメラも術者として開始することになる.
その他,週1回の内視鏡カンファレンス,内科外科合同カンファレンスには研修医からセンター長まで全員で参加しひとつひとつの症例について議論する.研修医や専攻医が悩むようなもしくは相談が必要な症例についても,常に相談できる雰囲気作りを行っており,共に考え,可能な限り分かりやすく説明,指導することを心掛けている.
2018年度より新専門医制度が開始され,消化器以外の専攻医も消化器疾患を学ぶ事が求められている.当然内視鏡スクリーニング,処置などの適応・禁忌についても同様に習熟することが求められている.しかし,多忙な現場では消化器専攻医に対する指導と比べると他科専攻医の指導に割ける人的,時間的割合が少なくなっている.他科専攻医もカンファレンスには可能な限り参加してもらう事で,最低限の知識が得られるようにする努力をしているが,制度自体の問題点と言わざるを得ないと感じる.
現在のところ前述のように上部内視鏡検査と下部内視鏡検査を別々の場所で行っており,看護師・洗浄員はそれぞれ内視鏡室・透視室の専任に近い状態となっている.そのため時間帯によっては看護師・洗浄員の人的パワーを無駄にしているという問題点があった.物理的な制約で部屋自体の変更は困難であるため,可能な限り内視鏡室・透視室のメンバーの交流を図り,共通の認識で内視鏡検査や処置が行える環境作りを行っている.今後病院建て替えなどのタイミングで内視鏡室,透視室を統合した内視鏡センターの設立を目指している.
また,小腸内視鏡を保有していないため,これまでは小腸観察・処置や術後再建腸管の胆膵内視鏡は施行できないことが多かった.京都府立医科大学病院と距離的に近いため,必要な症例は大学病院に紹介していたが,近い将来には当院にも小腸内視鏡導入を考慮しており,この問題は解決する予定である.