日本消化器内視鏡学会雑誌
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クローン病の回盲部切除後腸管狭窄に対するRadial Incision and Cutting法を用いた内視鏡的拡張術
諸井 林太郎志賀 永嗣正宗 淳
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電子付録

2020 年 62 巻 11 号 p. 2964

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当科ではクローン病(CD)の腸管狭窄に対し,倫理委員会承認の下,Radial Incision and Cutting(RIC)法 1を用いた内視鏡的拡張術を施行している 2.当科ではRIC施行の際,内視鏡はOlympus社のPCF-H290TI,電気メスはOlympus 社のIT Knife nanoを用いている.高周波装置の設定は大腸粘膜下層剝離術(ESD)に準じている(VIO-300Dを用いEndo Cut I,Effect 2,Cut duration 2,Cut interval 2).RICを施行した57歳男性,CD術後症例を提示する(動画 1Figure 1,2).RICの偶発症としては後出血,穿孔が考えられる.RICの縦切開の深さの明確な基準はないが,穿孔予防のため,器械吻合後であればペッツの露出は目安になる 3.手縫い吻合の場合は,術前の観察,透視画像などを考慮し,深くなりすぎないよう症例に応じて適宜調節する必要がある.縦切開の間隔については,全周性狭窄の場合は既報 3通り4方向に入れるが,狭窄が弧の場合はその長さに応じ,適宜縦切開の数を減らすのが良いと考える.RICの適応病変としては,CD術後の吻合部狭窄の他,CDの大腸粘膜治癒による狭窄 2,大腸癌術後の吻合部良性狭窄 3),4等がある.CDの場合は,瘢痕性狭窄であればRICの適応であるが,潰瘍を含む活動性炎症による浮腫性狭窄の場合は適応外と考える.また海外ではRICと類似の手技で針状メスを使用するNeedle Knife Stricturotomyが報告されている 5が,IT knife nanoはその形状から縦切開に適しており,また針状メスと異なり先端の絶縁チップがバンパーの役割を果たすことで穿孔を予防する効果があると期待される.部位による違い(小腸か大腸か),長期予後や再狭窄予防法など不明な点も多く,さらなる検討を要する.

動画 1

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

電子動画

動画 1 RICによる内視鏡的拡張術.

筋層に垂直方向に切開する縦切開,および筋層に平行に切開する横切開を行った.約2分程度で内視鏡通過が可能になった.切開中に呼吸性変動を来し,位置がずれる可能性があり注意を要する.本症例はRIC後,腹部膨満などの自覚症状の改善を認めた.

Figure 1 狭窄部拡張前.

粘膜のひきつれがあり,狭窄の原因となっていることが疑われる(黄曲線).ひきつれの中心部に対し,筋層と垂直方向に縦切開を加える(黄矢印).

Figure 2 狭窄部拡張中.

Figure 1の黄矢印の方向に1度縦切開を加えただけで粘膜のひきつれが解除され,拡張が得られた.狭窄の原因と推測される粘膜のひきつれ部分をしっかりと見極め,同部位において筋層に対し垂直方向となる縦切開を比較的大きめにとることがコツである.

文 献
 
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