日本消化器内視鏡学会雑誌
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内視鏡室の紹介
九州大学病院 光学医療診療部
責任者:大塚隆生(光学医療診療部・部長)  〒812-8582 福岡県福岡市東区馬出3-1-1
藤岡 審森山 大樹大塚 隆生
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2020 年 62 巻 1 号 p. 97-100

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概要

沿革・特徴など

九州大学病院は1867(慶応3)年に黒田藩の藩校として設立された西洋医学の医育機関「賛生館」に端を発する.その後,福岡医院,県立福岡病院を経て,1903年に3番目の帝国医科大学として京都帝国大学福岡医科大学および同附属医院が設立された.1911年には九州帝国大学創立に伴い九州帝国大学医科大学附属医院へ,戦後に九州大学医学部附属病院へと改称され,現在に至る.

光学医療診療部は1999年に中央診療部門の一部門として設置され,消化器内視鏡,気管支内視鏡の診療を担っている.旧病棟からの移転に伴い2006年より現北棟1階に内視鏡室が設置され,現在8つの検査室が稼働している.

組織

光学医療診療部は中央診療部門の一部門として独立しており,9名の専属医師(教員3名,医員6名)と看護師,臨床工学技士が内視鏡業務に従事している.一方で,九州大学病院全体では内科系診療科,外科,放射線科,産婦人科,小児外科の100名程の医師が消化器内視鏡検査を行っている.また,気管支鏡検査は呼吸器内科が主に行っている.光学医療診療部はこれらの診療科と連携を取りながら,内視鏡業務における安全管理や運営に関して中心的役割も担っている.

検査室レイアウト

 

 

 

当内視鏡室の特徴

検査室は各個室となっており,また,ESDなど治療内視鏡に対応した広目の部屋を3室有している.また,気管支内視鏡用に一室は陰圧管理とし,検査室内にCアーム型X線透視装置を常備している.バルーン式小腸内視鏡およびERCPは内視鏡室外のX線透視室に内視鏡と光源を搬出して行っている.

すべての検査室の全体像および内視鏡画像,鎮静剤使用患者のバイタルサイン(血圧・脈拍・SpO2)はナースステーションおよび医師記録室のモニターで確認可能であり,安全管理の上で役立っている.また,2018年度より内視鏡検査開始時のタイムアウトを全例で導入しており,検査・治療に際してスタッフ間での情報共有に努めている.

大学病院の使命として先進的な内視鏡検査や治療の導入は必須であり,限られた予算をいかに効率的に運用するか機器整備計画を継続的に行っている.2018年度は,食道癌放射線治療後再発症例を対象とした光線力学療法を新規導入した.

スタッフ

(2019年6月現在)

医   師:指導医7名,専門医23名

内視鏡技師:Ⅰ種4名

看 護 師:常勤9名,非常勤5名

事 務 職:2名

洗浄助手:5名

設備・備品

(2019年6月現在)

 

 

実績

(2018年4月~2019年3月)

 

 

指導体制,指導方針

ここでは消化管内科の指導体制を記載する.

1.初期臨床研修医

卒後1年目の研修医は受け持ち症例を中心に内視鏡検査・治療の見学や生検など簡易な検査介助を行いつつ,内視鏡診断学に関する指導を受ける.また,消化管モデルや内視鏡シミュレーターを用いて内視鏡の基本操作を学ぶ.

卒後2年目の研修医は,ESDや緊急内視鏡の介助など,より専門的な治療に対してチームの一員としての役割を担う.さらに,上級医の指導のもとで実際の患者を対象に上部内視鏡検査を行う.まずは上級医が観察した後の簡単な内視鏡操作と抜去から開始し,その後,鎮静下の患者へのスクリーニング内視鏡を行う.研修ローテ―トの都合上2カ月程度の研修期間となることが多いため,研修期間中の内視鏡診療の習熟度は個人差があるが,上部内視鏡の挿入から抜去までの一連の検査手技の習得を目標とする.

2.後期臨床研修医

卒後3年~5年の者が該当し,現状では大学医局へ入局の上で医員として勤務している.また,同期間中には大学病院以外の市中病院にも出向し,幅広く消化器疾患の経験を積む.内視鏡診療に関しては初期臨床研修に引き続き上部内視鏡検査の基本的技術の習得から開始し,卒後3年目の夏頃から上級医の指導のもとで下部内視鏡検査や消化管出血に対する内視鏡的止血術を開始する.下部内視鏡検査の挿入技術がある程度安定した段階で,大腸ポリープに対するpolypectomy/EMRを開始する.

また,内視鏡やX線画像所見に基づいた様々な消化器疾患および消化管癌深達度に関する診断能力の向上を目的として,読影形式による症例検討会を病理医の協力のもとで毎週開催している.後期研修終了時にはルーチン検査のみならず,適切な診断のもとにポリープ切除や緊急内視鏡検査が完遂できるようになる,いわゆる消化器内視鏡医として最低限の「独り立ち」を目指す.

3.後期研修修了後

大学院生や研究生として研究活動に従事しながら,超音波内視鏡やバルーン内視鏡,ESD,消化管ステント留置といった専門性の高い検査・治療手技を習得する.また,この時期は内視鏡診断学を完成の域に高めていく時期でもあり,先述の症例検討会の準備や司会進行,病理標本との対比の作成などを中心的に行っている.学位の取得と日本消化器内視鏡学会専門医を含めた消化器病関連学会の専門医取得が目標となる.

現状の問題点と今後

先述の通り,当院では複数の診療科が内視鏡検査を担っているが,各診療科の診療スケジュールやマンパワーにより曜日ごとの検査件数にばらつきを生じている.そのため,特に検査件数が多い消化管内科の検査日は日勤帯に検査が終了しないことが増えている.さらにESDなど長時間を要する内視鏡治療も増加し続けていることから,いかに効率よく検査を進めるかは重要な課題となっている.現状はスタッフの努力により乗り切っているが,検査室利用の最適化ができるように各診療科に働きかけを行っているところである.

また,各スタッフの努力により検査・治療件数は増加し続けているが,一方で,内視鏡の故障による修理費が近年高額で推移している.故障の要因には取り扱いの不注意によると考えられるものも少なくなく,対策として毎年度初めに内視鏡診療に携わるすべての医師を対象として内視鏡室利用のオリエンテーションを行っている.また,故障が目立つ検査手技に関しては内視鏡機器メーカーの担当者が随時介入し,取り扱い方法の再確認を行っている.しかし,大学病院の特性上,若手医師を中心に毎年多数の医師が異動するため,各診療科医師との密な情報共有が必要である.他の対策としては,故障の傾向と対策を分析して壊れやすい機種に限定した年間包括保守契約を結び,毎年契約内容の見直しを行うことにより契約額の節減に取り組んでいる.故障の要因として内視鏡機器の経年劣化も目立つようになっており,費用対効果を分析しながら機器更新も進めている.

今後もスタッフへの過度の負担に依存することなく,臨床・教育レベルを高い水準で維持していけるように,内視鏡部門の環境整備に努めていきたいと考えている.

 
© 2020 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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