日本消化器内視鏡学会雑誌
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内視鏡室の紹介
東京医科大学病院
責任者:河合 隆  〒160-0023 東京都新宿区西新宿6-7-1
永田 尚義福澤 誠克祖父尼 淳杉本 勝俊土屋 貴愛田中 麗奈殿塚 亮祐糸井 隆夫河合 隆
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2020 年 62 巻 5 号 p. 604-608

詳細

概要

沿革・特徴など

今から約100年前の1916年本学の前身である東京医学講習所が設立された.1918年に東京医学専門学校が設立され,1946年には東京医科大学,東京医科大学病院が開設された.その後,1949年に茨城県稲敷郡阿見町に東京医科大学霞ヶ浦病院を開設,1957年に大学院を設置,1964年に東京医科大学附属高等看護学校を設立,1980年に東京都八王子市館町に東京医科大学八王子医療センターを開設,1986年に東京医科大学病院竣工,2010年に東京医科大学医学総合研究所を設置,2013年に東京医科大学医学部看護学科を設置,2013年に東京医科大学大学院医科学専攻(修士課程)が設置された.2019年の7月1日には,地下2階地上20階の病棟を有する「新東京医科大学病院」が旧病院の北側青梅街道沿いに開院した.特定機能病院として,安心・安全で高度な医療を提供し,がん医療,脳卒中診療,心臓病診療,救急医療,周産期医療などを強化するとともに,自然災害時も継続して医療を提供できる地域災害拠点中核病院となっている.「正義・友愛・奉仕」をモットーとして,患者さんとの信頼関係構築,安心で開かれた医療の提供,地域医療機関と連携した良質で高度な医療提供,人間性豊かで人類の福祉と幸せの実現に貢献できる医療人の育成を目指している.

組織

内視鏡センターはセンター中央診療部門に属し,主に消化器内視鏡学,消化器内科学(肝臓班,胆膵班,消化管班),消化器・小児外科学,呼吸器外科・甲状腺外科学分野,呼吸器内科学の医師が診療に携わっている.内視鏡センターに専従の看護師,看護助手,内視鏡技師,臨床工学技士,研究補助員,事務員が所属している.

検査室レイアウト

 

 

 

当内視鏡室の特徴

内視鏡室の面積は918.4m2と広く,計12の内視鏡部屋を完備している.各検査室は,壁と引き戸で仕切られプライバシーに配慮している.また,患者の出入り口体側はカーテン仕切りとして洗浄室に直結し(検査室6,7,8,10,治療室1,2,3,5),内視鏡と患者の移動ルートが交わらないようにしている.ESDやEMRなどの消化管内視鏡治療は,スペースの広い検査1で実施している.また,消化管と胆膵の内視鏡治療では,「EVIS LUCERA ELITE」を採用し,内視鏡画像の視認性を高め診断精度を向上させるためブルーライトによる照明設備を検査室1,治療室3,治療室5で導入している.消化管のスクリーニング内視鏡検査は検査室2,3,6,7,8,10の6部屋で実施している.胆膵の内視鏡検査・治療は治療室3,5の2部屋で実施しており,どちらも透視機器を完備している.気管支鏡検査・治療は,治療室1,2の2部屋で実施しており,治療室1は透視機器を完備している.膵癌のHIFU治療(高密度焦点式超音波治療)の治療は検査室5で実施している.消化管内視鏡,胆膵内視鏡,気管支鏡による検査及び治療を一つのフロアですべて実施している点が特色である.また,肝臓班の医師が,門脈圧亢進症の内視鏡治療(EVLやEIS)などを積極的に実施している点も当病院の特色である.リカバリー室は,ベッド10台(うち移動用ベッド2台)を完備し,それぞれがカーテンでしきられプライバシーに配慮している.また,各リカバリーベッドの壁には生体モニターが配置されており,リカバリー中の異常が起きた場合は隣接するスタッフステーションから迅速に対応できるようになっている.

スタッフ

(2019年11月現在)

医   師:消化器内視鏡学会 指導医5名,消化器内視鏡学会 専門医33名,その他スタッフ7名,研修医など15名

内視鏡技師:Ⅰ種5名

看 護 師:常勤12名,非常勤3名

事 務 職:3名

そ の 他:7名

設備・備品

(2019年11月現在)

 

 

実績

(2018年4月~2019年3月まで)

 

 

指導体制,指導方針

当病院は臨床研修指定病院であり,研修医に対しては,消化器疾患の診断・治療・患者説明などを上級医がマンツーマンで指導している.希望者には指導医の監督のもと模型によるスコープ操作を学ぶ機会がある.医師3年目の専攻医(レジデント)に対しては,上部内視鏡検査の習得を目標として,指導医の監督下での適切な上部消化管スコープの挿入,操作,的確な生検,所見の適正記載を指導項目としている.医師4年目以降の専攻医に対しては,下部消化管内視鏡検査の習得を目指しており,まずは大腸内視鏡模型によるスコープ操作を学び,スムーズな観察ができると判断した場合は,制限時間(15分ルール)を設けて指導医監督のもとスクリーニング大腸内視鏡検査を行う.スクリーニング大腸内視鏡のスコープ操作や観察技術が安定してきた者は生検や小病変のcold polypectomyを習得する.この段階までが十分安全に行えると判断した場合は,個々の習得状況にあわせて,EMR,EUS,イレウス管,ステント留置,ESD,ERCP,EUS-FNAなどの内視鏡治療の手技へ習得を開始する.ESDに関しては,まずは胃の前庭部から開始し,徐々に胃体中部,胃体上部へステップアップしていく.食道,大腸,十二指腸のESDに関しては,助教以上のスタッフが実施している.

カンファレンスに関しては,消化管班では週に1回の内視鏡治療カンファレンス,内視鏡学カンファレンス,及び月に1回の病理カンファレンスを実施している.内視鏡治療カンファレンスは,診療方針を決定するものであり,高度内視鏡治療(EMR,ESDなど)を予定している全症例の内視鏡画像を供覧し,質的診断,量的診断のディスカッションを行っている.さらに,入院や外来で診断・治療方針で困っている症例のカルテ,画像を供覧しながら皆の経験と知見を出し合い患者にベストな診療を提供できるよう工夫している.本カンファレンスでは,助教以上の指導医が一方的な意見を述べるのではなく,専攻医が積極的に意見を言いやすい環境を整備している.また,専攻医も治療内視鏡を行う機会が与えられているため,自身が実施した症例に関してはプレゼンを行い,困難点や反省点をフィードバックしている.また,内視鏡治療後の症例にたいして病理学的な確定診断を全例で見直しており,治療前の診断が正確であったか,追加治療の必要性がないか,今後の患者への説明の仕方はどうするか,などを専攻医と指導医の垣根のないディスカッションができるようにしている.内視鏡学カンファレンスは,若手医師参加型の指導医レクチャーであり,日常診療で遭遇する消化管疾患の内視鏡診断,治療,研究などのアカデミアの部分を系統的に指導している.具体的には,内視鏡検査における抗血栓薬管理,疾患に特徴的な内視鏡所見の拾い上げ,病理診断の見方,内視鏡診断と関連する病態学,治療法の選択,内視鏡関連の英語論文の読み方,統計などを学ぶことができる.病理カンファレンスは臨床診断との乖離を認めた症例などを中心に,生検及び内視鏡切除後標本の見直しを行っている.また上部消化管外科,下部消化管外科との合同カンファレンスもそれぞれ月2回行っており,外来及び入院中の症例に対する内視鏡治療,外科治療及び化学療法の適応含めた治療計画についての検討を行っている.同時に相互の紹介症例の治療後の経過報告を行っている.胆膵班では,低侵襲内視鏡検査・治療(ERCPやi-EUS)に力をいれており,国内でもトップクラスのハイボリュームセンターとなっているため,教育も以下の点を重要視している.治療の前に画像診断が大切であるため月1-2回の内科,外科,放射線科,病理診断部と合同でCPCを行い,術前の進展度を含めた画像診断がどこまで病理のマクロ像に迫れていたかを確認している.また,センターとして治療に統一制を持たすため,全治療内視鏡症例について胆膵カンファレンスを通して治療方針を決定している.内視鏡的乳頭切除術や超音波内視鏡下治療など数の少ない特殊な治療は一定期間,まとまった症例数を一人の医師に治療を任せて,効率良く手技を学べる工夫をしている.

現状の問題点と今後

検査室が広く,処置に十分なスペースを有しているが,患者待合室(前処置室)から検査室までの距離がながいことが問題である.また,医局員や研修医が年々増加しており,医師室内の電子カルテがすぐに埋まってしまう,記載場所が減っているなどの問題があり,今後電子カルテの増設が望まれる.また,医師の人数が増えたことで,カンファレンス以外に個々の症例の内視鏡画像や病理所見とのフィードバックや指導が手薄になっている部分もあり,今後は教育体制の向上を目指していきたいと考えている.また,2019年7月からこれまでの2倍以上の広さの内視鏡室になったが,これまで同様に,今後も安全で有効な内視鏡診療を提供していきたいと考えている.

 
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