日本消化器内視鏡学会雑誌
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スクリーニング大腸内視鏡検査時におけるメチレンブルーの経口投与の有効性
杉本 光繁
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2019 年 61 巻 9 号 p. 1719

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【背景と目的】メチレンブルー(MB)を散布した色素内視鏡検査は結腸直腸腫瘍の検出率向上に寄与することが知られている.MBを混入させたpHおよび時間依存性の溶出製剤(MB-MMX)の内服により,MBを直接結腸や直腸粘膜に塗布することが可能となる.本検討は,MB-MMXの使用が大腸内視鏡検査時において結腸直腸腫瘍の検出率向上に寄与するか否かを明らかにするために計画された.

【方法】2013年12月から2016年10月までの間に,欧米の20施設で結腸直腸癌スクリーニングのために大腸内視鏡検査を予定した1,205人(50~75歳)を対象として検討された.患者を無作為に200mgMB-MMX,プラセボ,100mgMB-MMXの3群に2:2:1の割合で割り当て,4-Lポリエチレングリコールをベースにした腸用製剤とともに投与された.その後エキスパートにより大腸内視鏡検査が施行され,中央審査でダブルチェックが行われた.本研究の主要評価項目は1個の腺腫または癌を認めた患者の割合(腺腫検出率[ADR])とし,副次評価項目は偽陽性(非腫瘍性ポリープの切除率)および有害事象発症率とした.

【結果】プラセボ群(229/479例,47.81%)よりもMB-MMX群(273/483例,56.29%)で有意にADRが高く(オッズ比[OR]:1.46,95%CI:1.09-1.96),非腫瘍性ポリープでも,プラセボ群(168/479例,35.07%)よりもMB-MMX群(213/485例,43.9%)で有意に高かった(OR:1.66,95%CI:1.21-2.26).また,5mmの腺腫を有する患者の割合は,プラセボ群(148/479例,30.90%)よりもMB-MMX群(180/481例,37.11%)で有意に高かった(OR:1.36,95%CI:1.01-1.83)が,腫瘍の形態が隆起型または巨大病変の検出には群間差はなかった.偽陽性率も群間差は認めなかった(プラセボ群:97/326例[29.75%],MB-MMX群:83/356例[23.31%]).

【結論】スクリーニングの大腸内視鏡検査を受けた患者を対象としたMB製剤の経口投与による結腸直腸腫瘍の検出率はADRで8.5%も向上し,非腫瘍性病変の摘出率を増加させることがないことからも非常に有効性が高い試薬であると思われた.

《解説》

本邦では大腸癌罹患者数や死亡者数が増加している.2017年度の日本対がん協会の便潜血検査による大腸がん検診の報告では,受診者数253万7,352人のうち,要精検率6.07%,精検受診率68.7%,がん発見率は0.17%と報告されている.一次検診のスクリーニングとしての便潜血検査だけでなく,二次検診の大腸内視鏡検査で効率的に腫瘍を検出できるか否かが大腸がん診療に重要と考えられる.現在,検出率の向上のために新たな内視鏡機器の開発や人工知能診断ソフトウエアの開発,インジゴカルミンやMBによる色素内視鏡検査の併用など種々の工夫が行われている.MBによる色素内視鏡検査は結腸直腸腫瘍の検出に有効であるが,検査に時間を要することが問題とされてきた.本検討で使用されたMethylene Blue MMXは,大腸デリバリー技術により,経口投与させたMB製剤を大腸まで到達させて直接結腸直腸の腫瘍を染色できることが特徴であり,検査前に服用することで,結腸直腸の腫瘍が染色され,病変部位の発見率を向上させる.実際に本検討ではMB-MMXの使用でプラセボと比較して結腸直腸の腺腫,特に非ポリープ状および小腺腫の検出に有効性を示し,更に偽陽性検出率や有害事象の発症率に影響を及ぼさなかったことからも,大腸がんを巡る日常臨床の現場でMB-MMXが活躍する可能性が考えられる.

文 献
 
© 2019 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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