日本消化器内視鏡学会雑誌
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61 巻, 9 号
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総説
  • 日山 亨
    2019 年 61 巻 9 号 p. 1621-1629
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/20
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    胆膵内視鏡が関係し,平成30年12月末に判例検索して,判決が入手可能だった訴訟事例12事例(病院側勝訴:5事例,敗訴:7事例)を検討した.すべて偶発症により患者が死亡したものであった.偶発症は重症急性膵炎が8事例,消化管穿孔が3事例,敗血症が1事例であった.争点となっていたのは,(1)事前の説明(4事例),(2)内視鏡の洗浄・消毒・保管等(1事例),(3)適応(1事例),(4)内視鏡手技(9事例),(5)検査・治療後の対応(9事例)であった.内視鏡の接触により腸管穿孔を生じた場合,手技上の過失が認められている.急性膵炎およびその重症化の診断が遅れた場合や十分な治療がなされなかった場合,担当医の過失が認められている.穿孔を起こさない技量を持つこと,また,急性膵炎発症時には,急激に重症化することがあることから,緊張感を持って適切な検査・治療を行う必要がある.

症例
  • 武居 友子, 矢作 雅史, 猪股 研太, 亀山 哲章, 緒方 謙太郎, 大森 泰
    2019 年 61 巻 9 号 p. 1630-1635
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/20
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    症例は73歳,男性.切歯より25-29cmに,病変内にRokitansky憩室を伴う,半周性の早期食道癌を認めた.EUSで憩室部分の筋層の欠損がないことを確認後,全身麻酔下にESDを施行した.憩室底部は繊維化が高度であり,剝離後の観察では,筋層と外膜は保たれているが,縦隔が透見された.術後に軽度の縦隔炎を合併したが,抗菌薬投与により治癒した.Rokitansky憩室は,全層性の真性憩室だが,慢性の炎症により固有筋層が菲薄化もしくは欠損している場合があり,穿孔のリスクが高い.そのため,Rokitansky憩室にかかる早期食道癌に対する内視鏡治療の適応は,化学放射線療法など選択も含めて充分に検討すべきであり,EUSによる憩室内の筋層の確認と,穿孔に備えた準備が必要である.

  • 島田 雅也, 天谷 奨, 加藤 陽介, 垣内 大毅, 斎藤 健一郎, 高嶋 吉浩, 宗本 義則, 三井 毅, 須藤 嘉子, 中沼 安二
    2019 年 61 巻 9 号 p. 1636-1642
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/20
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    症例は59歳男性.人間ドックの上部内視鏡検査にて,切歯28cm〜37cmの中下部食道に境界不明瞭な全周性の斑状黒色調領域を指摘.生検にて悪性黒色腫と診断された.病変は広範な0-Ⅱb型であり,造影CT検査・PET検査にて転移を認めず,外科切除の意義は大きいと判断し,腹臥位胸腔鏡下食道亜全摘術+3領域リンパ節郭清を施行.病理組織学的検査所見にて,重層扁平上皮基底部に限局したメラニン沈着を伴う異型細胞を認めた.免疫染色にて,肉眼的黒色領域を超えて全周性に長形16.4cmの広範な異型メラノサイトの進展を認めた.リンパ節転移はなく,T1a-LPM N0M0;Stage 0と診断された.術後化学療法は施行しておらず,慎重に経過観察中であるが,術後約1年では再発は認めていない.深達度Mに留まり早期で切除しえた食道原発悪性黒色腫は非常に稀であり.若干の文献的考察を含め報告する.

  • 阿部 出, 大矢内 幹, 猪股 優志, 岩渕 利光, 伊藤 博敬, 佐藤 雄一郎, 五十嵐 勇彦
    2019 年 61 巻 9 号 p. 1643-1649
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/20
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    十二指腸憩室出血の6例を経験した.上部消化管出血の症例において,食道,胃,十二指腸球部までに明らかな出血源が認められない場合や,画像検査で十二指腸憩室を認める場合は,十二指腸憩室出血を鑑別に挙げて,水平部まで慎重に観察することが望ましい.直視鏡に透明フードを装着することで,十二指腸憩室内へのアプローチ,視野確保が比較的容易となり,憩室内の凝血塊,食物残渣の除去にも有用であった.十二指腸憩室の多くは仮性憩室であり,出血源として露出血管を認めることが多いことから,組織破壊が少ないクリップ法は安全性に優れ,有用な止血法と考えられた.

  • 島田 高幸, 五十嵐 裕章, 栗崎 雅史, 花岡 有紀, 山下 浩子
    2019 年 61 巻 9 号 p. 1650-1655
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/20
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    症例は60歳の男性,黒色便と息切れを主訴に当院へ紹介された.緊急上部消化管内視鏡検査で十二指腸球部に亜有茎性で頂部に凝血塊の付着した潰瘍を有する粘膜下腫瘍を認めた.露出血管の処理にクリッピングを用いたが腫瘍の可動性のため難渋,最終的に内視鏡的食道静脈瘤結紮術(EVL)で使用しているligating deviceを用いて内視鏡的結紮術を施行し,止血を得た.3日後に十二指腸粘膜下腫瘍に対して超音波内視鏡を施行したところ,内部均一な高エコー像を認め,十二指腸脂肪腫と診断した.再出血予防のため内視鏡的に切除し,病理組織検査にて25×16×18mmの大きさの脂肪腫と診断された.本例のような出血性十二指腸脂肪腫に対する止血に内視鏡的結紮術が有用と考えられたので報告する.

  • 早坂 研, 石田 裕嵩, 斉藤 真由子
    2019 年 61 巻 9 号 p. 1656-1662
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/20
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    症例は76歳,男性.腹痛にて受診し,CTにて胃石症およびイレウスと診断した.回腸末端に含気のあるモザイク状の腫瘤を認め,落下胃石の嵌頓によるイレウスが疑われた.結石嵌頓部位が回腸末端であったため,大腸内視鏡にて到達可能で,スネアを用いて結石を摘出することによりイレウスを解除した.胃内の残存結石に対しても2チャンネルの上部消化管内視鏡を用いて,スネアおよび鉗子で結石を破砕して摘出した.胃石によるイレウスは一般的に外科手術による摘出の適応となる場合が多いが,適切な画像診断で結石の位置を把握することによって,内視鏡的治療を選択して手術を回避した.

  • 稲垣 克哲, 岡 志郎, 松本 健太, 山下 賢, 住元 旭, 檜山 雄一, 二宮 悠樹, 有廣 光司, 田中 信治, 茶山 一彰
    2019 年 61 巻 9 号 p. 1663-1669
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/20
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    症例は39歳,女性.CA19-9上昇精査のため施行された大腸内視鏡検査で,上行結腸に境界不明瞭な径40mm大,粘膜下腫瘍様の隆起性病変を認めた.表面は非腫瘍性のpit patternを呈し,超音波内視鏡検査では第2〜4層にかけて壁肥厚を伴う低エコー腫瘤として描出された.診断的治療目的に腹腔鏡下回盲部切除術を施行した.病理組織学的には粘膜固有層から漿膜下にかけて神経線維と紡錘形細胞がびまん性に増殖し,内部に大型の神経節細胞が散見され,神経節細胞腫と診断した.Neurofibromatosis-Ⅰや多発性内分泌腫瘍症候群に合併しない大腸神経節細胞腫は稀で,その中でもびまん性増殖を呈するものはさらに稀であり,今後さらなる症例の蓄積が必要である.

手技の解説
  • 大石 英人
    2019 年 61 巻 9 号 p. 1670-1682
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/20
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    経皮経食道胃管挿入術percutaneous trans-esophageal gastro-tubing(PTEG/ピーテグ)1),2)は,経皮内視鏡的胃瘻造設術percutaneous endoscopic gastrostomy(PEG/ペグ) 3),4)の実施が不能もしくは困難な症例に対して,1994年に考案開発された代替法である.非破裂型穿刺用バルーンrupture-free balloon(RFB)を用いた超音波下穿刺による頸部食道瘻の造設術と,X線透視下に頸部食道瘻からのチューブの挿入留置術を組み合わせた簡便かつ安全で低侵襲な消化管のIVR手技であり,PEGと同様に経管経腸栄養法や腸管減圧法に主に用いられている.本稿では,PTEG実施時のコツについて述べる.

  • 中塚 明彦, 神谷 亮一, 近藤 公亮, 熊谷 一郎, 安達 淳治
    2019 年 61 巻 9 号 p. 1683-1690
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/20
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    経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)は一般的な治療手技となっているが,時に横行結腸や腸間膜が障害となり予期せぬ誤穿刺や施行不能となる.PEG施行前にCT検査をすることはこのような障害物の検出に有用であり,われわれのPEG前CTの経験から,左側臥位で胃内に空気を注入することが障害の解消とC-PEG(大腸内視鏡補助下経皮内視鏡的胃瘻造設術)対象者の絞り込みに望ましいと考えられる.CTで胃の腹側に横行結腸や腸間膜が介在する場合には,大腸内視鏡によって胃に重なる横行結腸を足側に移動させPEGが可能となる(C-PEG).当院で2006年から2017年の間にPEG前にCTを施行した症例は426例あった.そのうちCTによって38例をC-PEGの適応と判断し,うち37例にC-PEGを施行できた(成功率97.4%).本稿では,われわれのC-PEGの取り組み方と術前CT検査を含めた実際の方法を紹介する.

資料
  • 辻 敏克, 稲木 紀幸, 島田 麻里, 山本 大輔, 北村 祥貴, 黒川 勝, 吉田 尚弘, 比企 直樹, 土山 寿志
    2019 年 61 巻 9 号 p. 1691-1700
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/20
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    【背景・目的】腹腔鏡内視鏡合同手術(LECS)は,多くの施設で行われているが,周術期管理について詳細に言及した文献や報告はない.enhanced recovery after surgery(ERAS)が浸透する中で全国におけるLECSの周術期管理の実態を把握するためにアンケート調査を行った.

    【対象・方法】LECS研究会参加施設にアンケート調査を実施した.

    【結果】アンケート回収率は71.2%(42/59施設)であった.半数の施設でクリニカルパスを使用していたが,LECS用のパスはうち29%であった.半数以上の施設において手術前日の食事は普通食,術前飲水可能時期は入室の数時間前まで,硬膜外麻酔を使用していた.最多回答については,硬膜外カテーテル抜去時期では術後2~3日目で72%,尿道カテーテルの抜去時期では術後1~2日目で67%,術後飲水開始時期では術後1~2日目で90%,術後食事開始時期では術後2~3日目で81%であった.

    【結論】LECS専用のクリニカルパスの使用率は低く,LECS後にERASをさらに追求できる可能性も示唆され,今後の検討課題と考えられた.

  • 岸川 純子, 畑 啓介, 風間 伸介, 安西 紘幸, 品川 貴秀, 室野 浩司, 金子 学, 佐々木 和人, 安田 幸嗣, 大谷 研介, 西 ...
    2019 年 61 巻 9 号 p. 1701-1711
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/20
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    【背景】罹病期間の長い潰瘍性大腸炎は大腸癌のリスク因子とされ,このような患者に対してはサーベイランス内視鏡が行われている.今回潰瘍性大腸炎関連腫瘍(大腸癌およびdysplasia)の発生率・リスク因子を明らかにするため解析を行った.

    【方法】1979年から2014年の間に東京大学腫瘍外科でサーベイランス内視鏡を行った289人の潰瘍性大腸炎患者を対象とし,腫瘍の累積発生率およびそのリスク因子を調査した.腫瘍発生患者をサーベイランス群と非サーベイランス群に分類し,ステージと全生存率について解析した.

    【結果】潰瘍性大腸炎発症後,10・20・30・40年後におけるdysplasiaの累積発生率は3.3・12.1・21.8・29.1%であり,大腸癌の累積発生率は0.7・3.2・5.2・5.2%であった.全大腸炎型では有意に腫瘍発生が多く見られた(P=0.015,hazard ratio,2.96).

    【結論】東京大学腫瘍外科におけるサーベイランス内視鏡対象患者の腫瘍発生率およびリスク因子を明らかにした.全大腸炎型は腫瘍のリスク因子であった.

内視鏡室の紹介
最新文献紹介
  • 杉本 光繁
    2019 年 61 巻 9 号 p. 1719
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/20
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    【背景と目的】メチレンブルー(MB)を散布した色素内視鏡検査は結腸直腸腫瘍の検出率向上に寄与することが知られている.MBを混入させたpHおよび時間依存性の溶出製剤(MB-MMX)の内服により,MBを直接結腸や直腸粘膜に塗布することが可能となる.本検討は,MB-MMXの使用が大腸内視鏡検査時において結腸直腸腫瘍の検出率向上に寄与するか否かを明らかにするために計画された.

    【方法】2013年12月から2016年10月までの間に,欧米の20施設で結腸直腸癌スクリーニングのために大腸内視鏡検査を予定した1,205人(50~75歳)を対象として検討された.患者を無作為に200mgMB-MMX,プラセボ,100mgMB-MMXの3群に2:2:1の割合で割り当て,4-Lポリエチレングリコールをベースにした腸用製剤とともに投与された.その後エキスパートにより大腸内視鏡検査が施行され,中央審査でダブルチェックが行われた.本研究の主要評価項目は1個の腺腫または癌を認めた患者の割合(腺腫検出率[ADR])とし,副次評価項目は偽陽性(非腫瘍性ポリープの切除率)および有害事象発症率とした.

    【結果】プラセボ群(229/479例,47.81%)よりもMB-MMX群(273/483例,56.29%)で有意にADRが高く(オッズ比[OR]:1.46,95%CI:1.09-1.96),非腫瘍性ポリープでも,プラセボ群(168/479例,35.07%)よりもMB-MMX群(213/485例,43.9%)で有意に高かった(OR:1.66,95%CI:1.21-2.26).また,5mmの腺腫を有する患者の割合は,プラセボ群(148/479例,30.90%)よりもMB-MMX群(180/481例,37.11%)で有意に高かった(OR:1.36,95%CI:1.01-1.83)が,腫瘍の形態が隆起型または巨大病変の検出には群間差はなかった.偽陽性率も群間差は認めなかった(プラセボ群:97/326例[29.75%],MB-MMX群:83/356例[23.31%]).

    【結論】スクリーニングの大腸内視鏡検査を受けた患者を対象としたMB製剤の経口投与による結腸直腸腫瘍の検出率はADRで8.5%も向上し,非腫瘍性病変の摘出率を増加させることがないことからも非常に有効性が高い試薬であると思われた.

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