日本消化器内視鏡学会雑誌
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内視鏡室の紹介
北播磨総合医療センター
責任者:佐貫 毅  〒675-1392 兵庫県小野市市場町926-250
佐貫 毅
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2020 年 62 巻 1 号 p. 93-96

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概要

沿革・特徴など

当医療センターは神戸大学からの提案を基として,2013年10月に旧三木市立三木市民病院と旧小野市立小野市民病院が統合して開院した.当院の特徴としては,北播磨医療圏における中核病院として,安全で質の高い高度急性期医療を積極的に推進することや,総合病院として合併症を有する患者や難病疾患に対しても積極的に取り組んでいる点があげられる.内視鏡診療においては,とくに膵胆道内視鏡診断治療(ERCP/EUS関連手技)及び消化管診断治療内視鏡(ESD/LECS)などを得意分野としており,カプセル内視鏡やバルーン内視鏡によるIBDや小腸疾患診断治療などにも積極的に取り組んでいる.消化器内科は外科,放射線科,病理診断科とシームレスに連携しており,極めて各科間の風通しも良い.これらの利点を生かし,加えて地域の医療機関との連携を深めて,地域で完結する医療を目指している.人間ドックにも注力しており,全国に先駆けて膵臓オプション(MRCP及びEUSをセットで実施)を数年前より始めており,地域外からの希望者も多く好評のため,予約が取りづらい状況となっている.

組織

当医療センター内で内視鏡検査室は消化器内科が管理しているが,業務は中央放射線検査室と連携している.検査・処置は,内視鏡検査室及び中央放射線TV室を使用している.内視鏡業務に従事する看護師は救急・放射線所属となっている.なお呼吸器内視鏡業務は呼吸器内科が行っている.

検査室レイアウト

 

 

 

当内視鏡室の特徴

内視鏡室は本院の1階に位置し,隣接する放射線TV室と一本の動線により往来が可能である.総面積は内視鏡室のみで450m2,当科が主に使用しているX線TV室を合わせると680m2であり,内視鏡受付,待合,リカバリールーム,検査室(上部3室,下部2室,放射線透視室3室),洗浄室,スタッフルームなどから構成されている.

上部内視鏡検査及び外来扱いの超音波内視鏡検査を午前中に行い,午後は下部内視鏡検査に加えて,ERCP/interventional EUSなど胆膵内視鏡,バルーン小腸内視鏡などの特殊内視鏡や,ESDなどの内視鏡治療を放射線TV室も使用しながら常時並行で行っている.

内視鏡検査は全例でCO2送気を使用しており,希望者には運転を行わない条件で鎮静剤(ミダゾラム)による苦痛軽減につとめている.

また当医療センターは2019年度より「兵庫県指定がん診療連携拠点病院」に認定されており,胆膵領域や消化管の悪性疾患に対して,先進的な診断と低侵襲治療を提供している.

救急医療に関しては,24時間365日対応しており,緊急疾患に対しては,原則として全例で受け入れを行っている.また前述のように外科や放射線科など関連診療科との連携も密であり,消化器内視鏡での対応困難な症例に対しても常時対応可能となっている.

スタッフ

(2019年6月現在)

消化器内視鏡学会資格を持つ外科医を含む

医   師:消化器内視鏡学会 指導医3名,消化器内視鏡学会 専門医4名,その他スタッフ6名,研修医など2名

内視鏡技師:Ⅰ種5名

看 護 師:常勤22名,非常勤1名

設備・備品

(2019年6月現在)

 

 

実績

(2017年4月~2018年3月まで)

 

 

指導体制,指導方針

当医療センターの初期研修医は1学年12名程度であり,希望者は年間で1~2カ月間,内科研修期間中に当科での研修を行う.研修医に対しては検査や処置の介助にも積極的に参加させることによって,「戦力」となる様に育成を行っている.3年目以降の消化器内科専攻者に対しては新専門医制度プログラムによって消化器内視鏡技術の習得に遅れが生じることがない様に,他科との協力で継続的な内視鏡トレーニングを可能とする体制を取っている(他科研修中も週3-5コマ,内視鏡や腹部エコー枠が存在し,十分な内視鏡症例数を持つことができる).

内視鏡トレーニングに関しては,初期研修医向けにファントムトレーニングモデルを用いた体験実習を月1回程度行っている.また若手医師に対して,年1回程度でブタの胃を用いたESDなどのhands on seminarを院内で開催している.院外での講習会やセミナーに対して病院からの助成が設定されており,積極的な参加が可能である.

上部内視鏡検査に関しては,できるだけ早い段階での習得を目指しており,初期研修医の頃からベッドサイドで指導を行っている.スコープの引き抜き,胃内の観察,鎮静患者に対する挿入や観察,非鎮静患者に対する検査,内視鏡処置と段階的にステップを踏むことにより,正統で安全な内視鏡スキルの習得が可能となっている.また上部内視鏡の経験数が200件以上になれば,下部内視鏡検査の資格が与えられ,平易な症例から優先的に検査できる様に調整を行っており,短期間で多くの症例を経験することが可能となる.

胆膵内視鏡検査に関しては,解剖的知識や内視鏡理論,各種デバイスの特性についての教育を徹底的に行っている.検査の流れや偶発症に対する対応について理解した上で,介助から開始し,後方斜視鏡の挿入,処置後乳頭への挿管や切石,naive乳頭への挿管,EST,ステント留置,膵管へのアプローチ,EUS下処置などを,エキスパートによる指導の元で技量に応じて習得可能となる.

内視鏡技術のみならず,基礎知識の習得にも力を入れており,研修医及び当科全医師が参加する形式で,消化管読影,胆膵疾患,化学療法,肝疾患,胆膵手術症例についての各カンファレンスを週3-4回,朝8時より約30分間行っている.また病理診断科の協力により,読影カンファレンスや手術症例カンファレンスの際には病理医が同席し,病理所見と内視鏡所見の対比を習慣的に行っている.当院は地域医療の核となるセンター病院であるため,24時間体制で救急疾患に対して対応している.救急バックアップを若手医師と上級医とのペアで配置しており,対応した若手医師が優先的に術者となるために,比較的早い段階で緊急内視鏡技術の習得が可能となっている.

学会活動も積極的に行い,地方会/総会で年間のべ30回以上の口演/ポスター発表を行い,論文発表も年間2-4本を継続的に実施している.

現状の問題点と今後

内視鏡施設や設備などのハード面や,医師数といったソフト面では非常に恵まれた環境と考えているが,開院当初の予想を大きく上回ったペースで内視鏡件数が増加しており,より効率的な検査や処置が求められている.その中で診療と教育を両立するためには,多分野に対して常にバランスをとる必要性がある.

内視鏡件数の増加に加えて,緊急内視鏡検査が多いために,日勤帯で処置が終了しないことが日常的となっている.看護師をはじめとしたスタッフの献身的なサポートにより何とか成り立っている状況ではあるが,看護師は救急外来や放射線業務も兼ねているため,人員不足は深刻な問題である.今後はメディカルスタッフの人員確保や効率化などの制度変革が望まれる.

また,新専門医制度の研修プログラムにより,3年目~5年目専攻医の常在が困難となっており,新制度前の若手医師に対する負担が数年間は軽減されない状況である.新制度下においても消化器内視鏡医の育成に支障が生じない様に,教育の質を上げるだけでなく,十分な内視鏡経験ができる様に,病院を挙げた様々な取り組みが必要となってきている.

 
© 2020 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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