日本消化器内視鏡学会雑誌
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内視鏡室の紹介
岐阜県総合医療センター
責任者:山崎健路,清水省吾  〒500-8717 岐阜県岐阜市野一色4-6-1
岩田 圭介
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2020 年 62 巻 11 号 p. 2989-2993

詳細

概要

沿革・特徴など

当センターは明治42年岐阜衛戍病院として創設.岐阜陸軍病院,国立岐阜病院を経て昭和28年7月岐阜県に移譲され,病床数130床の岐阜県立岐阜病院として開院した.その後,昭和49年に厚生省臨床研修病院に指定され,昭和58年に救命救急センター開設,昭和63年に新生児センター棟新築,平成17年に地域がん診療拠点病院に指定,平成19年に岐阜DMAT指定病院に指定,平成20年に総合周産期母子医療センターに指定されている.また,平成18年11月に病院が新築され,岐阜県総合医療センターへと名称変更となり(当時の総病床数は590床),平成22年に地方独立行政法人岐阜県総合医療センターへ移行した.その後数回の増床を経て,現在では総病床数620床(一般病棟,救命救急センター,心臓血管センター,母と子供医療センター,重症心身障がい児病棟)となっている.また当センターは地域医療支援病院およびへき地医療拠点病院としての役割も担っており,県内の遠隔地医療施設への医師派遣なども行っている.

組織

消化器内科に肝臓内科,内視鏡部,胆膵内科の3部門が属しており,内視鏡部が上下部消化管内視鏡,カプセル内視鏡および小腸内視鏡関連を,胆膵内科が胆膵系EUS,ERCPおよびPTBD系処置を管轄しており,消化器内科所属の医師がこれらすべての処置に携わっている.現在,2階に配置された内視鏡室で上下部消化管内視鏡と消化管・胆膵系の超音波内視鏡を行い,同一棟内の1階に配置されている中央放射線部で透視を使用する内視鏡関連手技を行っている.また看護師は,内視鏡室と中央放射線部で共有の人員となっている.救急外来で発生した上下部緊急内視鏡は,救急処置室内に設置されたスペースで施行しており,緊急時にも迅速な対応が可能である.

検査室レイアウト

 

 

 

当内視鏡室の特徴

内視鏡部には全5室の上下部内視鏡室がL字型に配置されており,それぞれ備え付けの壁で仕切られているが,患者用出入り口の反対側は各部屋がオープンスペースでつながる構造になっている.また,全室においてストレッチャーおよび病棟のベッドでの出入りが可能である.上部消化管内視鏡の前処置は同時に3人まで可能であり,下部消化管内視鏡の前処置は,自宅での処置が困難な症例に限って院内で行っているが,内視鏡室内に設置したトイレに隣接したスペースを使用して下剤の内服を行っている.さらに,これらとは別に3台分のリカバリースペースを備えている.なお,更衣室は全4室を備えている.

中央放射線部には内視鏡関連処置を行うことができる透視室が2部屋あるが(X線TV-1とTV-2),呼吸器内科など他科と共有しているため,必要時には血管造影室を使用して内視鏡処置を行うこともある.メインの透視室であるTV-1では2019年1月に新規システムを導入した際に天吊りの大型モニターを備えたため,電子カルテ内の情報や心電図モニターなどを透視・内視鏡画像と同一画面に表示可能となり,より安全で正確な処置を行うことが可能となった.

胆膵領域のEUSは,内視鏡室では超音波観測装置Prosound α10を用いて,透視室ではEU-ME1を用いて行っている.

内視鏡の洗浄装置は内視鏡室に4台,中央放射線部に1台が配置されており,専属のスタッフが中心となって洗浄を行っている.

スタッフ

(2020年4月現在)

医師:消化器内視鏡学会指導医4名,消化器内視鏡学会専門医3名,その他2名,後期研修医7名

看護師(内視鏡部および中央放射線部):

25名(常勤19名 非常勤6名)

内視鏡技師:Ⅰ種5名

医療クラーク:1名

看護助手:1名

内視鏡洗浄:3名

設備・備品

(2020年4月現在)

 

 

実績

(2019年1月1日~2019年12月31日)

 

 

指導体制,指導方針

当院は平成16年に新医師臨床研修病院に指定され,毎年15~20名程度の初期研修医を採用している.後期研修に関しては,2020年度には6名が内科系の後期研修医を選択している.

初期研修中(1-2年目)は,主に内視鏡手技の見学が中心となるが,加えて生検の介助などを行っている.後期研修(3-5年目)に入ると,ファントムモデルを用いた基本操作の学習も行いながら,上級医の綿密な指導のもとに実際の内視鏡を開始している.原則として,上部消化管検査から開始し,大腸内視鏡検査,各種内視鏡治療手技(ESD,EMR,EVLなど),ERCPと,順次ステップアップしていくことを基本としている.また手技の指導に偏ることなく,拡大内視鏡を含めた内視鏡診断に関しても,定期的なカンファランスを通して指導を行っている.ESDの実際の手技については,術前の内視鏡診断を十分に検討することができ,消化管を専門にしていきたいと考えている医師に限っているのが現状である.

ERCP系処置の研修に関しては,まず処置具の介助から開始し,上部下部消化管内視鏡の習得具合に応じてERCPを開始していくが,乳頭の正面視を含めて安定した処置が期待できる場合に限って,10分前後以内での乳頭カニュレーションを許可しており,修得の程度によっては,すべての処置の完遂も許可している.胆膵系EUSに関しては,上級医が周囲の医師に画面の説明などを行うようにしているが,実際の手技に関しては,胆膵を専門にしていきたいと考えている医師を中心に許可している.また,週1回の胆膵カンファレンスを1~2時間程度行っており,症例検討,読影ポイントの指導を行っている.

現状の問題点と今後

近年は鎮静下での内視鏡を希望される患者の増加と,鎮静を基本にしている胆膵系のEUS症例が増加していることなどから,3台のリカバリースペースでは対応が難しいことが多々あり,近隣のスペースの確保にむけて調整を行っているが,なかなか難しいのが現状である.

消化器内視鏡関連手技は,消化管のESDを始め小腸内視鏡関連手技やEUS関連処置など,高度な手技が増加傾向にあり,なかには長時間を要する処置も発生する.これらの影響もあって,医師も看護師も一定した確保が難しい状況が続いているが,看護師に関しては数年前より内視鏡部と中央放射線部の看護師が統合され,勤務や配置の調整に幅が持たせられるようなってきており,また最近では,専属の臨床工学技士にESDの介助に入ってもらうことで,医師や看護師の負担軽減につながっている.

透視下の内視鏡処置に関しては,透視装置2台のうちCアーム型は1台のみであるため,もう1台もCアーム型への機種変更が待たれる.

透視下の処置に関しては,EUS関連治療手技を始めとして,看護師やレントゲン技師が,われわれの行っている処置に関する理解が必ずしも十分ではないため,これらに関して教育的なことにも配慮が必要である.

今回新型コロナウィルスの蔓延によって,内視鏡関連手技における患者および医療スタッフの感染防護策について,当日の患者の問診や,スタッフの防護具の使用法などを改めて見つめ直す機会となり,当院内視鏡室がより万全な対応を常時できるように備えたい.

 
© 2020 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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