2020 年 62 巻 3 号 p. 395-398
1908年,わが国初のがん専門機関として癌研究会が創設され,1934年,東京都大塚に癌研究所とともに,わが国初のがん専門病院として附属病院が開設された.現在の江東区有明の地に移転したのは2005年で,公益財団法人がん研究会有明病院(通称:がん研有明病院)として,「がん克服をもって人類の福祉に貢献する」との使命の下,がん診療に積極的に携わっている.
病床数686床,手術室20室,内視鏡室7室,外来治療室(ATC)60床を有し,2017年度は,手術8,700件,消化管内視鏡29,000件,ATCでの化学療法34,000件など,手術,内視鏡,化学療法のいずれにも力を入れている.
組織肝胆膵内科は消化器センター消化器内科に属する独立した一診療科である.消化器内科には他に,上部消化管内科,下部消化管内科,消化器化学療法科がある.
肝胆膵内科では,ERCPやEUSなどの胆膵内視鏡の他,消化管ステントや消化管EUS-FNAなどの胆膵内視鏡と関連した消化管処置,PTBD関連手技,肝腫瘍生検やラジオ波焼灼療法といったさまざまなインターベンション手技,および,肝胆膵がんに対する化学療法を担当している.スタッフは部長,副部長2名,医長1名,副医長3名,医員3名,レジデント1名で構成されている.
胆膵内視鏡は,内視鏡診療部で行うEUS1枠を除き,主に画像診断センターの中のIVR室で行っており,画像診断部センターの診療放射線技師,看護師・看護助手が診療に携わっている.
検査室レイアウト

2016年に新棟が完成し,その2階に画像診断センターIVR室が設けられた.設計の時点で,今後,内視鏡インターベンションが拡がることを想定し,複雑多岐な手技を安全に行うのに必要なスペースと機器を備えることに主眼をおいた議論を重ねた.ここにはIVR専用のX線透視室が3部屋あり,うち1部屋は血管撮影装置とCT装置が配備されたIVR-CT室で,他の2部屋に内視鏡システムが常備されている(Figure 1).

X線透視室-1.
いずれの部屋にも58インチの多機能モニタが天井から吊り下げられており,この大型モニタには,内視鏡・X線透視・超音波などのリアルタイムの画像の他,撮像写真,過去画像(CT・MRCP・内視鏡など),生体モニタなどを,任意の組み合わせで表示できる.これらの表示は,操作室内に置かれた専用のタブレット上で,タッチパネル操作により瞬時に切り替え可能であり(Figure 2),必要な情報を必要なタイミングで得ることができるため,胆膵内視鏡検査・治療を確実に行うのに非常に有用である.例えば,術前精査のEUSの際には,必ず横にCT画像を表示させ,EUSで得られる画像をその場でCTと対比させることで,EUSに求められる局所診断能をより深く追求することが可能である.また,ERCPにおいても,特に肝門部領域胆管癌の術前進展度診断や特定枝のドレナージには,Live画像と撮像写真に加え,MRCPやCT冠状断なども並べて表示させ,確実な胆管枝の同定に努めている.

操作室内の専用のタブレット.
タッチパネル操作により瞬時に切り替え可能である.
X線透視機器はアンダーチューブ型のCアーム装置で,散乱腺の向く下方にはX線防護カーテンを垂らしている他,透視台の上方は可動式の天吊り遮蔽版を術者との間に入れ,さらに記録ゾーンの手前には遮蔽版を置き,処置に関わるすべてのスタッフの被曝軽減に努めている.
また,IVR室は2室ともに約40m2を有しており,術者・介助者の立つ,透視台の横のスペースは2m以上の幅があるため,特に全長の長い胆膵内視鏡処置具も取り扱いやすい環境である.
X線操作室・リカバリー室・処置室・準備コーナーを含む総面積は250m2超で,ICU患者をベッドのまま搬入させることも可能である.
(2019年7月現在)
医師:消化器内視鏡学会 指導医3名,消化器内視鏡学会 専門医2名,その他スタッフ5名,研修医など1名
内視鏡技師:Ⅰ種3名,Ⅱ種2名,放射線技師 画像診断センター配属技師のうち1-2名が交代で担当
看護師:画像診断センター配属看護師のうち2-6名が交代で担当
内視鏡洗浄員:内視鏡室より1名派遣
(2019年7月現在)

(2018年1月~2018年12月まで)

指導体制:当院はがん専門病院であり,腫瘍性病変の画像・病理診断,悪性胆道閉塞に対する胆道ドレナージが,胆膵内視鏡検査・治療の主たる対象である.検査・治療は,月-金曜の午前・午後の10枠をフル活用し,各枠2-3名の医師によって行われるが,全枠に本学会指導医が必ず参加・指導を行っている.また,平日は毎朝8-9時にカンファランスおよび全員回診を行い,当日の処置予定を共有すると共に,前日の処置・偶発症の確認も全員で行っている.一見効率が悪そうに思われるが,このシステムにより,病棟担当の1名がその後の全患者の対応を行うことで,他のスタッフは外来や処置に集中することができ,結果的に検査・治療を滞りなく行うことが可能になる他,週末も完全当番制を敷くことが可能である.この他,週1回の肝胆膵外科・画像診断部との肝胆膵Cancer Boardでは,特に術前診断についての議論が深く行われ,月1回の病理カンファランスでは,月ごとにテーマを決めて画像と病理の対比を検討するなど,個々の症例をより深く掘り下げることにも力を入れている.
指導方針:EUS・ERCPのいずれにおいても難易度を1-5段階に分け,技術と習熟度に応じて実施可能な検査・治療を限定した,「がん研式トレーニング指針」に基いて指導を行っている.EUSにおいては,観察が十分できるようになってからEUS-FNAとしている施設が多いように思われるが,当院では,十分な胃内観察に引き続き,十二指腸観察の習得と共に経胃的FNAも同時に進められるプログラムとしているため,EUS見学から3カ月程度で初回のFNAに到達することも可能であり,半年間の短期研修にも対応できる.一方,ERCPにおいては,一定技量に達した時点で初回新鮮乳頭に対する胆管挿管へと進むが,急性膵炎のリスクや膵炎発症時に問題となるその後の臨床経過に与える影響から,切除可能胆管癌に対する初回ERCPは最終ステップに位置づけている.
なお,当科では,胆膵内視鏡の他,PTBD関連手技や肝インターベンション(肝生検,RFA,TACE)も習得可能である.また,もう1つの柱である肝胆膵がんの化学療法についても指導医と豊富な経験数を有しており,さまざまなコースの研修プログラムを準備している.
当院では,ERCPを行うX線透視室は,内視鏡室ではなく,画像診断センター(IVR室)に配置されている.IVR室内にスコープ庫や洗浄機があり,十二指腸鏡・超音波内視鏡・小腸内視鏡などの頻用スコープは保管から洗浄まですべてIVR室内で可能ではあるが,消化管ステント留置を始め,直視鏡を用いる一部の処置においては内視鏡室からスコープを取り寄せる必要があり,術中に緊急で取り寄せる場面にも時に遭遇する.対策として,曜日ごとに医師のリーダーを決め,リーダー看護師と当日の処置の順番やその内容と同時に使用スコープの打ち合わせをするなど,業務の効率化に努めている.
また,看護師も画像診断センター配属であり,CTなどの画像検査や血管造影などの他のIVRとの兼任である.処置内容については,上述の打ち合わせの他,処置直前のタイムアウトで情報共有を行うともに,多岐にわたる処置具についても,定期的な勉強会や処置の合間に振り返りなどを行うようにしている.
一方,医療安全の観点からは,消化管内視鏡を主とした内視鏡室と,胆膵内視鏡の他,放射線科医によるいわゆるIVRや,気管支鏡(呼吸器内科),尿管ステント(膀胱鏡併用,泌尿器科)なども行われるIVR室とでは,鎮痛・鎮静剤の標準使用法やその他の運用法に違いが生じている.定例の内視鏡運営会議に出席することでなるべく情報を共有し,ダブルスタンダードにならないように努めている.胆膵内視鏡治療をIVR室で行う最大のメリットは,放射線技師の存在である.被爆の低減に加え,C-アームのコントロールや,術者の求めるリファレンス画像の選定など,まさに治療の成功の鍵である.これらを考えると,内視鏡室とIVR室は隣接して配置し,機材・人材・管理を共有することが理想であろう.
そして,最大の問題点は,人員不足である.スタッフ10名は一般には贅沢な人員数とみなされるであろう.ただし,週1日の外勤や外来化学療法(1日40-100人)への注力などを考慮すると,実際の胆膵内視鏡に携わるのは,指導医1人を含めて各枠2-3名程度であり,目前の症例を「こなす」ことで精一杯である.