日本消化器内視鏡学会雑誌
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内視鏡室の紹介
公益財団法人日本生命済生会 日本生命病院 消化器内視鏡センター
責任者:有坂好史(消化器内科部長,消化器内視鏡センターセンター長代行)  〒550-0006 大阪府大阪市西区江之子島2-1-54
有坂 好史
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2020 年 62 巻 3 号 p. 399-403

詳細

概要

沿革・特徴など

当院は,日本生命が『相互扶助』『共存共栄』のために設立した日本生命済生会によって1931年に開設された病院である.『済生利民』を基本理念とし,緒方洪庵の次男である緒方惟準が開院した緒方病院を継承する形で,大阪市西区に『日生病院』として開設された.1957年には総合病院の認可を受け,2001年に病院機能評価認定取得,2018年には元大阪府庁跡地である西区江之子島への新病院移転に伴い名称が『日本生命病院』に改められた.現在,病床数350床,30診療科,8診療センターを標榜し,大阪市西区医療圏における大阪府がん診療拠点病院,地域医療支援病院としての機能を果たしている.また,早く1972年から臨床研修指定病院に指定され,多くの学会の施設認定も受けており,現在大阪市西区唯一の日本内科学会認定教育病院であるとともに,消化器関連では日本消化器内視鏡学会,日本消化器病学会,日本肝臓学会,日本膵臓学会,日本胆道学会,日本大腸肛門病学会,日本消化器外科学会,日本超音波医学会の認定・指導施設である.

組織

消化器内視鏡センターは8つある独立した診療部門の一つとして2011年に開設された.現在,センター長および副センター長は消化器内科医師が兼任し,主に消化器内科によって管理・運営されているが,実際の検査治療は消化器内科に加えて,消化器外科,予防医学センター,総合内科の医師らで行われており,所属科にかかわらず内視鏡研修やスキルアップを希望する医師は,所属長の許可を得て診療業務に組み入れ,スタッフとして検査研修を行うことができる.コメディカルスタッフは病院外来部門またはドック部門である予防医学センターの看護部に属し,内視鏡技師資格を有する3名を含む8名の常勤看護師が勤務している.また,呼吸器内科医師による気管支鏡も当センターで行っている.

検査室レイアウト

 

 

 

当内視鏡室の特徴

総面積:333.89m2(ドック側処置室:30.85m2含む).

2018年の病院移転を機に,別棟にあった予防医学センターが同一建物内に集約され,14階建新病院棟の3階に消化器内視鏡センターと予防医学センターが隣接して設置された.旧病院では内視鏡検査室は内視鏡センターの2室と予防医学センター1室に分かれ計3室で運営されていたが,新病院では7検査室に拡充されすべてが内視鏡センターに統合された.7室のうち1室はCアームを備えた内視鏡センター専用の内視鏡透視室であり,旧病院ではERCP等の透視下検査の際は放射線科透視室を他科と共同で使用していたが,新病院では常時内視鏡センター主導で使用することが可能となった.この内視鏡透視室は放射線科区画(見取り図下および右)と接し,また,操作室横には1階の救急診療センターから4階の集中治療室および中央手術室まで専用のエレベーター(EV9)が設置されており,救急患者は外来,病棟患者とは別の動線で内視鏡センターや放射線科へ搬送することが可能である.

所見室には電子カルテ3台と所見入力(NEXUS)端末2台,顕微鏡およびインターネットPC環境が整備され,壁面に設置されたカンファレンス用大画面モニターではすべての検査室の内視鏡像がreal timeで供覧できる.また,すべての内視鏡動画データは,手術室と一括した病院内システムで約半年間サーバーに自動的に保存される.

7検査室はすべて独立した構造で,すべての検査室に電子カルテと所見入力システム(NEXUS)端末が設置されており,検査室1~6は裏動線で洗浄室と連絡している.検査室1,2,3は予防医学センター(見取り図左-ドック処置室1)に接しており,ドック健診受診者は予防医学センター受付から,病院側を通らず別ルートで検査を行うことができる.検査室3は病院側からも入室可能であり,病院の内視鏡診療は検査室3,4,5,6で行っている.リカバリーは内視鏡センター内にベッド3台とリクライニングシート3台(内視鏡処置室1,2)があり,加えて予防医学センターにも検査室1~3に隣接してベッド3台とリクライニングシート3台(ドック処置室1)が確保されている.また,内視鏡センター受付横に大腸内視鏡用の前処置室(処置室1)を確保し,トイレは内視鏡センターに3室,予防医学センターに8室,更に隣接する放射線科にも3室が設置されている.

消化器内視鏡センターの面積は303.04m2であるが,予防医学センターのリカバリー30.85m2(ドック処置室1)を加えると総面積は333.89m2である.

スタッフ

(2019年9月現在)

医   師:消化器内視鏡学会 指導医3名,消化器内視鏡学会 専門医3名,その他スタッフ15名(非常勤7名),研修医など後期1名,初期1名

内視鏡技師:Ⅰ種3名,その他技師3名

看 護 師:常勤8名,非常勤5名

事 務 職:1名

そ の 他:洗浄員3名

設備・備品

(2019年9月現在)

 

 

実績

(2018年4月~2019年3月まで)

 

 

指導体制,指導方針

当院は単独型の臨床研修病院であり,毎年6名の初期研修医を受け入れ,消化器内科には常時1~2名の研修医が概ね2カ月の期間でローテートしている.また,現在,消化器内科志望の後期研修医1名,外科専門医1名,予防医学センター医師(内科専門医)1名が内視鏡専門医取得を目指し内視鏡研修を行っている.

カンファレンスは,毎週火曜日の内視鏡カンファ,木曜日の消化器内科カンファ,金曜日の内科外科合同カンファが行われ,Cancer boardやCPCも定期的に開催される.内視鏡カンファはコメディカルスタッフも参加しその週に予定されるESD,ERCP,EUS-FNAなどの侵襲的内視鏡の術前検討と大阪市胃がん検診症例の読影会を行っている.新専門医制度下のJED projectに対応するため,2018年の新病院移転にあわせて各マニュアルや教育カリキュラムを根本的に見直し,所見のファイリングシステム,用語,検査撮像手順などを改正し統一化を行った.日本生命病院消化器内視鏡センターとして上部消化管内視鏡,大腸内視鏡における標準的な検査手順を示した「内視鏡研修のための教育計画書」,「内視鏡研修のための撮像マニュアル」を作成し活用している.検査の観察手順や撮像部位をマニュアル化し,スタッフ間で共有することでドック/検診やルーチン検査の標準化を計るとともに研修医教育にも導入している.また,当院は大阪市胃がん検診指定施設であり指定医による2次読影が義務付けられている.読影会では,研修の一環としてまず研修医が読影し,その後スタッフ全員で2次読影を行い研修医にフィードバックしているが,ほとんどの研修医が2カ月間で胃の撮像部位を理解できる様になっており成果を上げている.研修医は受け持ち患者の内視鏡処置の介助を行うが,希望すれば2年次には鎮静患者でのスコープ引抜き観察も研修可能にしており,初期研修段階から消化器内視鏡に興味を持てる様に配慮している.内視鏡専門医を目指す医師は「内視鏡研修のための教育計画書」に則り,基本知識を習得し基本的な介助を経験した後,指導医観察後のスコープ引抜き観察と撮像,所見記載を段階的(食道のみ→胃・食道→十二指腸・胃・食道)に20症例経験し,その後に指導医のもとで内視鏡挿入を開始する.大腸内視鏡も指導医挿入後の引抜き観察,撮像,所見記載から開始する.

また,当院にはCPR,中心静脈穿刺,腹腔鏡などのファントム教材を備えたトレーニング室があり,オリンパス社EVIS LUCERA CVL260シリーズ一式と,胃十二指腸および大腸の内視鏡トレーニングモデルも常備されている.使用希望者は内視鏡センターに申し出てスコープを借り受け,内視鏡指導スタッフのもとで技術指導を受けることができる.

現状の問題点と今後

新病院移転による内視鏡センターの拡充によって年間内視鏡件数も10,000件を超えるようになった.検査件数増加は主にドック内視鏡の増加によるが,企業病院としての当院の特徴を考えると今後もドック内視鏡の更なる増加が予測される.内視鏡センターの設備も一新され稼働状態にも若干の余裕はあるが,ドック内視鏡が増え続けた場合,現状のシフトでは対応が困難となってくる.午前だけでなく正午~午後にかけての運用も考慮せざるを得ず,内視鏡医師やコメディカルスタッフの人員不足が問題となってくる.勤務体系を考えた場合,予防医学センター所属のドック内視鏡医の育成が期待される.女性医師にかかわらず出産や育児を考慮した働き方の見直しが必要とされる現代において,ドック健診医師,外科医師など消化器内科以外の医師にとっても内視鏡の専門医取得や技能向上は働き方の選択肢を広げる重要なツールであり,そのキャリアアップ支援の場として消化器内視鏡センターが機能できる様な環境整備を推進している.

新内科専門医制度に準じたカリキュラムおよびJEDシステムについては一旦整備を終えたところであるが,制度自体が未だ不透明な部分があり,今後も動向を注視し柔軟な対応を心がけていく必要がある.しかし,専門医制度がどの様な状況にあろうとも,初期後期研修医が消化器内視鏡に接しやすい環境を整えておくことが肝要である.トレーニング室を有効に活用し,今後は豚などのアニマルモデルによるハンズオンセミナーの開催も検討中である.また,未だ十分とは言えないが,学会や研究会への積極的な参加,発表,論文化も推奨している.日々の診療の中からリサーチマインドを育成できる様に,カンファレンスでは病態の解釈や画像診断にこだわった指導を心がけている.常に学会や論文の提示に耐えうる内視鏡画像を撮像し,病態の把握に基づいた内視鏡検査や治療の適応を決定できることが行動目標である.

なお,一般的に検査数が増加し内視鏡センターが大きくなるに従い,医師,コメディカルの時間外勤務増加が問題となってくることが多い.当内視鏡センターでは医師とコメディカルが連携して検査数や検査時間を調整し,時間内に検査を終了する様に努めており,現状では,救急を除くと概ね遅くとも18時頃までに業務を終了できている.時間外勤務の増加による疲弊からの離職を防ぎ,働きやすい職場イメージをアピールすることが,若手医師やコメディカルスタッフの確保に重要であり,今後も職場環境に留意した教育指導体制を維持していきたい.

 
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