2020 年 62 巻 3 号 p. 330-337
カプセル内視鏡は2000年に小腸疾患診断目的で開発され,様々な消化管疾患の診断に用いられてきた.その後,2006年に大腸カプセル内視鏡(CCE;Colon Capsule Endoscopy)が,報告された.さらに改良された第2世代のCCE(CCE-2と記載)が開発され,2014年よりCCE-2が本邦において保険適用となった.CCE-2の炎症性腸疾患に対する有効性はいくつか報告されており,大腸に炎症が起こる潰瘍性大腸炎(UC;Ulcerative colitis)がその中心となっている.UCは大腸に原因不明の炎症が起こり,寛解と増悪を繰り返す疾患である.診断,治療の際に大腸検査を繰り返し要し,低侵襲に大腸粘膜の観察をすることができるCCE-2はUCのモニタリングツールに適しているといえる.本稿ではUCに対するCCEの現況に関して概説する.
カプセル内視鏡(CE;Capsule Endoscopy)は2000年に小腸疾患診断目的で開発,報告され 1),様々な消化管疾患の診断に用いられてきた.その後,2006年に大腸カプセル内視鏡(CCE;Colon Capsule Endoscopy)が,Eliakimら 2)によって報告された.その後改良された第2世代のCCE(PillCam Colon2Ⓡ,Medotronic社,以下CCE-2と記載)が開発され,2010~2011年頃より日本でもCCE-2を使用した医師主導の臨床研究が開始された.日本では2014年よりCCE-2が「大腸内視鏡が施行困難,もしくは,施行困難が想定される患者」に対し,保険適用となった.CCE-2に関しては欧米における多施設共同研究において,大腸癌,大腸ポリープスクリーニングにおける有効性が示されている 3).CCE-2の炎症性腸疾患に対する有効性はいくつか報告されており,大腸に炎症が起こる潰瘍性大腸炎(UC;Ulcerative colitis)がその中心となっている.UCは大腸に原因不明の炎症が起こり,寛解と増悪を繰り返す疾患である.診断,治療の際に大腸検査を繰り返し要し,低侵襲に大腸粘膜の観察をすることができるカプセル内視鏡はUCのモニタリングツールに適しているといえる.そこで,本稿ではUCに対するCCEの現況に関して概説する.
CCE-2は,大きさ11.6mm×31.5mmで小腸CEよりも5mm大きく,両側にカメラが搭載されている(Figure 1).両端のカメラは,視野角(画角)が172°であることから,両側をあわせると344°となり,ほぼ360°に近い領域を撮像することができる.また,第一世代のCCEの場合には4fps(frames per second),つまり1秒間に4枚の写真を撮影する性能しかなかったが,2009年にVan Gossumら 4)がNew England journal誌に報告した第一世代CCEの欧米における大規模臨床試験結果が満足いくものではなかったため(6mm以上の大腸ポリープ指摘感度64%),改良が加えられCCE-2が発売された.

第2世代大腸カプセル内視鏡.
大きさ11.6mm×31.5mmで小腸カプセル内視鏡よりも5mm大きく,両側にカメラが搭載されている.
CCEは,横行結腸を数秒で通過してしまう場合があり,カプセルが早く腸管内を進んだ場合の見落としが問題となっていた.CCE-2は,この見落としを減らすために体に装着したデータレコーダー(受信機)(Figure 2)とCCE-2が相互通信することによってカプセルの移動速度を自動認識し,フレームレートを4fpsもしくは35fpsに可変することができるような機能(AFR: adaptive frame rate)を搭載している.つまり,カプセルが早く移動した場合には撮像枚数を増やし,停滞した場合は撮像枚数を減らすことができる.この改良を経て,通常大腸内視鏡と比較し6mm以上の大腸ポリープ指摘感度は84%と改善されたことがSpadaらにより報告された 3).また読影用のソフトウェアを使用することにより,ポリープの大きさを測定すること(PSE:polyp size estimation)や,データレコーダーでリアルタイムにカプセル画像を確認することが可能である.CCE-2の禁忌は,消化管閉塞・狭窄.瘻孔が疑われる場合(造影検査等で狭窄がないことが確認された場合を除く),診断確定済みのクローン病患者,心臓ペースメーカーなど医療用電気機器の埋め込み後,嚥下障害患者である.また,妊婦に対しての検査,18歳未満に対しての安全性は不明とされており,注意して行うこととなっている.

データレコーダー.
大腸カプセル内視鏡と相互通信し,カプセルの移動速度を感知できる.
CCEにおける前処置には,①内視鏡の視野を良くするための腸洗浄,②カプセルの排泄促進といった意味がある.海外の報告では,UCに対するCCE-2は,ポリープサーベイランスの場合と同様に4L程度のPolyethylene glycol 電解質溶液(PEG)と液体のリン酸ナトリウム(phosphate soda)をブースター(カプセルを押し流すための下剤)として使用している場合が多い 5).日本には液体のリン酸ナトリウムがなく,ブースターとしてクエン酸マグネシウム(商品名:マグコロールP)を用いてきた 6),7).UCにおいても,われわれが行った当初の検討ではPEGのみを使用し,ブースターを使用しなかったが 8),クエン酸マグネシウムをブースターとして用いることで(Table 1),腸管洗浄度の向上とカプセル排出率が向上した 9).Table 1の前処置法を用いた結果,全大腸の観察率が85%と向上し,腸管洗浄度も改善された.Table 1の前処置でもCCE-2が未排泄の場合,マグネシウムクエン酸塩をさらに600ml追加し内服する方法で良好な結果が得られたことから,ブースターをオンデマンドで追加していく方法が良いと考えられた.また症例によっては下剤量が少量で終了する場合もあり,Table 1の前処置を用いた検討では25%のUC患者は総下剤量が1,600mlで検査が終了した 9).当院では近年まで前記の前処置法でCCEを行ってきた.最近,日本に古くからあるヒマシ油を使用した前処置法の有用性が報告されている 10).日本からUCに対する高濃度PEG(商品名:モビプレップ)とヒマシ油を用いた前処置法が報告されており,カプセルのバッテリー駆動時間中の排泄率は93.9%,検査時間の中央値は227分(81-733),大腸滞在時間は119分(8-489)であったと報告されている 11).内服が均等かつ単純であるため運用しやすく,患者にも理解しやすいため,当院においてもこの前処置にクエン酸モサプリドを加えたほぼ同様の前処置を用いている(Table 2).さらに当院では,CCE-2内服後はすぐに帰宅しカプセル内服以外はすべて自宅で行い,後日レコーダーを持参してもらうという方法を取っており,検査日に終日病院内に居る必要がないよう工夫をしている.またFigure 3に示す患者用ポスターを外来に掲示し,患者への広報を行っている.

UC患者に対するCCE前処置法(Low-volume PEG with prokinetics regimen)(文献9を改編).

慶應義塾大学病院で用いているヒマシ油を使用したUC患者に対するCCE前処置法.

患者リクルート用ポスター.
UC患者の診療における内視鏡の役割は①初診時の診断,②治療効果判定・炎症のモニタリング,③大腸癌のサーベイランスなど非常に重要である.特に近年,内視鏡的な粘膜治癒が長期の臨床的寛解,腸管切除の回避,ステロイドフリーの臨床的寛解といった長期予後に関与しているといわれており,内視鏡診断の重要性がさらに増加している 12).特にUC患者においては罹患期間や炎症範囲によって大腸癌のリスクが増大することが知られており 13),メタ解析ではUC患者における大腸癌罹患率は全体で3.7%(95%信頼区間:3.1-4.2%)と報告されていることからも 14),1-2年に一度の大腸検査が必要といわれている.従来より下部消化管内視鏡(CS;Colonoscopy)がUCの病勢評価を行うためのGolden Standardの検査だと考えられており,びまん性に拡がる大腸病変の性状や程度,罹患範囲などを確認する.一方で,CSの侵襲性や患者のコンプライアンスが影響しているものと考えるが,長期罹患のIBD患者においては約4年間の観察で検査率が54%にしか満たなかったとの報告もある 15).また,臨床的に重症と考えられるUC例では,CS施行による病状の増悪や穿孔の危険性があり,全大腸内視鏡検査が不可能な場合がある.一方,CCEは疼痛を来たすことはなく,鎮静・送気の必要がないことから非侵襲的に腸粘膜の観察が可能であり,病変部位が大腸に限定されるUCにおいては,CCEの応用が考えられていた.さらに,確定診断済みのUC患者の経過観察(治療効果の確認,重症度の確認など)においては,びまん性に拡がる病変の炎症の程度や罹患範囲を観察できればよいことから,より軽度な前処置で実施できる可能性が考えられる.UC患者に対し第一世代CCEを使用した代表的な研究は,2012年にSungら 16)によって報告されている.Sungらは,第一世代CCEのUC活動性病変の指摘感度は89%(95%信頼区間80-95%),特異度75%(95%信頼区間51-90%)と報告しており,この時点ではCCEが安全な検査であることは示されているものの第一世代CCEは大腸内視鏡の代替として推奨されないと結論付けている.一方で2013年のYeら 17)による報告では,UC患者に対する第一世代CCEとCSの比較において活動病変重症度(κ=0.751,p<0.001),病変範囲の評価(κ=0.522,p<0.001)ともに有意な相関を示したことを示している.2014年のSanら 18)による報告でも第一世代CCEと大腸内視鏡の所見は病変の重症度(κ=0.79;95% confidence interval:0.62-0.96)および炎症範囲(κ=0.71;95% confidence interval:0.52-0.90)といずれも良い相関を示したことを報告している.CCE-2に関しては,われわれが2013年に最初に報告した 8).この研究は,日本人UC患者に対する前処置法を探索する研究でもあり,日本での標準的な大腸内視鏡検査の前処置法である2LのPEGと腸管蠕動促進薬(クエン酸モサプリド)を用いた.しかし,全大腸観察率は69%と満足いくものではなく,大腸洗浄度の4段階評価 19)においても良好な洗浄度は認められなかった.一方で,CCE-2画像から判定したMattsの内視鏡スコア 20)とCSから判定したMattsの内視鏡スコアには高い相関(p=0.797)が認められた.2017年のShiら 5)の検討では,150例のUC患者を組み入れ,108例を解析対象としている.CCE-2画像から判定したMayo endoscopic subscore(MES) 21)とCSから判定したMESとの高い相関(intraclass correlation coefficient[ICC]0.69;95%信頼区間,0.46-0.81;p<0.001),また同様に判定したUlcerative Colitis Endoscopic Index of Severity(UCEIS) 22)(ICC 0.64;95%信頼区間,0.38-0.78;p<0.001)の高い相関を報告し,CCE-2は信頼性の高いUCのモニタリングツールであると結論付けている.さらにはMES>0の炎症に関しては97%,MES>1の炎症に関しては94%の感度にて発見が可能であり,炎症後ポリ―プに関しても感度100%,特異度91%で検出可能であったと報告している.
さらにUCにおけるCCE施行の利点としては小腸の炎症評価ができるという点が挙げられる.2011年のHisabeら 23)による報告では,UC患者に対し小腸CEを施行したところ36.6%に小腸病変(浮腫・潰瘍)を認めることが示された.病変部位としては,活動期UC症例では上部小腸,大腸全摘出後症例では下部小腸に有意に炎症部位が多く存在していた.また小腸における潰瘍性病変は若年例,全大腸炎型または回腸嚢炎例に多いことが示された.2018年のNinomiyaら 24)の報告でもUC患者における小腸病変は27.8%に認められ,小腸病変のある患者はUCの活動性が高い患者により多く認められる傾向があったと報告している.したがってUCでは小腸病変を伴っている症例が少なからず存在しており,全消化管における活動性評価を行うという意味でもCCEは有用なデバイスであると考えられる.
UCに対するCCE適応の明確な基準は存在しないが,われわれは慢性炎症に起因する癌(Colitis associated cancer)のサーベイランスには用いるべきではないと考えており,大腸粘膜の炎症の程度・範囲を把握する目的のみで使用するべきであると考えている.たとえば,通常CS後の炎症のモニタリング,もしくは炎症が強く深部大腸に挿入不可,かつ原因の説明できない貧血・炎症反応の高値などがあった場合の深部大腸の精査などである.
UCの重症度を評価するためのスコアとしては,CSの場合,UCEIS(Ulcerative Colitis Endoscopic Index of Severity) 22),Mayo内視鏡スコア 21)などが用いられている.一方,CCEにおいては,UCの炎症を評価するスコアは存在しなかった.CCEはCSと異なるデバイスであることからCCEに特化したUC炎症評価スコアが必要であると考えられたことから,筆者らはCEによる新たな潰瘍性大腸炎重症度スコアとなるCSUC(Capsule Scoring of Ulcerative Colitis)を作成し,その有用性を検証した 25),診断確定済みUC患者に対し,CSとCCEを同日に行い,UC重症度評価スコアを作成した(Table 3).

CSUC評価項目と定義(文献25を改編).
重症度スコアの項目は,脾彎曲を境にdistal/proximalに分け,それぞれに対し血管透見性(Vascular pattern),出血(bleeding),びらん・潰瘍(Erosions and ulcers)を4人のCCE読影者が判定した.また,同時に炎症の全体の重症度をVisual analogue scale(VAS)を用いて判定した.また,同日に施行されたCSビデオを用い,2人の別の読影者が既存のスコア(UCEIS)を判定した.VASに関与する評価項目を,一般線形化モデルを用い,スコア項目の選定,重みづけを行い,スコアを作成した.最終的なスコアは “Vascular pattern合計(proximal+distal)+Bleeding合計+Erosions and ulcers 合計(最低値-最高値,0-14)” と計算することとした.CSUCと便中カルプロテクチン,CRPなどの血液検査,Lichtigerスコア 26)との相関はCSで判定したUCEISとほぼ同等であった.このスコアは「Bleeding」,「Erosion and ulcers」,「Vascular pattern」の3つの項目からなり,CCE読影ソフトウェアを使用し簡便に判定できるように工夫した.たとえば,「Bleeding」の項目は,CCE読影ソフトウェアの出血写真を表示する機能(SBI:Suspected blood indicator)を用い,自動検出された出血画像の枚数を数えてスコアリングすることとした.また,「Erosion and ulcers」に関しては大きさが5mm以下をErosion(びらん),5mmより大きいものをUlcer(潰瘍)と定義し,大きさはCCEソフトウェアの測定機能(PSE:Polyp size estimation)を使用し計測することとした.実際のCCE-2読影画面をFigure 4に示す.色調を表すバーに赤く表示されている部分がSBIで自動検出された赤い画像であり,この中から出血画像をカウントしてスコアリングを行う.実際の潰瘍画像をFigure 5に示す.2カ所の粘膜欠損をPSEを用いて計測し,6mmと表示されている.5mm以上であり浅い潰瘍と判断し,スコアは2点となる.このように,簡便にスコアリングできるCCEの新たなUCの炎症評価スコアを開発しその有用性を報告したが,今後さらに,実際の臨床における有用性が報告されることを期待する.

CCE読影ソフトウェア画像.
色調を表すバーに赤く表示されている部分がソフトウェア(SBI:Suspected blood indicator)で自動検出された赤い画像であり,この中から出血画像をカウントしてスコアリングを行う.

UCのCCE画像(潰瘍).
2カ所の粘膜欠損をソフトウェアの測定機能(PSE:Polyp size estimation)を用いて計測し,6mmと表示されている.
実際のCCE-2動画(電子動画 1)を提示する.30歳代,男性,全大腸炎型のUCである.CCE-2はS状結腸~直腸を撮像しているが,粗造な粘膜と潰瘍を数カ所認める.本症例は全大腸にわたって同様の所見を認め,重症UCと診断した.
電子動画1
厚生労働科学研究費 難治性疾患等政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班(鈴木康夫班長)において,「大腸カプセル内視鏡を用いた潰瘍性大腸炎内視鏡画像アトラス」が作成された.CCE-2画像を提示し,ほぼ同一箇所と思われる部位の下部消化管内視鏡画像を並列して提示し,まとめたアトラスであり,ホームページ(http://ibdjapan.org/)でも公開しており一度参照されたい.
UCの病勢評価において,非侵襲的に大腸の炎症を把握できるCCEは有用であることが数々の論文から示されている.一方で,前処置法などに関しては検査法の改良のための課題は残っているのが現状である.また,UC関連大腸癌のサーベイランスに関してはCSによる精査が必要であることも踏まえ,CCEとCSをうまく組み合わせることにより,今後のUC患者のフォローアップがより質の高いものになっていくことが期待される.
本論文内容に関連する著者の利益相反:細江直樹(メドトロニック社,オリンパス株式会社)